道徳的動物日記

人々の議論を眺めながら考えたことや読んだ本の感想など。このブログは利益や金銭目的ではなく人々に対する啓蒙のために書かれています。ありがたがれ。

フェミニズム

「お気持ち」はいけないのか?

davitrice.hatenadiary.jp 先日の記事でも書いたが、ケアの倫理やフェミニズム倫理などの「理性」より「感情」を重視する倫理学理論には根本的に問題点があり、理論として破綻しているように思える。 しかし、「“理性的”を標榜する既存の倫理学理論によって“…

「ケアの倫理」の構造的問題点(読書メモ:『Entangled Empathy』)

Entangled Empathy: An Alternative Ethic for Our Relationships with Animals by Lori Gruen(2014-01-01) 作者:Lori Gruen 出版社/メーカー: Lantern Books 発売日: 1739 メディア: ペーパーバック 離職して、しばらくの間は本を読む時間もたっぷりとある…

「表現の自由」の滑りやすい坂道?

2019年の日本のネット論壇では、例年のごとく「萌え絵」や二次元キャラクターの性的表現、およびそのような表現を公共の場で展示することの是非、などなどが話題になった。 毎年のように繰り返されている論争であり、今年も大して議論の進展があったように思…

「出羽守」批判についての雑感

日本社会の構造的な問題点や、日本社会で起きた事件の問題性について、海外のメディアや記者が取り上げることはめずらしくない。たとえば、ここ最近では以下のような記事が記憶にあたらしいだろう。↓ www.nytimes.com www.bbc.com toyokeizai.net そして、こ…

「負の性欲」論についての雑感

gendai.ismedia.jp ↑ この記事に関する雑感。 ・この記事では「負の性欲」という概念がさも画期的な発明であるかのように大げさな言葉で説明されているが、実のところ「負の性欲」が指し示す現象はこれまでにも俗流の男女論や恋愛心理学で散々言われてきたも…

反出生主義は女性差別?

生まれてこない方が良かった―存在してしまうことの害悪 作者: デイヴィッドベネター,David Benatar,小島和男,田村宜義 出版社/メーカー: すずさわ書店 発売日: 2017/11/01 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (2件) を見る 先日に聴きに行った、学習院大…

「"女性の上昇婚志向"論」についての雑感

このブログではこれまでにも何度かジェンダー論について話題にしてきたし、ジェンダーや恋愛に関して論じた本についての読書メモなども残している*1。また、ブログには取り上げなくても、進化生物学や社会科学などの観点から男女論や恋愛論や結婚制度などに…

読書メモ:ペットを飼うことを避けることの道徳的問題

Pets and People: The Ethics of Our Relationships with Companion Animals (English Edition) 出版社/メーカー: Oxford University Press 発売日: 2017/02/01 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る philpapers.org キャサリン・ノーロックという…

読書メモ:『もてない男 - 恋愛婚を超えて』

もてない男―恋愛論を超えて (ちくま新書) 作者: 小谷野敦 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 1999/01/01 メディア: 新書 購入: 4人 クリック: 121回 この商品を含むブログ (174件) を見る ちょうど20年も前の本だが、いまも続く「非モテ論」の先駆けとなっ…

読書メモ:『日本恋愛思想史 - 記紀万葉から現代まで』

日本恋愛思想史 - 記紀万葉から現代まで (中公新書) 作者: 小谷野敦 出版社/メーカー: 中央公論新社 発売日: 2012/11/22 メディア: 新書 クリック: 21回 この商品を含むブログ (17件) を見る 第一章の章名が「恋愛輸入品説と十二世紀西欧の発明説」など、全…

「自己責任論」を批判するのはいいけれど…(読書メモ:『高学歴女子の貧困』)

高学歴女子の貧困 女子は学歴で「幸せ」になれるか? (光文社新書) 作者: 大理奈穂子,栗田隆子,大野左紀子,水月昭道 出版社/メーカー: 光文社 発売日: 2014/02/18 メディア: 新書 この商品を含むブログ (14件) を見る 貧困状態にある高学歴女性が現状を綴る私…

再読メモ:『結婚の条件』

結婚の条件 (朝日文庫 お 26-3) 作者: 小倉千加子 出版社/メーカー: 朝日新聞出版 発売日: 2007/01/01 メディア: 文庫 購入: 13人 クリック: 214回 この商品を含むブログ (53件) を見る フェミニストの学者が、当時(2002年〜2003年)の日本の女性の結婚にま…

進化心理学はなぜ批判されるのか?

quillette.com 上記のQuilletteの記事を要約紹介しつつ、雑感を書く。…というか、ダラダラと長ったらしい記事なので、思い切って要点や特徴的な点だけ紹介する。 上記の記事では、デビッド・バスとウィリアム・フォンヒッペルという二人の進化心理学者が行っ…

「男性のつらさ」論についての雑感

前回の記事の続き…と言いたいところだが、大したことが書けそうにないので箇条書きで。 ●議論が盛り上がるきっかけとなった「男性のつらさの構造」記事では、男性のつらさの原因の一つを「女性の高望み」と分析していた。そして、それに対する解決策の一つと…

「有害な男らしさ」論のイデオロギー

まとまった文章を書く気力がないので、最近の議論を見ていて思ったことをだらだらと。 日本のインターネットでは「男のつらさ」とか「男性の孤独」というトピックは周期的に話題になるが、今月は特にそれらの話題についての議論が盛んだ。 議論のきっかけは…

