道徳的動物日記

動物や倫理学やアメリカについて勉強したことのある人の日記です。

動物倫理

「捕鯨に対する文化的偏見?」 by ピーター・シンガー

www.project-syndicate.org 今回紹介するのは、倫理学者のピーター・シンガーが2008年の1月に Project Syndicate に発表した、「Hypocrisy on the High Seas?(公海上の偽善?)」という記事。2016年に発売されたシンガーの倫理学エッセイ集である…

『動物と、ポストモダニズムの限界』 by ゲイリー・シュタイナー

哲学者のゲイリー・シュタイナー(Gary Steiner)が、本人の著書『Animals and the Limits of Postmodernism(動物と、ポストモダニズムの限界)』について短く解説している記事を紹介する。 私はポストモダニズムにはあまり詳しくないのだが、いくつかの本…

科学的知識に基づいた動物倫理:ゲイリー・ヴァーナーのパーソン論

動物について言及する倫理学的主張の多くは「人間だけでなく動物も道徳的地位を持つ」「人間だけでなく動物も道徳的配慮の対象になる」と主張するが、「人間と動物は全く全く同じ道徳的地位を持つ」とは主張しない。例えば人間と猫を比較する場合には、多く…

ペット動物の去勢に関する倫理

猫や犬などのペット動物に去勢・不妊手術を行うことは日本でも一般に行われているし、動物愛護協会も各都道府県の獣医師会も環境省も支持しているようだ*1。だが、インターネットやメディアではペット動物に去勢・不妊手術を行うことへの反対意見を見かける…

動物倫理・功利主義における「置き換え可能性」の議論

www.irishtimes.com 今回紹介するのは The Irish TImes というサイトに掲載された、功利主義系の倫理学者タティアナ・ヴィサクのインタビュー記事。ピーター・シンガーの『実践の倫理』などでも取り上げられている、動物や人間の生命の「置き換え可能性(rep…

アメリカにおける動物愛護運動の歴史

www.csmonitor.com 今回紹介するのは、2014年の4月にクリスチャン・サイエンス・モニター誌のホームページに掲載された、アメリカの歴史家 ダイアン・ビアーズ(Diane Beers) へのインタビュー記事。 ビアーズはアメリカの動物愛護運動の歴史について…

「なぜ動物を食べることに罪悪感を抱かないのか?」

theconversation.com 今回紹介するのは、心理学者のキャロライン・スペンス(Caroline Spence)という人が2015年にオーストラリアの Conversation 誌に掲載誌した記事。社会心理学の論文が色々と参照されている。 「なぜ私たちは動物を食べることにもっ…

「工場畜産は人類史上最大の罪の一つだ」 by ユヴァル・ノア・ハラリ

www.theguardian.com 今回紹介するのは歴史学者のユヴァル・ノア・ハラリ(Yuval Noah Harari)がイギリスのGuardian誌に掲載した記事。 最近邦訳が出たハラリの著書『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福( "Sapiens: A Brief History of Humankind" )…

環境倫理と動物倫理についての論文を雑に紹介

davitrice.hatenadiary.jp 昨日に紹介したこの記事に関連して、倫理学者のゲイリー・ヴァーナー(Gary Varner)が The Oxford Handbook of Animal Ethicsに寄稿している記事「環境倫理、狩猟、動物の位置付け(Environmental Ethics, Hunting, and the Place…

「猫戦争:自然保全の道徳的汚点」 by ウィリアム・リン

www.huffingtonpost.com 本日紹介するのは、環境や動物に関する倫理や政策を研究しているウィリアム・リン(William Lynn)が英語版ハフティントンポストに発表した記事。 natgeo.nikkeibp.co.jp 上の記事にて紹介されている、『Cat Wars』という著作とそれ…

「シンシナティ動物園の問題はゴリラを射殺したことではなく、動物園であることそのものだ」 by ローリー・グルーエン

www.washingtonpost.com 今回紹介するのは、倫理学者のローリー・グルーエン(Lori Gruen)がワシントン・ポストに投稿した記事。グルーエンは霊長類保護に関するプロジェクトにも積極的に関わっている人のようであり、最近では動物や人間を監禁状態に置くこ…

「昆虫に意識はあるか?」 by ピーター・シンガー

www.project-syndicate.org 今回紹介する記事は、Project Syndicateに掲載された倫理学者ピーター・シンガーのコラム「Are Insects Conscious?」。 「昆虫に意識はあるか?」 by ピーター・シンガー 昨年の夏、私が栽培していたルッコラの葉にモンシロチョウ…

肉食を正当化する心理

nymag.com 今回紹介するのは、 Science of Usというwebページにジェシ・シンガル(Jesse Singal)という人が掲載した「肉食を正当化する4つの方法(The 4 Ways People Rationalize Eating Meat)」という記事。 Why We Love Dogs, Eat Pigs, and Wear Cows:…

「人道革命」by ニコラス・クリストフ (消費者主導の、動物福祉の改善運動についての記事)

http://www.nytimes.com/2016/05/15/opinion/sunday/a-humane-revolution.html 今回紹介するのは、ニューヨークタイムス紙にコラムニストのニコラス・クリストフ(Nicholas Kristof)が、全米人道協会(Humane Society of the United States)の会長のウェイ…

「人権から感覚のある存在の権利へ」 by アラスデア・コクレーン

www.casj.org.uk 先日に引き続き、イギリスの政治学者アラスデア・コクレーンがCentre for Animals and Social Justiceに掲載した記事を紹介。 記事の原題はFrom Human Rights to Sentient Rights. 別のところで発表された論文の圧縮版のようである。記事の…

