道徳的動物日記

動物や倫理学やアメリカについて勉強したことのある人の日記です。

時事問題

「お前の意見は感情的だ」という批判がダメな理由

反共感論―社会はいかに判断を誤るか 作者: ポール・ブルーム,高橋洋 出版社/メーカー: 白揚社 発売日: 2018/02/02 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (2件) を見る 心理学者のポール・ブルームによる『反共感論』については、原著が出版される前にブル…

「自己責任論」を批判するのはいいけれど…(読書メモ:『高学歴女子の貧困』)

高学歴女子の貧困 女子は学歴で「幸せ」になれるか? (光文社新書) 作者: 大理奈穂子,栗田隆子,大野左紀子,水月昭道 出版社/メーカー: 光文社 発売日: 2014/02/18 メディア: 新書 この商品を含むブログ (14件) を見る 貧困状態にある高学歴女性が現状を綴る私…

「研究」ってそんなに魅力的か?(読書メモ:『在野研究ビギナーズ』)

在野研究ビギナーズ――勝手にはじめる研究生活 作者: 荒木優太 出版社/メーカー: 明石書店 発売日: 2019/09/06 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 私自身、「在野」にありながら学術書や洋書を読んだりその内容をまとめてブログにして発信したり、…

進化心理学はなぜ批判されるのか?

quillette.com 上記のQuilletteの記事を要約紹介しつつ、雑感を書く。…というか、ダラダラと長ったらしい記事なので、思い切って要点や特徴的な点だけ紹介する。 上記の記事では、デビッド・バスとウィリアム・フォンヒッペルという二人の進化心理学者が行っ…

読書メモ:『資本主義が嫌いな人のための経済学』など

私たちはなぜ働くのか マルクスと考える資本と労働の経済学 作者: 佐々木隆治 出版社/メーカー: 旬報社 発売日: 2012/09/01 メディア: 単行本(ソフトカバー) 購入: 1人 クリック: 4回 この商品を含むブログ (6件) を見る 「自己責任論」をのりこえる―連帯…

読書メモ:『ポジティブ病の国、アメリカ』

ポジティブ病の国、アメリカ 作者: バーバラ・エーレンライク,中島由華 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2010/04/10 メディア: ハードカバー 購入: 2人 クリック: 40回 この商品を含むブログ (12件) を見る 内容はタイトル通り、アメリカに蔓延するポ…

「どこに投票したか」に対する批判は許されないか?

投票日から一ヶ月くらい経ってしまったが、思うところあって雑感をいくつか。 ・ここ数年間の選挙では、右派が多くの議席を獲得して左派は大して議席を獲得できない、という結果になることが定番だ。自民党は毎度のように圧勝するし、大阪は相変わらず維新の…

浅き低きの幸福論

しあわせ仮説 作者: ジョナサン・ハイト,藤澤隆史,藤澤玲子 出版社/メーカー: 新曜社 発売日: 2011/07/06 メディア: 単行本 購入: 12人 クリック: 226回 この商品を含むブログ (15件) を見る 雑感。 ジョナサン・ハイトの『しあわせ仮説』を読んでからポジテ…

「男性のつらさ」論についての雑感

前回の記事の続き…と言いたいところだが、大したことが書けそうにないので箇条書きで。 ●議論が盛り上がるきっかけとなった「男性のつらさの構造」記事では、男性のつらさの原因の一つを「女性の高望み」と分析していた。そして、それに対する解決策の一つと…

「動物はおかずだ」デモに関して(2)

buzz-plus.com 出勤前に取り急ぎ、昨日の記事の続き。 「動物はおかずだデモ」はデモの名前からして「動物はごはんじゃないデモ」のカウンターである。また、単なるカウンターではなく、「動物はごはんじゃない」デモに対するパロディや皮肉を意識しているよ…

ピンカーによるニーチェ批判、AIとかスマホとかは理性の敵なのか(「啓蒙をめぐる戦争」の要約【その3】)

前々回と前回の続き。 批判その7:啓蒙主義(科学的な理性)は、その産物である人工知能やソーシャルメディアによって葬り去られてしまうだろう。 ピンカーの反論:メアリー・シェリーが『フランケンシュタイン』を書いた時代なら、そのような物語は魅力的…

悲観主義はなぜ賢そうに聞こえるのか?

経済コラムニストのモーガン・ハウゼル(Morgan Housel)が、英語版のモトリー・フール(投資に関するニュース・メディア)に2016年に投稿した記事を要約して簡単に紹介。 www.fool.com 経済史学者のディアドラ・マクロスキーは「何故だかわからないが、人々…

精神病や自殺者の数は世界的に増えている?トランプやブレクジットは啓蒙主義が終わった証拠?(スティーブン・ピンカー「啓蒙をめぐる戦争」の要約【その2】)

前回の記事の続き。ほんとは前半と後半の2つに分けるつもりだったがしんどいので3つに分けることにした(4つになるかも)。 批判その5:トランプやブレクジット、権威主義的ポピュリズムの隆興はどう説明する?それらは、啓蒙主義の時代が終わり進歩が逆行…

「啓蒙をめぐる戦争」(『Enlightment Now』への批判に対するスティーブン・ピンカーの応答)【その1】

2018年の初頭に出版されたスティーブン・ピンカーの新著『Enlightenment Now: The Case for Reason, Science, Humanism, and Progress (現代の啓蒙:理性、科学、人道主義、進歩を擁護する)』は、多くの批判にさらされてきた。タイトルの通り合理主義や科…

「動物の権利」と「人権」は対立する?

