道徳的動物日記

動物や倫理学やアメリカについて勉強したことのある人の日記です。

学問論

原罪としての"男性特権"

tocana.jp 上述の記事は最近話題になった「ジェンダー学版ソーカル事件」というべき事件についての紹介記事だが、この事件を起こした数学者ジェームズ・リンゼイ(James A. Lindsay) と哲学者のピータ・ボグホシアン(Peter Boghossian)が昨年にネット上で…

スローガンとしての「インターセクショナリティ」

インターセクショナリティ(Intersectionality)という概念については以前にも批判的な記事を訳したのだが、英語圏の学者たちのTwitterなどを見ているといまだによく出てくるので、ちょっと追加で記事を紹介してみることにした。 www.insidehighered.com こ…

民主主義を貶め右翼を蔓延させるポストモダニズム

ネットサーフィンをしていたら見つけた、ヘレン・プラックローズ(Helen Pluckrose)という人文学者による、『How French “Intellectuals” Ruined the West: Postmodernism and Its Impact, Explained(フランス知識人はいかにして西洋を台無しにしたか:ポ…

学問的営みを蝕む批判理論

Academic Freedom in an Age of Conformity: Confronting the Fear of Knowledge (Palgrave Critical University Studies) 作者: Joanna Williams 出版社/メーカー: Palgrave Macmillan 発売日: 2016/01/06 メディア: ペーパーバック この商品を含むブログを…

「動物実験のコストとベネフィット」 by アンドリュー・ナイト

今回紹介するのは、倫理学者のアンドリュー・ナイト(Andrew Knight)が2011年New Internationalist のwebページに掲載した「動物実験のコストとベネフィット(The costs and benefits of animal experiments)」という記事。ナイトは同じ題名の単著も出して…

人文学は何の役に立つのか?

近年、「学問は役に立つのか?」「人文学を学ぶ意味はあるのか?」「利益を上げない学問に税金を投入する意味はあるのか?」みたいなことが言われることが多くなっているような気がする。大体の場合、やり玉に挙げられるのは人文学や文系の科目全般だったり…

ポストモダニズムとポリティカル・コレクトネス

The Science of Liberty: Democracy, Reason, and the Laws of Nature 作者: Timothy Ferris 出版社/メーカー: Harper Perennial 発売日: 2011/02/08 メディア: ペーパーバック この商品を含むブログを見る 先日から読み始めたティモシー・フェリス著『自由…

「アイデンティティ・リベラリズムの終焉」by マーク・リラ 

http://www.nytimes.com/2016/11/20/opinion/sunday/the-end-of-identity-liberalism.html 今回紹介するのは、ニューヨークタイムスに掲載されたマーク・リラ(Mark Lilla)の記事。リラは政治科学者兼歴史学者であるらしく、政治的立場としては左派であるよ…

トランプ当選とかアイデンティティ・ポリティクスとかに関する適当な備忘録

・ 以下の記事のなかで、会田弘継は以下の発言をしている。 synodos.jp よくトランプ現象は人口が減っていく白人たちの雄叫びというように解釈されますが、それも短絡的な考え方ではないかと私は思っています。たしかに、トランプだけ見ずにサンダースの方も…

「ドナルド・トランプと、社会科学の失敗」 by ユリ・ハリス

quillette.com 今回紹介するのは Quillette というサイトに掲載された、ユリ・ハリス(Uri Harris)という経済学者?の記事。アメリカ大統領選挙にてドナルド・トランプが勝利した理由について社会科学的に分析している記事…ではなくて、トランプの大統領当選…

「生命倫理学者?邪魔だからどっか行け」by スティーブン・ピンカー

www.bostonglobe.com 本日紹介する記事は、心理学者のスティーブン・ピンカー(Steven Pinker)が2015年の8月1日に Boston Grobe に発表した記事。タイトル通り、生命倫理学者たちを生命医学研究の障害だと見なして痛烈に批判している記事である*1。 …

「性別間の生物学的な差異は存在しない、という社会学者たちの宗教」 by ジェリー・コイン 

The sociological religion of no biological differences between the sexeswhyevolutionistrue.wordpress.com 昨日に引き続き、進化生物学者・無神論者のジェリー・コインのブログからまたまた記事を紹介。 「性別間の生物学的な差異は存在しない、と…

「聾者がアクセスできなくて不平等」という理由で、カリフォルニア大学バークレー校の無料公開オンライン講義が中止されるかも、という記事

タイトルに書かれている事態について、生物学者のジェリー・コインがブログで書いていた短い記事を紹介。 今回の事態についてはこちらの記事などでも紹介されている*1。 UC Berkeley cancels free online courses because they weren’t accessible to the de…

ポリティカル・コレクトネスの問題点を指摘した記事の雑なまとめ

jbpress.ismedia.jp 当ブログでは、ポリティカル・コレクトネスについて批判的であったりポリティカル・コレクトネスの問題点を指摘した英語記事をいくつか訳してきた。上記記事と上記記事に付いたコメントを見て思ったのが、ポリティカル・コレクトネスに対…

「マルクーゼはいかにして今日の学生たちを親世代よりも不寛容にさせたか」 by エイプリル・ケリー・ウォスナー

heterodoxacademy.org 今回紹介するのは、昨年にHeterodox Academyに掲載された、エイプリル・ケリー・ウォスナー(April Kelly-Woessner)という人の記事。ウォスナーは政治科学者で、高等教育と政治の関係について論文を書いているようだ*1。 「マルクーゼ…

