道徳的動物日記

人々の議論を眺めながら考えたことや読んだ本の感想など。このブログは利益や金銭目的ではなく人々に対する啓蒙のために書かれています。ありがたがれ。

倫理学

大学受験の正義論(読書メモ:『これからの「正義」の話をしよう』)

これからの「正義」の話をしよう (ハヤカワ・ノンフィクション文庫) 作者: マイケルサンデル,Michael J. Sandel,鬼澤忍 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2011/11/25 メディア: 文庫 購入: 4人 クリック: 204回 この商品を含むブログ (81件) を見る 功利主…

生物学的インセンティブ・システムに抗う(読書メモ:『欲望について』)

欲望について 作者: ウィリアム・B.アーヴァイン,William B. Irvine,竹内和世 出版社/メーカー: 白揚社 発売日: 2007/12/01 メディア: 単行本 クリック: 3回 この商品を含むブログ (5件) を見る タイトル通り、欲望という事象についての本。 第一部では「欲…

"文学的" な哲学のリスク(読書メモ:『若者のための<死>の倫理学』)

若者のための死の倫理学 作者: 三谷尚澄 出版社/メーカー: ナカニシヤ出版 発売日: 2013/01/01 メディア: 単行本 クリック: 2回 この商品を含むブログ (1件) を見る なかなか感想を書くのが難しい本である。 テーマは「死」となっており、身近な人が亡くなる…

読書メモ:『自分で考える勇気:カント哲学入門』

自分で考える勇気――カント哲学入門 (岩波ジュニア新書) 作者: 御子柴善之 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2015/03/21 メディア: 新書 この商品を含むブログ (7件) を見る 石川文廉の『カント入門』もわかりやすかったが、こちらはさらに輪をかけてわかり…

読書メモ:『ストア派の哲人たち』

ギリシア・ローマ-ストア派の哲人たち-セネカ、エピクテトス、マルクス・アウレリウス 作者: 國方栄二 出版社/メーカー: 中央公論新社 発売日: 2019/01/09 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 自然は動物が自分自身と親密であるように創ったから、…

読書メモ:『進化倫理学入門』

進化倫理学入門 作者: スコット・ジェイムズ,児玉聡 出版社/メーカー: 名古屋大学出版会 発売日: 2018/01/29 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (4件) を見る 前半は進化心理学や人類学などが道徳に関してもたらす客観的知見の概説やおさらい、後半はそ…

スポーツチームへの支持と政治的党派性の共通点、ほか(読書メモ:『反共感論:社会はいかに判断を誤るか』)

反共感論―社会はいかに判断を誤るか 作者: ポール・ブルーム,高橋洋 出版社/メーカー: 白揚社 発売日: 2018/02/02 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (2件) を見る この本のメインとなる論旨については、以前に別の記事で紹介しているので、今回は細か…

「お前の意見は感情的だ」という批判がダメな理由

反共感論―社会はいかに判断を誤るか 作者: ポール・ブルーム,高橋洋 出版社/メーカー: 白揚社 発売日: 2018/02/02 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (2件) を見る 心理学者のポール・ブルームによる『反共感論』については、原著が出版される前にブル…

「道徳の秩序」と「政治の秩序」(読書メモ:『資本主義に徳はあるか』)

資本主義に徳はあるか 作者: アンドレコント=スポンヴィル,Andr´e Comte‐Sponville,小須田健,コリーヌカンタン 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店 発売日: 2006/08 メディア: 単行本 クリック: 6回 この商品を含むブログ (10件) を見る フランス人の哲学者であ…

人はなぜ過去の選択にこだわるのか

幸福はなぜ哲学の問題になるのか (homo viator) 作者: 青山拓央 出版社/メーカー: 太田出版 発売日: 2016/09/14 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (6件) を見る 昨日にも『幸福はなぜ哲学の問題になるのか』の感想を書いたが、本書の中でも特に印象に…

読書メモ:『幸福はなぜ哲学の問題になるのか』

幸福はなぜ哲学の問題になるのか (homo viator) 作者: 青山拓央 出版社/メーカー: 太田出版 発売日: 2016/09/14 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (6件) を見る 幸福論系の哲学をまとめて読んでいた時期があったのだが、その中でもこの本はかなり良か…

読書メモ:『不道徳的倫理学講義-人生にとって運とは何か』

不道徳的倫理学講義: 人生にとって運とは何か (ちくま新書) 作者: 古田徹也 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2019/05/07 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る 西洋の倫理思想史の中でも「運」について言及している哲学者たちの思想を取り上げて、…

「動物に苦痛を与えてはいけない」という主張は功利主義?/功利主義は「苦痛」にしか注目しない?

功利主義及び動物倫理に関するよくある誤解について、さくっと書く。 「動物に苦痛を与えてはいけない」という主張は様々な倫理学者が提唱してきたものではあるが、過去の人であればジェレミー・ベンサム、現代の人であればピーター・シンガーが有名であろう…

「攻めの倫理」と「守りの倫理」(『ふだんづかいの倫理学』読書メモ)

ふだんづかいの倫理学 (犀の教室Liberal Arts Lab) 作者: 平尾昌宏 出版社/メーカー: 晶文社 発売日: 2019/03/12 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 前回の記事でも言及した内容とはまた別口で、『ふだんづかいの倫理学』を読んで考えたことにつ…

「"正義"について語るのはもう止めよう」

記事のタイトルは、過去に自分で訳した記事のパロディ*1。 ふだんづかいの倫理学 (犀の教室Liberal Arts Lab) 作者: 平尾昌宏 出版社/メーカー: 晶文社 発売日: 2019/03/12 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 先日から『ふだんづかいの倫理学』と…

読書メモ:『人生の意味:価値の創造』

人生の意味―価値の創造 (りぶらりあ選書) 作者: アーヴィングシンガー,Irving Singer,工藤政司 出版社/メーカー: 法政大学出版局 発売日: 1995/10/01 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 読んだ。いろんな哲学者が「人生の意味」について論じた主…

「どこに投票したか」に対する批判は許されないか?

