道徳的動物日記

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動物

最近読んだ本シリーズ:『体育がきらい』&『サイエンス超簡潔講義 動物行動学』&『サイエンス超簡潔講義 うつ病』

●『体育がきらい』 体育がきらい (ちくまプリマー新書) 作者:坂本拓弥 筑摩書房 Amazon 著者は大学で体育やスポーツを教えており、また「体育哲学」という研究を行なっているそうだ。本書で哲学っぽいことが書かれるのは終盤になってからだが、身体を通じて…

道徳の問題は科学的に、定量的に考えなければいけない理由

〈効果的な利他主義〉宣言! ――慈善活動への科学的アプローチ 作者:ウィリアム・マッカスキル 発売日: 2018/11/02 メディア: 単行本 ビル・ゲイツやウォーレン・バフェットが実践していることでも有名な「効果的な利他主義」について書かれた本。パート1では…

野生動物に対する倫理的責任とは?

natgeo.nikkeibp.co.jp ↑ 上記の記事は本日に掲載されたものだが、この中で取り上げられているクレア・パーマーという倫理学者が書いた『Animal Ethics in Context(文脈のなかの動物倫理)』をちょうど再読していたところだった。この本の内容についてはパ…

倫理学の理論や知識と、実際の生活との齟齬や乖離について(読書メモ:『哲学者とオオカミ』)

哲学者とオオカミ―愛・死・幸福についてのレッスン 作者:マーク ローランズ 出版社/メーカー: 白水社 発売日: 2010/04/01 メディア: 単行本 哲学者である著者がオオカミの子どもを引き取って「ブレニン」と名付けて、アメリカやアイルランド、イギリスにフラ…

「動物が苦痛を感じているとも、植物が苦痛を感じないとも、確実に言うことはできない」(倫理に関する事実判断と価値判断についての私見)

togetter.com 上記のTogetterは私のツイートをセルフまとめしたものだが、この話題について、ブログでもちょっと書いてみたい。 動物を道徳的配慮の対象とする倫理学理論(や政治哲学などその他の規範理論)の多くは「ある存在は幸福や快楽などのポジティブ…

動物の市民権:『人と動物の政治共同体』(1)

< 原著は数年前に読んだことがあるのだが、スー・ドナルドソンとウィル・キムリッカの共著『人と動物の政治共同体 「動物の権利」の政治理論(原題:ZoopolisA Political Theory of Animal Rights)』の邦訳をようやく入手することができたので、この本の第…

「工場畜産は人類史上最大の罪の一つだ」 by ユヴァル・ノア・ハラリ

www.theguardian.com 今回紹介するのは歴史学者のユヴァル・ノア・ハラリ(Yuval Noah Harari)がイギリスのGuardian誌に掲載した記事。 最近邦訳が出たハラリの著書『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福( "Sapiens: A Brief History of Humankind" )…

「猫戦争:自然保全の道徳的汚点」 by ウィリアム・リン

www.huffingtonpost.com 本日紹介するのは、環境や動物に関する倫理や政策を研究しているウィリアム・リン(William Lynn)が英語版ハフティントンポストに発表した記事。 natgeo.nikkeibp.co.jp 上の記事にて紹介されている、『Cat Wars』という著作とそれ…

「昆虫に意識はあるか?」 by ピーター・シンガー

www.project-syndicate.org 今回紹介する記事は、Project Syndicateに掲載された倫理学者ピーター・シンガーのコラム「Are Insects Conscious?」。 「昆虫に意識はあるか?」 by ピーター・シンガー 昨年の夏、私が栽培していたルッコラの葉にモンシロチョウ…

マーク・ベコフの「人道的自然保全」論

生物学者・動物行動学者のマーク・ベコフは、動物の抱く様々な感情について研究しており、動物の感情について解説した多くの著書を執筆している。*1また、ベコフは動物保護・動物の福祉への配慮の必要性を昔から説いている。*2 www.huffingtonpost.com 野生…

「イルカは馬鹿ではない」 by フィリッパ・ブレイク

今回紹介する記事の著者は、クジラやイルカを研究する生物学者フィリッパ・ブレイクである。彼女はクジラやイルカの保護活動にも関わっているようだ。編著の『Whales and Dolphins: Cognition, Culture, Conservation and Human Perceptions』はクジラやイル…

「動物の権利、多文化主義、左派」by ウィル・キムリッカ&スー・ドナルドソン 

ウィル・キムリッカとスー・ドナルドソンによる論文、"Animal Rights, Multicultrualism and the Left"を、要約して翻訳して紹介する。要約ではあるが、長い文章になっている。註釈や引用に参考文献などは省いているので、英語が読める人はもとの論文を読む…

ローリー・グルーエン「サミュエル・デュボースとライオンのセシル」

エコロジカル・フェミニストであり動物倫理についての著作もある倫理学者ローリー・グルーエンが、今年の7月末にアルジャジーラ・アメリカのWebサイトに投稿した英語記事を紹介する*1。 この記事は、オハイオ州で黒人男性サミュエル・デュボースが白人警官…

倫理学における、動物の「知能による線引き」について、雑に説明してみた

<a href="http://anond.hatelabo.jp/20150523180144" data-mce-href="http://anond.hatelabo.jp/20150523180144">イルカ漁の是非について</a>anond.hatelabo.jp 「おれのアタマじゃ結論出ないので、倫理学の専門家に説明してほしいなあ。」 私も専門家ではないし、時間がないので雑になるが、前半の「知能による線引き」について、とりあえず説明してみる。 基本的に、倫理学…

動物の権利運動と動物福祉 ー 規制か、撤廃か? 動物の権利運動における畜産をめぐる論争

アニマルウェルフェア―動物の幸せについての科学と倫理 作者: 佐藤衆介 出版社/メーカー: 東京大学出版会 発売日: 2005/06 メディア: 単行本 購入: 1人 この商品を含むブログ (8件) を見る 1:「動物福祉」とは何か 欧米では、動物愛護運動は主にイギリスを…

「動物の権利」を主張するとはどういうことか  (動物の「道徳的権利」と、その他の意味合いでの「権利」)

動物の権利 (〈1冊でわかる〉シリーズ) 作者: デヴィッド・ドゥグラツィア,戸田清 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2003/09/06 メディア: 単行本(ソフトカバー) クリック: 20回 この商品を含むブログ (18件) を見る 「動物の権利」という言葉をめぐるや…

「文化は尊重されるべきである」という規範と動物倫理

・一般的に、「文化とはよいものである」「文化の多様性は尊重されるべきである」「人々が自分の親しんでいる文化から引き離されて、親しみのない異文化を押し付けられることは問題である」といった考えは広く支持されていると思う。*1多くの人は、自分にと…

『世界一賢い鳥、カラスの科学』

世界一賢い鳥、カラスの科学 作者: ジョン・マーズラフ,トニー・エンジェル,東郷えりか 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2013/09/13 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 『世界一賢い鳥、カラスの科学』 2013年 河出書房新社 著:ジョ…