togetter.com くどいようだが、この件に関するはてな・Twitterなどでの反応を眺めての雑感。 今回の件に限らず、動物の権利運動に対する批判としてちらほら見られるのが、「動物に権利を与えると人権という概念の理念が損なわれる」あるいは「動物に対して道…

左派は動物の権利を支持するべきか?

togetter.com このTogetterに関わる論点として、数年前に要約して翻訳して紹介した ウィル・キムリッカとスー・ドナルドソンの論文「動物の権利、多文化主義、左派」から一部抜粋して紹介してみよう(手抜き記事である)。 現在、米国の動物の権利運動は「左…

弱者男性論とか女性だけの街とかについての雑感

Twitterやはてななどで「弱者男性」論を見かけたり、また先日の「女性だけの街」に関する議論などを見かけた際には、モヤモヤすることが多い。モヤモヤを吐き出すために雑感を書いてみた(あまり論理的ではない、感覚に頼ったくどい文章になってしまったが)…

配偶者選択が政治的分断を悪化させる?

今回はThe Atlanticに掲載されたアメリカの進化心理学者のAvi Tucshmanの記事を訳して紹介。数年前に読んだTucshmanの著書の『Our Political Nature(私たちの政治的な本性)』でもこの記事と同様の話題が含まれていた。なお記事が公開されたのは2014年2月な…

「かわいそうランキング」についての雑感

一年くらい前から、Twitterやはてブなどで「かわいそうランキング」という単語を目にする機会がある。TLなどに流れてくるのをざっと見た感じでは、「反ポリコレ」「反フェミニズム」、「弱者男性論者」といったクラスタの人々が特によく用いる単語であるよう…

「子供のワクチン接種を拒否することは、脱税に等しい罪である」 by アルベルト・ジュリビーニ

久しぶりにオックスフォードのPractical Ethicsブログから、イタリアの倫理学者であるアルベルト・ジュリビーニ(Alberto Giubilini)の記事を訳して紹介。元記事の公開日は2017年10月31日。記事中に貼られている資料などへのリンクは割愛した。 blog.practica…

ロブスターの福祉に配慮するのは感情的?

jp.reuters.com このニュースに対するネット上の様々な反応を見ての雑感。 動物福祉運動や動物の権利運動に対しては批判が投げかけられることが多い。特によくあるのが「知能が人間に近いからという理由でイルカや類人猿の権利を主張して他の動物には配慮し…

男性が自殺するのは「支配欲」が原因だって?

wezz-y.com wezz-y.com 今日は、Wezzyというサイトに掲載された社会学者の平山亮のインタビューについて取り上げようと思う。タイトルからも察せる通り、男性が感じる社会的なプレッシャーや苦痛を問題として取り上げるタイプの「男性学」に対して平山は批判…

『ワンダーウーマン』とイスラエル云々についての雑感

news.yahoo.co.jp ちょうど先日『ワンダーウーマン』を見に行ったばかりなので、この記事について思うところを簡単に書いておこう。 ・読んでまず疑問に思うのが、この記事では「『ワンダーウーマン』の主演女優であるガル・ガドットは親イスラエルでイスラ…

女性哲学者が少ないのは、哲学が女性差別的であるから?

昨日にアップしたGoogle社員による「反多様性メモ」についての記事では「一般的に、女性は男性よりも数学やソフトウェア・エンジニアリングに対する関心が低い傾向にある」「Googleの社員やソフトウェア・エンジニアの大多数が女性であることの原因は、男女…

Google社員の「反多様性メモ」の内容は間違っていたのか?

jp.reuters.com www.bbc.com やや時機を逸している感はあるが、今更ながら、Google社員のジェームス・ダモアが社内文書にて男女の生物学的性差などを論じながらGoogleの多様性制度を批判したために解雇されてしまった事件について、軽く英語記事を紹介してみ…

ゆらぎ荘騒動についての雑感

togetter.com ↑ 最近話題になっているこの騒動について。 騒動の発端となったのは、以下の2つのツイートであるようだ。 ジャンプ開いたらいきなりこれだった。成人コミックかと思うよ…。公式の人気投票でキャラをここまで無意味に裸に剥いて、記号のように…

市民的不服従の倫理

先日に訳した記事に関連して、倫理学者のピーター・シンガーの主著『実践の倫理』で行われている、市民的不服従に関する議論も簡単にまとめてみよう。参考にしているのは第三版の原著(三版は未邦訳)、11章の「市民的不服従、暴力、テロリズム(Civil Disob…

市民的不服従と動物の権利運動

www.theage.com.au 今回紹介するのは、2013年の5月10日にオーストラリアの The Ageというニュースサイトに掲載された、政治学者のシヴォーン・オサリヴァン(Siobhan O'Sullivan)と倫理学者のクレア・マコーズランド(Clare McCausland)による記事。オサリ…

肉食が引き起こす5つの倫理的問題

今回紹介するのは、オーストラリアの Conversation誌に掲載された、公衆衛生学者の フランシス・ヴァーガンスト(Francis Vergunst)と倫理学者のジュリアン・サバレスキュ(Julian Savulescu)による記事。 theconversation.com 「あなたの皿に載った肉が地…

原罪としての"男性特権"

tocana.jp 上述の記事は最近話題になった「ジェンダー学版ソーカル事件」というべき事件についての紹介記事だが、この事件を起こした数学者ジェームズ・リンゼイ(James A. Lindsay) と哲学者のピータ・ボグホシアン(Peter Boghossian)が昨年にネット上で…