「戦争は人間の本性に深く根付いているという生物学理論」に関する、ジョン・ホーガンとスティーブン・ピンカーの見解

Steve Pinker demolishes John Horgan’s view of war « Why Evolution Is True 今回紹介するのは、進化生物学者のジェリー・コイン(Jerry Coyne)のブログに掲載された、「戦争は人間にとって生得的なものである」という主張を批判する科学ジャーナリストの…

『ガリレオの中指』、『人はなぜレイプするのか』、学問における事実とイデオロギーの関係

Galileo's Middle Finger: Heretics, Activists, and the Search for Justice in Science 作者: Alice Dreger 出版社/メーカー: Penguin Books 発売日: 2015/03/10 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 今回紹介するのは、私が最近読んでいる本で…

「古代の戦争と、空白の石板論」by マイケル・シャーマー

evolution-institute.org 今回紹介するのは、心理学者で疑似科学批判者であるマイケル・シャーマーがEvolution Instituteというサイトに掲載した記事。 記事の原題を全て訳すと「ツイートと石板について:古代の戦争と空白の石板論に関して、デビッド・スロ…

「科学から政治的活動へと変貌させられる人類学」by グリン・カストレッド

www.popecenter.org 今回は、カリフォルニア州立大学イーストベイ校の人類学者グリン・カストレッド(Glynn Custred)による記事「Turning Anthropology from Science into Political Activism(社会科学から政治的活動に変貌させられる人類学)」を紹介する…

「科学はお断り。私たちは人類学者だ」by アリス・ドレガー

www.psychologytoday.com 今回紹介する記事は、アリス・ドレガー(Alice Dreger)の「科学はお断り。私たちは人類学者だ」(No Science, Please. We're Anthropologists.)という記事。 2010年の11月25日に発表された記事で、アメリカ人類学会(Amer…

「イスラエルに対するBDS運動と、非-事実的(post-factual)な人類学の登場」 by  デビッド・ローゼン

BDS and the Rise of Post-Factual Anthropology | Minding The Campus 今回はアメリカの人類学者、デビッド・ローゼン(David Rosen)の記事を紹介する。 記事の本題とはあまり関係ないが、ローゼンの専門は少年兵士に関する人類学的な研究であるようだ。 A…

スティーブン・ピンカー、ノーム・チョムスキーらがイスラエルに対する学術的ボイコットを批判

japanese.irib.ir Anthropologists for the Boycott of Israeli Academic Institutions アメリカ人類学会(American Anthropological Association)は、パレスチナに対するイスラエルの侵略などを批判する目的で、イスラエルに対する学術的ボイコットを20…

「フェミニストはいつフェミニストでなくなるか?」 by ポーラ・ライト

www.psychologytoday.com 今回紹介するのは、ポーラ・ライトの「フェミニストはいつフェミニストでなくなるか?(When is a Feminist Not a Feminist?)」という記事。タイトルからは分かりづらいが、「家父長制」の存在を主張したり、社会構築主義的な主張…

クリスティアン・ウィリアムス「弾劾の政治」を巡る騒動

2014年の5月に「Inside Higher Ed」(高等教育の内幕)というwebサイトに掲載された記事。記事を書いている記者の名前はスコット・ジャスチック。 Speaker shouted down at Portland State University | Inside Higher Ed 2年近く前という、古い事件に…

マーク・ベコフの「人道的自然保全」論

生物学者・動物行動学者のマーク・ベコフは、動物の抱く様々な感情について研究しており、動物の感情について解説した多くの著書を執筆している。*1また、ベコフは動物保護・動物の福祉への配慮の必要性を昔から説いている。*2 www.huffingtonpost.com 野生…

「聖域なき社会科学」by ボー・ワインガード 

社会心理学者のボー・ワインガードが、臨床心理学者のベンジャミン・マーク・ワインガードと共著で発表した評論「聖域なき社会科学」(A Social Scienece withou Sacred Value)の、著者本人による要約である。 原文はこちら。原文では二回に分けて発表され…

イデオロギーは社会学の知見をいかに妨げたか by クリス・マーティン

社会学者クリス・マーティンの論文「イデオロギーは社会学の知見をいかに妨げたか」の、著者本人による要約である。 原文はこちら。参考文献は省略している。 How Ideology Has Hindered Sociological Insight, summarized | HeterodoxAcademy.org イデオロ…

私はこの記事を書くべきではない ー ある非・左翼的大学教授の告白 by ジョージ・ヤンシー

今年のアメリカの大学では例年にも増して学生による抗議運動が盛んであったらしい。ミズーリ大学では人種差別に適切な対応をしなかったという理由で学生に抗議された学長が辞任した*1。イェール大学では、ハロウィンにて人種差別やマイノリティ差別につなが…

グレッグ・ルキアノフ, ジョナサン・ハイト 「アメリカン・マインドの甘やかし:トリガー警告はいかにキャンパスの精神的健康を傷付けているか」

アメリカでは、PC(ポリティカル・コレクトネス=政治的な正しさ)を追求する運動は1980年代から行われてきたようであり、運動に対する批判や揶揄も行われ続けていたようだ。しかし、有名な風刺コメディアニメの『サウスパーク』が今年のシーズン19の…