「誰が動物の福祉に責任を負っているのか?」 by ロバート・ガーナー

www.casj.org.uk 今回の記事はイギリスのレスター大学の政治学部の教授であるロバート・ガーナー(Robert Garner)によるもの。ガーナーは以前から動物に関する政治学的な著作を書いており、この分野では有名な人。 先日の記事と同じく、イギリスの「Centre …

「動物の福祉 VS 動物の権利:誤った二分法」 by アラスデア・コクレーン

www.casj.org.uk 今回は、イギリスのシェフフィールド大学の政治学部で政治学理論の講師をしている政治学者アラスデア・コクレーンの記事を紹介。コクレーンは動物の権利・動物倫理に関する単著も出版している。 原文が掲載されているサイトは「Centre for A…

「動物の感情、動物の感覚、動物の福祉、動物の権利」 by マーク・ベコフ

www.psychologytoday.com 「動物の感情、動物の感覚、動物の福祉、動物の権利」 by マーク・ベコフ 私が書いてきた本やブログ記事の多くは、動物の感情や感覚という話題を扱ったものだ*1。この記事では、動物は実際に苦痛を感じることができるし深い感情を持…

「「ペット」:動物の家畜化に内在する本質的な問題」 by ゲイリー・フランシオン

www.abolitionistapproach.com 今回紹介するのは、動物の権利論者・動物の権利運動家の、ゲイリー・フランシオンの記事。フランシオンはアメリカの法律学者で、法律において動物が「所有物」として扱われていることを批判し、動物を利用することを認める ins…

「工場的畜産は残酷なのか?」という記事についての雑感

工場的畜産は残酷なのか? - 感想文 この記事についての雑感をTwitterの方でつぶやいたので、まとめて転載する。 工場的畜産は残酷なのか? - 感想文 https://t.co/zpYG4efP2h — デビット・ライス (@RiceDavit) 2016, 2月 2 自然界の動物も人間も、自分と同…

無神論と動物倫理 ・ 「ある種差別主義者の告白」 by マイケル・シャーマー

(翻訳はところどころ意訳・省略している。無神論については最近関心を持って調べ始めたところなので、知識の間違いや誤解などが含まれているかもしれない。) マイケル・シャーマーはアメリカの科学史家、サイエンスライター。疑似科学や宗教信仰を懐疑・批…

マーク・ベコフの「人道的自然保全」論

生物学者・動物行動学者のマーク・ベコフは、動物の抱く様々な感情について研究しており、動物の感情について解説した多くの著書を執筆している。*1また、ベコフは動物保護・動物の福祉への配慮の必要性を昔から説いている。*2 www.huffingtonpost.com 野生…

ピーター・シンガーの公式FAQ

プリンストン大学のwebページに掲載されている、ピーター・シンガーの公式FAQを非公式に翻訳した。発展途上国への援助と寄付・動物の道徳的地位・障害のある乳児の殺害や安楽死など、シンガーの主張のなかでもよく取り沙汰されているテーマについて、本人…

「イルカは馬鹿ではない」 by フィリッパ・ブレイク

今回紹介する記事の著者は、クジラやイルカを研究する生物学者フィリッパ・ブレイクである。彼女はクジラやイルカの保護活動にも関わっているようだ。編著の『Whales and Dolphins: Cognition, Culture, Conservation and Human Perceptions』はクジラやイル…

「動物の権利、多文化主義、左派」by ウィル・キムリッカ&スー・ドナルドソン 

ウィル・キムリッカとスー・ドナルドソンによる論文、"Animal Rights, Multicultrualism and the Left"を、要約して翻訳して紹介する。要約ではあるが、長い文章になっている。註釈や引用に参考文献などは省いているので、英語が読める人はもとの論文を読む…

動物の道徳的地位についての「感覚による線引き」や「知能による線引き」とそれに対する批判についての雑感

何度か述べてきたことについての雑感。繰り返しが多くてくどい文章になってしまった。 倫理学における、動物の「知能による線引き」について、雑に説明してみた - 道徳的動物日記 「動物は道徳的地位を持つ」という主張 - 道徳的動物日記 ・倫理学において「…

ローリー・グルーエン『動物倫理入門』

動物倫理入門 作者: ローリー・グルーエン,河島基弘 出版社/メーカー: 大月書店 発売日: 2015/11/20 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 本書は、Lori Gruen, Ethics and Animals: An introdution (2011)の翻訳である。 本書の構成としては、まず…

ローリー・グルーエン「サミュエル・デュボースとライオンのセシル」

エコロジカル・フェミニストであり動物倫理についての著作もある倫理学者ローリー・グルーエンが、今年の7月末にアルジャジーラ・アメリカのWebサイトに投稿した英語記事を紹介する*1。 この記事は、オハイオ州で黒人男性サミュエル・デュボースが白人警官…

スティーブン・ピンカーによる「動物の権利運動」論

スティーブン・ピンカーの『暴力の人類史』では、様々な資料や統計を駆使して、人類が歴史を通じていかに暴力を減少させていったかが示されている。扱われている「暴力」の種類も様々であり、国と国同士で行われる戦争やある社会が特定の集団に行う虐殺など…

ニューヨークタイムス誌のwebページにピーター・シンガーのインタビュー「人種差別、動物の権利と人権について」

私たちはどう生きるべきか (ちくま学芸文庫) 作者: ピーターシンガー,Peter Singer,山内友三郎 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2013/12/10 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (3件) を見る http://opinionator.blogs.nytimes.com/2015/05/27/peter-si…