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道徳的動物日記

動物や倫理学やアメリカについて勉強したことのある人の日記です。

倫理学

ある生物種が絶滅することの何が問題なのか?

オックスフォードのPractical Ethicsブログに、2015年の8月に倫理学者のカティア・ファリア(Catia Faria)が公開した記事を訳して紹介。 blog.practicalethics.ox.ac.uk 「生物種の絶滅を悪いこととする理由は(もしそんな理由が存在するとすれば)何…

「動物の苦痛の道徳的重要性」 by ロジャー・クリスプ

昨日に引き続き、オックスフォードのPractical Ethicsのブログから、2015年6月に公開された、倫理学者のロジャー・クリスプ(Roger Crisp)の記事を訳して紹介。 blog.practicalethics.ox.ac.uk 「動物の苦痛の道徳的重要性」 by ロジャー・クリスプ 最近、…

「安楽死と、弱者の保護」 by ロジャー・クリスプ

久しぶりにオックスフォードのPractical Ethicsのブログから、2015年9月に公開された、倫理学者のロジャー・クリスプ(Roger Crisp)の記事を訳して紹介。 blog.practicalethics.ox.ac.uk 「安楽死と、弱者の保護」 by ロジャー・クリスプ 悲しいことに、し…

科学や理性はなぜ人々や社会の道徳的向上をもたらすか(宗教はなぜ人々や社会の道徳的向上をもたらさないか)

The Moral Arc: How Science Makes Us Better People 作者: Michael Shermer 出版社/メーカー: Griffin 発売日: 2016/01/26 メディア: ペーパーバック この商品を含むブログを見る これまでにも何度か紹介しているマイケル・シャーマーの『 The Moral Arc: H…

動物倫理における宗教・文化の扱いについて

togetter.com 上記のTogetterは2016年のものだが、なぜか最近になってブクマが集まっているようだ。このTogetterの内容は基本的には「アニマルライツは宗教よりも重要ではない」と考えているまとめ主が自身の見解や自身に近い見解を持つ人の主張をまとめ…

「善と悪は科学で測れるか?」 by サム・ハリス

www.samharris.org 今回紹介するのは、心理学者哲学者・神経科学者のサム・ハリス(Sam Harris)が自著『Moral Landscape: How Science Can Determine Human Values(道徳の風景:科学はいかにして人間の価値を決定することができるか)』で行っている議論を…

タチアナ・ヴィサク『幸せな動物を殺すこと』:置き換え可能性の議論、総量功利主義と先行存在功利主義、非同一性問題

Killing Happy Animals: Explorations in Utilitarian Ethics (The Palgrave Macmillan Animal Ethics Series) 作者: Tatjana Višak 出版社/メーカー: Palgrave Macmillan 発売日: 2013/08/23 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 今回はドイツ人…

「動物が苦痛を感じているとも、植物が苦痛を感じないとも、確実に言うことはできない」(倫理に関する事実判断と価値判断についての私見)

togetter.com 上記のTogetterは私のツイートをセルフまとめしたものだが、この話題について、ブログでもちょっと書いてみたい。 動物を道徳的配慮の対象とする倫理学理論(や政治哲学などその他の規範理論)の多くは「ある存在は幸福や快楽などのポジティブ…

マーサ・ヌスバウムによる動物の「繁栄・開花」/「可能力アプローチ」論と、その問題点

正義のフロンティア: 障碍者・外国人・動物という境界を越えて (サピエンティア) 作者: マーサ・C.ヌスバウム,神島裕子 出版社/メーカー: 法政大学出版局 発売日: 2012/06/29 メディア: 単行本 クリック: 10回 この商品を含むブログを見る ドナルドソンとキ…

「死ぬ権利」を整備することは「死ぬ義務」につながるのか?

以下のツイートを目にしたのをきっかけに、前々から思っていたことを書こうと思う。 この学会の構成員は医療従事者(半数が医師)約4000人で、比較的小さな学会だが、こういうところからも「尊厳死」の世論作りを始めてきたんだね。 / ”本人が望まなければ救…

人文学は何の役に立つのか?