投票日から一ヶ月くらい経ってしまったが、思うところあって雑感をいくつか。 ・ここ数年間の選挙では、右派が多くの議席を獲得して左派は大して議席を獲得できない、という結果になることが定番だ。自民党は毎度のように圧勝するし、大阪は相変わらず維新の…

読書メモ:『徳は知なり』(by ジュリア・アナス)

徳は知なり: 幸福に生きるための倫理学 作者: ジュリア・アナス,相澤康隆 出版社/メーカー: 春秋社 発売日: 2019/03/25 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 本の要約などではなく、気に入ったところを抜き出すだけのほんとうに単なるメモ。 『徳は…

トロッコ問題批判批判

先日に森村進の『幸福とは何か』 (ちくまプリマー新書、2018年)を読んでいたら、後半の方で以下のような記述があった*1。 幸福とは何かを考えるにあたって、私は本書でさまざまの思考実験を利用してきましたが、その中には非現実的な例も少なくありませんで…

狩猟にまつわる倫理的問題

davitrice.hatenadiary.jp ↑ 倫理学者のゲイリー・ヴァーナーの論文「環境倫理、狩猟、動物の位置付け(Environmental Ethics, Hunting, and the Place of Animals)」を要約した上記の記事など、このブログでは英語圏の倫理学者が狩猟について書いた文章を…

ピンカーによるニーチェ批判、AIとかスマホとかは理性の敵なのか(「啓蒙をめぐる戦争」の要約【その3】)

前々回と前回の続き。 批判その7:啓蒙主義(科学的な理性)は、その産物である人工知能やソーシャルメディアによって葬り去られてしまうだろう。 ピンカーの反論:メアリー・シェリーが『フランケンシュタイン』を書いた時代なら、そのような物語は魅力的…

アニマルライツとフェミニズム

The Feminist Care Tradition in Animal Ethics: A Reader 作者: Josephine Donovan,Carol J. Adams 出版社/メーカー: Columbia Univ Pr 発売日: 2007/11/01 メディア: ペーパーバック 購入: 1人 クリック: 1回 この商品を含むブログを見る ヴィーガンフェミ…

「かわいそうランキング」についての雑感

一年くらい前から、Twitterやはてブなどで「かわいそうランキング」という単語を目にする機会がある。TLなどに流れてくるのをざっと見た感じでは、「反ポリコレ」「反フェミニズム」、「弱者男性論者」といったクラスタの人々が特によく用いる単語であるよう…

「子供のワクチン接種を拒否することは、脱税に等しい罪である」 by アルベルト・ジュリビーニ

久しぶりにオックスフォードのPractical Ethicsブログから、イタリアの倫理学者であるアルベルト・ジュリビーニ(Alberto Giubilini)の記事を訳して紹介。元記事の公開日は2017年10月31日。記事中に貼られている資料などへのリンクは割愛した。 blog.practica…

市民的不服従の倫理

先日に訳した記事に関連して、倫理学者のピーター・シンガーの主著『実践の倫理』で行われている、市民的不服従に関する議論も簡単にまとめてみよう。参考にしているのは第三版の原著(三版は未邦訳)、11章の「市民的不服従、暴力、テロリズム(Civil Disob…

市民的不服従と動物の権利運動

www.theage.com.au 今回紹介するのは、2013年の5月10日にオーストラリアの The Ageというニュースサイトに掲載された、政治学者のシヴォーン・オサリヴァン(Siobhan O'Sullivan)と倫理学者のクレア・マコーズランド(Clare McCausland)による記事。オサリ…

普通選挙権は倫理的に認められるか?

オックスフォードのPractical Ethicsブログに、2015年の4月に倫理学者のジョセフ・ボーウェン(Joseph Bowen)が公開した記事を訳して紹介。 blog.practicalethics.ox.ac.uk 「選挙権を認められるべき人々とは誰だろうか?」 by ジョセフ・ボーウェン …

カント的な動物倫理の議論:クリスティン・コースガードのインタビュー記事

blog.practicalethics.ox.ac.uk オックスフォードのPractical Ethicsブログから、2015年の4月に公開された、カント的な立場の倫理学を主張する倫理学者クリスティン・コースガード(Christine Korsgaard)にEmilian Mihailovというルーマニア(?)の倫理学…

「あなたが平等主義者なら、どうしてあなたは種差別主義者なのか?」 by カティア・ファリア

オックスフォードのPractical Ethicsブログに、2015年の2月に倫理学者のカティア・ファリア(Catia Faria)が公開した記事を訳して紹介。 blog.practicalethics.ox.ac.uk 「あなたが平等主義者なら、どうしてあなたは種差別主義者なのか?」 by カティ…

「意識と、死の悪さ」 by ジョシュア・シェパード

本日はオックスフォードのPractical Ethicsブログから哲学者のジョシュア・シェパード(Joshua Shepherd)の記事を訳して紹介。注釈と参考文献は省いている(後日に付け足すかも)。記事内で取り上げられているジェフ・マクマーン(Jeff McMahan)の『Ethics…