道徳的動物日記

『21世紀の道徳』発売中です。amzn.asia/d/1QVJJSj

菜食主義

フェミニズムと動物:まとめと批判

An Introduction to Animals and Political Theory (The Palgrave Macmillan Animal Ethics Series) (English Edition) 作者:Cochrane, Alasdair Palgrave Macmillan Amazon 先日に引き続き、「フェミニズムと動物倫理」というテーマでお勉強。 今回は政治哲…

使える倫理は、つまらない(読書メモ:『動物倫理の新しい基礎』)

動物倫理の新しい基礎 作者:ローリン,バーナード 発売日: 2019/12/01 メディア: 単行本 この本のスタンスは、序章となる「新しい動物倫理の必要性」の最後の段落に、おおむねまとまっているだろう。 たとえば、功利主義的理由のためにシンガー自身が、産業的…

捕鯨・文化の価値・動物倫理

動物愛護や動物の権利という話題に関すると、日本では「捕鯨問題」がイメージされることが多いようだ。実際、私が学生であった頃に「動物倫理や動物の権利について勉強している」と言ったときにも、「捕鯨問題についてはどういう意見を持っているんだ」と聞…

「広く共有された信念」と動物倫理(読書メモ:Ethics and the Beast)

Ethics and the Beast: A Speciesist Argument for Animal Liberation 作者:Tzachi Zamir 出版社/メーカー: Princeton University Press 発売日: 2014/11/23 メディア: ペーパーバック イスラエルの倫理学者、トサヒ・ザミール(Tzachi Zamir)の著書。とり…

倫理学の理論や知識と、実際の生活との齟齬や乖離について(読書メモ:『哲学者とオオカミ』)

哲学者とオオカミ―愛・死・幸福についてのレッスン 作者:マーク ローランズ 出版社/メーカー: 白水社 発売日: 2010/04/01 メディア: 単行本 哲学者である著者がオオカミの子どもを引き取って「ブレニン」と名付けて、アメリカやアイルランド、イギリスにフラ…

動物の権利運動は部落差別?

otapol.com 上記の記事とか、それ以前からよく言われている「動物の権利運動は部落差別だ」的な主張に対する一般論的な反論。 多くの社会運動では、現行の社会で認められている社会制度を不当だとして、その制度に規制をかけたり撤廃したりすることが目標と…

「動物はおかずだ」デモに関して(1)

(仕事の休憩時間に取り急ぎ書いた) 上記の記事に関して、まず気になったのは以下の箇所。 「しかし「動物はごはんじゃないデモ行進」は、自らが肉を忌避するだけでは飽き足らず、他者の権利や自由を否定し肉の撲滅を目論んでいる。」 「憎むべきは、ヴィー…

『サピエンス全史』に対する批判に対する雑感

著者がヴィーガンだから「歴史書の形を借りた自己啓発書」とされるの、意味わかんない... — デビット・ライス (@RiceDavit) 2017年9月25日 たとえば歴史的事実なり科学的事実なりについて書かれている本で、それらの事実についての著者の理解から「人類は増…

『オクジャ』と動物愛護

www.excite.co.jp www.gizmodo.jp Netflixでポン・ジュノ監督の『オクジャ』を観賞。普段はこのブログでフィクション作品の感想を書くことはほとんど無いのだが、『オクジャ』は明らかに動物倫理的なテーマを扱っているということもあって、ちょっと感想を書…

肉食が引き起こす5つの倫理的問題

今回紹介するのは、オーストラリアの Conversation誌に掲載された、公衆衛生学者の フランシス・ヴァーガンスト(Francis Vergunst)と倫理学者のジュリアン・サバレスキュ(Julian Savulescu)による記事。 theconversation.com 「あなたの皿に載った肉が地…

肉食は"自然"で"必要"か?

honz.jp この記事についているブコメなどの反応を見てみると、社会心理学者のメラニー・ジョイ(Melanie Joy)が『Why We Love Dogs, Eat Pigs, and Wear Cows: An Introduciton to Carnism(肉食主義へのイントロダクション:なぜ私たちは犬を愛し、豚を食…

「植物への倫理的配慮?」 by ゲイリー・フランシオーン

A Frequently Asked Question: What About Plants? – Animal Rights: The Abolitionist Approach 今回訳して紹介するのは、動物の権利論者・動物の権利運動家のゲイリー・フランシオンがホームページに掲載した記事。記事の正式なタイトルは「よくある質問:…

「「ペット」:動物の家畜化に内在する本質的な問題」 by ゲイリー・フランシオン

www.abolitionistapproach.com 今回紹介するのは、動物の権利論者・動物の権利運動家の、ゲイリー・フランシオンの記事。フランシオンはアメリカの法律学者で、法律において動物が「所有物」として扱われていることを批判し、動物を利用することを認める ins…

「工場的畜産は残酷なのか?」という記事についての雑感

工場的畜産は残酷なのか? - 感想文 この記事についての雑感をTwitterの方でつぶやいたので、まとめて転載する。 工場的畜産は残酷なのか? - 感想文 https://t.co/zpYG4efP2h — デビット・ライス (@RiceDavit) 2016, 2月 2 自然界の動物も人間も、自分と同…

「植物は痛みを感じるか? 生物学者に訊いてみた。」

アメリカのVICEというwebページに掲載された、植物学者のダニエル・チャモヴィッツ氏へのインタビュー記事を私訳。 チャモヴィッツ氏の著書は翻訳もされており、植物が痛みを感じるかということや植物への倫理的配慮などの論点は160ー164ページにて触…

『「ヴィーガン」生活を続けて1年…23歳の女性が経験した”命の危機”』という記事について

肉も魚も卵も食べない「ヴィーガン」生活を続けて1年…23歳の女性が経験した”命の危機” // 1e3)g=1e3;else if(200>~~g)g=200;f.height=g}if("link"===d.message)if(h=b.createElement("a"),i=b.createElement("a"),h.href=f.getAttribute("src"),i.href=d.val…

「動物愛護はナチス」「ヒトラーはベジタリアンだった」についての雑感

ナチスと動物―ペット・スケープゴート・ホロコースト 作者: ボリアサックス,Boria Sax,関口篤 出版社/メーカー: 青土社 発売日: 2002/05 メディア: 単行本 クリック: 22回 この商品を含むブログ (7件) を見る ヒトラーはベジタリアンであったと言われるし、…

ピーター・シンガーの公式FAQ

プリンストン大学のwebページに掲載されている、ピーター・シンガーの公式FAQを非公式に翻訳した。発展途上国への援助と寄付・動物の道徳的地位・障害のある乳児の殺害や安楽死など、シンガーの主張のなかでもよく取り沙汰されているテーマについて、本人…

「動物の権利、多文化主義、左派」by ウィル・キムリッカ&スー・ドナルドソン 

ウィル・キムリッカとスー・ドナルドソンによる論文、"Animal Rights, Multicultrualism and the Left"を、要約して翻訳して紹介する。要約ではあるが、長い文章になっている。註釈や引用に参考文献などは省いているので、英語が読める人はもとの論文を読む…

スティーブン・ピンカーによる「動物の権利運動」論

スティーブン・ピンカーの『暴力の人類史』では、様々な資料や統計を駆使して、人類が歴史を通じていかに暴力を減少させていったかが示されている。扱われている「暴力」の種類も様々であり、国と国同士で行われる戦争やある社会が特定の集団に行う虐殺など…