近年、「学問は役に立つのか?」「人文学を学ぶ意味はあるのか?」「利益を上げない学問に税金を投入する意味はあるのか?」みたいなことが言われることが多くなっているような気がする。大体の場合、やり玉に挙げられるのは人文学や文系の科目全般だったり…

「他人の立場に立つ」:黄金律、視点取得、共感、物語、理性、輪の拡大

何度か書いてきたことだが、儒教やキリスト教などの伝統的な道徳にせよ、現代における倫理学理論にせよ、道徳的な規範の多くには「黄金律」と呼ばれる考え方が含まれている*1。「あなたが人からしてもらいたいことを、人にしてあげなさい」という肯定的な形…

トランプ政権について、ピーター・シンガーのコメント

vpoint.jp ↑ こんな記事も出ていることなので、シンガー本人はドナルド・トランプ米大統領についてどんなコメントをしているのか、簡単に調べてまとめてみた。 www.project-syndicate.org 上述の、2017年2月1日付でProject Syndicateに発表された「ト…

動物倫理とポストモダン思想

davitrice.hatenadiary.jp ゲイリー・シュタイナーの主張は以前にも本人が書いた短い記事を訳して紹介したが、何しろ短かい記事だったのでシュタイナーの主張がわかりづらかったかもしれない。今回は、シュタイナーが著書『動物と、ポストモダニズムの限界』…

読書メモ:進化論 vs 道徳的実在論

The Point of View of the Universe: Sidgwick and Contemporary Ethics 作者: Katarzyna de Lazari-Radek,Peter Singer 出版社/メーカー: Oxford Univ Pr (Txt) 発売日: 2016/06 メディア: ペーパーバック この商品を含むブログを見る 『普遍的な観点から:…

読書メモ:実践理性の二元性

The Point of View of the Universe: Sidgwick and Contemporary Ethics 作者: Katarzyna de Lazari-Radek,Peter Singer 出版社/メーカー: Oxford Univ Pr (Txt) 発売日: 2016/06 メディア: ペーパーバック この商品を含むブログを見る 第6章は「倫理学にお…

読書メモ:シジウィックによる倫理学の三つの公理

The Point of View of the Universe: Sidgwick and Contemporary Ethics 作者: Katarzyna de Lazari-Radek,Peter Singer 出版社/メーカー: Oxford Univ Pr (Txt) 発売日: 2016/06 メディア: ペーパーバック この商品を含むブログを見る 『普遍的な観点から:…

読書メモ:反省的均衡と基礎付け主義

The Point of View of the Universe: Sidgwick and Contemporary Ethics 作者: Katarzyna de Lazari-Radek,Peter Singer 出版社/メーカー: Oxford Univ Pr (Txt) 発売日: 2016/06 メディア: ペーパーバック この商品を含むブログを見る 第4章では、道徳的な…

「問題となることは存在するのか?」 by ピーター・シンガー (デレク・パーフィットの On What Matters について)

dailynous.com 哲学者のデレク・パーフィット(Derek Parfit)が元旦に逝去したが、パーフィットの著作『On What Matters(問題となることについて)』について書かれた、ピーター・シンガー(Peter Singer)が2011年の1月にProject Syndicateに発表し…

読書メモ:知覚直観主義(道徳的個別主義)と常識道徳

The Point of View of the Universe: Sidgwick and Contemporary Ethics 作者: Katarzyna de Lazari-Radek,Peter Singer 出版社/メーカー: Oxford Univ Pr (Txt) 発売日: 2016/06 メディア: ペーパーバック この商品を含むブログを見る 第3章のタイトルは「…

読書メモ:倫理学とはなんぞや、道徳における「理由」と感情についてのシジウィックの見解

The Point of View of the Universe: Sidgwick and Contemporary Ethics 作者: Katarzyna de Lazari-Radek,Peter Singer 出版社/メーカー: Oxford Univ Pr (Txt) 発売日: 2016/06 メディア: ペーパーバック この商品を含むブログを見る 『The Point of View …

メモ:死がもたらす危害の「時間的利益相対説」

ジェフ・マクマーン(Jeff McMhan)が著書『Ethics of Killing(殺すことの倫理学)』で主張している「時間的利益相対説(Time-Relative Interest Account)」についてのメモ。とはいえ、『Ethics of Killing』は現在手元にないので、デビッド・ドゥグラツィ…

読書メモ:デール・ジェイミーソンの環境倫理学入門

Ethics and the Environment: An Introduction (Cambridge Applied Ethics) 作者: Dale Jamieson 出版社/メーカー: Cambridge University Press 発売日: 2008/01/24 メディア: ペーパーバック この商品を含むブログを見る 先日に読んでいた本。著者のデール…

「限界事例の議論」に関する、ゲイリー・ヴァーナーの議論

道徳的地位やパーソン論に関する議論では「限界事例の議論(Argument from Marginal Cases)」がよく出てくる。 「人間はパーソンであるが動物はパーソンではない」と論じるとき、人間がパーソンである理由として「過去・現在・未来に渡って自分が存在すると…

メモ・二層功利主義とはなんぞや

R・M・ヘアが『道徳的に考えること』にて論じている「二層功利主義」という考え方を、『道徳的に考えること』や他のヘアの著作を読み解きながら書かれたゲイリー・ヴァーナーの著作『Pesonhood, Ethics, and Animal Cognition: Situating Animals in Hare's …