家父長制・弱者男性・フェミニズム

以前に訳して紹介したポーラ・ライト(Paula Wright)のブログの記事を読みながら、だらだらと考えたこと*1。 porlawright.com 「改良された"家父長制"を擁護する」というこの記事では、家父長制とは単一の種類しかないものではなく、悪性の家父長制もあれば…

「動物の権利」と「人権」は対立する?

togetter.com くどいようだが、この件に関するはてな・Twitterなどでの反応を眺めての雑感。 今回の件に限らず、動物の権利運動に対する批判としてちらほら見られるのが、「動物に権利を与えると人権という概念の理念が損なわれる」あるいは「動物に対して道…

弱者男性論とか女性だけの街とかについての雑感

Twitterやはてななどで「弱者男性」論を見かけたり、また先日の「女性だけの街」に関する議論などを見かけた際には、モヤモヤすることが多い。モヤモヤを吐き出すために雑感を書いてみた(あまり論理的ではない、感覚に頼ったくどい文章になってしまったが)…

アニマルライツとフェミニズム

The Feminist Care Tradition in Animal Ethics: A Reader 作者: Josephine Donovan,Carol J. Adams 出版社/メーカー: Columbia Univ Pr 発売日: 2007/11/01 メディア: ペーパーバック 購入: 1人 クリック: 1回 この商品を含むブログを見る ヴィーガンフェミ…

男性が自殺するのは「支配欲」が原因だって?

wezz-y.com wezz-y.com 今日は、Wezzyというサイトに掲載された社会学者の平山亮のインタビューについて取り上げようと思う。タイトルからも察せる通り、男性が感じる社会的なプレッシャーや苦痛を問題として取り上げるタイプの「男性学」に対して平山は批判…

『ワンダーウーマン』とイスラエル云々についての雑感

news.yahoo.co.jp ちょうど先日『ワンダーウーマン』を見に行ったばかりなので、この記事について思うところを簡単に書いておこう。 ・読んでまず疑問に思うのが、この記事では「『ワンダーウーマン』の主演女優であるガル・ガドットは親イスラエルでイスラ…

女性哲学者が少ないのは、哲学が女性差別的であるから?

昨日にアップしたGoogle社員による「反多様性メモ」についての記事では「一般的に、女性は男性よりも数学やソフトウェア・エンジニアリングに対する関心が低い傾向にある」「Googleの社員やソフトウェア・エンジニアの大多数が女性であることの原因は、男女…

Google社員の「反多様性メモ」の内容は間違っていたのか?

jp.reuters.com www.bbc.com やや時機を逸している感はあるが、今更ながら、Google社員のジェームス・ダモアが社内文書にて男女の生物学的性差などを論じながらGoogleの多様性制度を批判したために解雇されてしまった事件について、軽く英語記事を紹介してみ…

ゆらぎ荘騒動についての雑感

togetter.com ↑ 最近話題になっているこの騒動について。 騒動の発端となったのは、以下の2つのツイートであるようだ。 ジャンプ開いたらいきなりこれだった。成人コミックかと思うよ…。公式の人気投票でキャラをここまで無意味に裸に剥いて、記号のように…

原罪としての"男性特権"

tocana.jp 上述の記事は最近話題になった「ジェンダー学版ソーカル事件」というべき事件についての紹介記事だが、この事件を起こした数学者ジェームズ・リンゼイ(James A. Lindsay) と哲学者のピータ・ボグホシアン(Peter Boghossian)が昨年にネット上で…

社会運動を効果的に行うためにはどうすればいいのか?

Change of Heart: What Psychology Can Teach Us About Spreading Social Change (English Edition) 作者: Nick Cooney 出版社/メーカー: Lantern Books 発売日: 2015/09/01 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 今回は、ニック・クーニー(Nick …

"女のヒステリー"と動物愛護運動

ヒマなので、昔自分で書いた修士論文の内容の一部を参考にしながら、記事を書いてみようと思う。私はアメリカ史を専門にしていた訳ではないので歴史に関する文章については事実誤認とか間違いが含まれているかもしれないが、そこはまあ勘弁してほしい。 アメ…

ポストモダニズムとポリティカル・コレクトネス

The Science of Liberty: Democracy, Reason, and the Laws of Nature 作者: Timothy Ferris 出版社/メーカー: Harper Perennial 発売日: 2011/02/08 メディア: ペーパーバック この商品を含むブログを見る 先日から読み始めたティモシー・フェリス著『自由…

Cultural appropriation(文化の盗用/文化の簒奪)という概念に対する批判の雑なまとめ

www.huffingtonpost.jp togetter.com togetter.com このテの話題でよく出てくるCultural appropriation(文化の盗用/文化の簒奪)という概念だが、白人が着物を着ることばかりでなく、「エミネムのような白人ラッパーはCultural appropriationだ」「ロック…

「性別間の生物学的な差異は存在しない、という社会学者たちの宗教」 by ジェリー・コイン 

The sociological religion of no biological differences between the sexeswhyevolutionistrue.wordpress.com 昨日に引き続き、進化生物学者・無神論者のジェリー・コインのブログからまたまた記事を紹介。 「性別間の生物学的な差異は存在しない、と…