メモ・功利主義と思考実験、功利主義と直観

・功利主義に対してよくある批判が、「ある犯罪によって社会不安が起こり暴動が起こりそうになっており、暴動が起こると確実に何人以上かが死ぬ。政府には犯人を特定して捕まえることができないが、無実とわかっている一人の男を犯人だということにして処刑…

「共感の罠」 by ピーター・シンガー

www.project-syndicate.org 今回紹介するのは倫理学者ピーター・シンガーが先日にProject Syndicateに発表した記事。心理学者ポール・ブルームの新刊の書評的な記事である。 「共感の罠」 by ピーター・シンガー バラク・オバマがアメリカ大統領として選出さ…

メモ・道徳的地位と道徳的重要性、なぜパーソンの生は特別な道徳的重要性を持つのか

davitrice.hatenadiary.jp 前回の記事の付け足し、補足的な内容。書き終わってから気付いたが、前回では「人格」「準-人格」と訳していたところを「パーソン」「準-パーソン」と訳してしまった。直すのめんどくさいのでそのままにしておく。意味は一緒。 パ…

「捕鯨に対する文化的偏見?」 by ピーター・シンガー

www.project-syndicate.org 今回紹介するのは、倫理学者のピーター・シンガーが2008年の1月に Project Syndicate に発表した、「Hypocrisy on the High Seas?(公海上の偽善?)」という記事。2016年に発売されたシンガーの倫理学エッセイ集である…

『動物と、ポストモダニズムの限界』 by ゲイリー・シュタイナー

哲学者のゲイリー・シュタイナー(Gary Steiner)が、本人の著書『Animals and the Limits of Postmodernism(動物と、ポストモダニズムの限界)』について短く解説している記事を紹介する。 私はポストモダニズムにはあまり詳しくないのだが、いくつかの本…

科学的知識に基づいた動物倫理:ゲイリー・ヴァーナーのパーソン論

動物について言及する倫理学的主張の多くは「人間だけでなく動物も道徳的地位を持つ」「人間だけでなく動物も道徳的配慮の対象になる」と主張するが、「人間と動物は全く全く同じ道徳的地位を持つ」とは主張しない。例えば人間と猫を比較する場合には、多く…

ペット動物の去勢に関する倫理

猫や犬などのペット動物に去勢・不妊手術を行うことは日本でも一般に行われているし、動物愛護協会も各都道府県の獣医師会も環境省も支持しているようだ*1。だが、インターネットやメディアではペット動物に去勢・不妊手術を行うことへの反対意見を見かける…

動物倫理・功利主義における「置き換え可能性」の議論

www.irishtimes.com 今回紹介するのは The Irish TImes というサイトに掲載された、功利主義系の倫理学者タティアナ・ヴィサクのインタビュー記事。ピーター・シンガーの『実践の倫理』などでも取り上げられている、動物や人間の生命の「置き換え可能性(rep…

実用的な道徳理論としての功利主義 (『モラル・トライブズ』の著者へのインタビュー記事)

news.harvard.edu Havard gazette というサイトに掲載された、心理学者兼道徳哲学者のジョシュア・グリーンのインタビュー記事について、後半だけ紹介。省略箇所に合わせてちょっと意訳もしている。これだけじゃなんのことかわからない人も多いと思うので気…

「ブルキニを禁止する?」 by ピーター・シンガー

www.project-syndicate.org 今回紹介するのは倫理学者のピーター・シンガーが2016年の9月に Project Syndicate に発表した記事。最近はドナルド・トランプ当選に関連してジョナサン・ハイト等による多文化主義について批判的な記事を翻訳していたが、こ…

ピーター・シンガーと資本主義

theconcourse.deadspin.com 今回は、Concourseというwebサイトに掲載された「革命は行ってもよいだろうか?世界一の倫理学者に訊いてみた」というタイトルの記事を軽く紹介したい。 記事の冒頭では、現代のアメリカにおける富裕層と貧困層との間の圧倒的な格…

「遺伝子選別という諸刃の剣」 by ピーター・シンガー

www.project-syndicate.org 昼にアップした記事に関連して、倫理学者のピーター・シンガー(Peter Singer)が Project Syndicate に発表した記事を紹介する。10年前に発表された記事なので、記事内の情報は古くなっていることには留意してほしい。 なお、…

「才能遺伝子の倫理:『ガタカ』の世界への道のりか?」 by ジュリアン・サバレスキュ

オーストラリアの Conversation 誌に掲載された、倫理学者のジュリアン・サバレスキュ(Julian Savulescu)の記事。知能に関する遺伝子に関する研究結果について紹介しながら、生まれてくる子供に対する遺伝的な介入の是非について論じた記事である。特徴的…

「生命倫理学者?邪魔だからどっか行け」by スティーブン・ピンカー

www.bostonglobe.com 本日紹介する記事は、心理学者のスティーブン・ピンカー(Steven Pinker)が2015年の8月1日に Boston Grobe に発表した記事。タイトル通り、生命倫理学者たちを生命医学研究の障害だと見なして痛烈に批判している記事である*1。 …

「私が功利主義者ではない理由」 by ジュリアン・サバレスキュ

blog.practicalethics.ox.ac.uk 昨日に引き続き、Practical Ethics からジュリアン・サバレスキュ(Julian Savulescu)の記事を紹介。 「私が功利主義者ではない理由」 by ジュリアン・サバレスキュ 功利主義は多くの人々に嫌われていて、中傷されていて、誤…

「トロッコ問題:殺すことと死ぬに任せることとの間に道徳的な違いはあるのか?」 by ジュリアン・サバレスキュ

blog.practicalethics.ox.ac.uk Practical Ethicsに掲載された、倫理学者のジュリアン・サバレスキュ(Julian Savulescu)の記事。レクチャーとして口頭で発表した内容の書き下し文?であるようだ。英語圏の倫理学ではいわゆる「トロッコ問題」についてよく…

「文化相対主義と女子割礼」by ドミニク・ウィルキンソン

blog.practicalethics.ox.ac.uk 今回紹介するのは、イギリスの Practical Ethics というサイトに掲載された、倫理学者のドミニク・ウィルキンソン(Dominic Wilkinson)による記事。 「文化相対主義と女子割礼」by ドミニク・ウィルキンソン 2014年2月…

「猫戦争:自然保全の道徳的汚点」 by ウィリアム・リン

www.huffingtonpost.com 本日紹介するのは、環境や動物に関する倫理や政策を研究しているウィリアム・リン(William Lynn)が英語版ハフティントンポストに発表した記事。 natgeo.nikkeibp.co.jp 上の記事にて紹介されている、『Cat Wars』という著作とそれ…

ナショナリストの道徳とグローバリストの道徳

http://www.nytimes.com/2016/07/15/opinion/we-take-care-of-our-own.html?_r=0 本日紹介するのは、ニュヨークタイムスのコラムニストのデビッド・ブルックスによる記事。昨日はジョナサン・ハイトによる「ナショナリズムは、いつ、なぜグローバリズムに打…

「"権利"について語るのはもう止めよう」by ジェリー・コイン

Let’s stop talking about “rights”, or at least don’t assert them as unquestionable givens « Why Evolution Is True 今朝にアップした記事に引き続き、進化生物学者であり無神論者であるジェリー・コイン(Jerry Coyne)のブログから記事を紹介。コイン…

「功利主義:5人を救うために1人を殺すことは道徳的か?」 by フランク・S・ロビンソン

Utilitarianism: Is Killing One to Save Five Moral? | The Rational Optimist 今回紹介するのは、フランク・S・ロビンソン(Frank S Robinson)という人のブログに掲載された、ジョシュア・グリーンの『モラル・トライブズ - 共存の道徳哲学へ』の書評的な…

効果的利他主義は現状肯定だからダメなのか?

あなたが世界のためにできる たったひとつのこと―<効果的な利他主義>のすすめ 作者: ピーター・シンガー,関美和 出版社/メーカー: NHK出版 発売日: 2015/12/19 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (4件) を見る ・ピーター・シンガーの効果的利他主義と…

心理学者ポール・ブルームの反・共感論

ジャスト・ベイビー:赤ちゃんが教えてくれる善悪の起源 作者: ポール・ブルーム,竹田円 出版社/メーカー: エヌティティ出版 発売日: 2015/05/13 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (3件) を見る 今回は心理学者ポール・ブルーム(Paul Bloom)の議論を…

道徳に関する意思決定と感情の関係について、心理学者兼哲学者のジョシュア・グリーンへのインタビュー

www.theatlantic.com 今回紹介するのは、 The Atlantic に掲載された、ローレン・カッシーニ・デイヴィス( Larwen Cassani Davis)という Editorial Fellow(編集委員?)による、哲学者・心理学者のジョシュア・グリーン(Joshua Greene)へのインタビュー…

広島・長崎への原爆投下の是非についての、マイケル・シャーマーの議論

www.asahi.com オバマ大統領が広島を訪問することや、そこで「謝罪」はしないであろうことの是非を巡って議論が起きているようだ。 最近読んでいたマイケル・シャーマーの『Moral Arc』のなかで、「ファットマンの道徳、リトルボーイをめぐる論争」という題…