道徳的動物日記

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「アニマルライツセンターの言うことだから信用できない」という物言いについて

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 ↑ この記事についたブクマなどの反応を見ての雑感。

 

 記事に対する賛否は半々であり、記事で指摘されているニワトリの劣悪な飼育状況に対する懸念を表明する声や改善を求める声もある一方で、記事の著者がアニマルライツセンターの代表であることから、記事自体の信ぴょう性を疑う声があるようだ。
 しかし、私には、「アニマルライツセンターの言うことだから信用できない」という物言いは、かなり奇妙で不合理なもののように思える。

 

 アニマルライツセンターは畜産業や動物実験などの動物を利用する制度の改善や撤廃を求めて運動する団体である。そのことから「畜産業を批判する団体だから、畜産業の問題点をことさらに強調するために、特殊な事例を一般的な事例であるかのようにして針小棒大に騒ぎ立てるなど、印象操作や偏向が存在しているはずだ」という風な推測がはたらいているのかもしれない。
 だが、記事で指摘されているニワトリの飼育制度の問題点は、国内・国外問わず動物の福祉に関心がある人たちの間では以前から指摘され続けてきたことだ。おそらく、特殊事例を一般化して紹介しているわけではないだろう。


 そして、私が気になるのは「アニマルライツセンターの言うことだから信用できない」という反応をしている人たちは、では“誰”の言うことなら信用するのか、ということである。

 

 もしかしたら、「畜産業の内部にいる人の言うことなら信用できる」とでも思っているのかもしれない。
 だが、私から言わせれば、畜産業の内部にいる人からの主張の方が「ごくまれな、動物の福祉に配慮されている良質な飼育状況の事例」を「一般的な事例」であるかのように印象操作される恐れが高い。
 畜産業の内部にいる人としては動物の福祉よりも業界の利益を優先することに経済合理性があり、飼育制度への規制や消費者からの悪影響を避けるインセンティブがあるからだ。
 畜産業に限らない一般論として、ある業界における何らかの制度の問題点が注目されたときには、その業界の当事者の言うことばかりを真に受けるのは賢明な行為ではない。業界の内部にいるということは、要するに利益や生活のためにその業界を擁護するという動機が存在するということだ。業界の内部にいる人は、その業界の事情に関する経験や知識は外部の人よりもあるだろうが、その人の言っていることが正確であるという保証はないのだ(意図的な印象操作ばかりでなく、認知的不協和のために業界の問題点を理解することができなくなっている、という場合も多々あるだろう)。

 その業界の内部で被害を受けてきた人たちや義憤にかられた人たちによる「内部告発」の場合には、その業界全体の利益に逆らう動機が生じるから、話はまた別だ。
 だが、言うまでもなく、畜産場に閉じ込められた動物たちには内部告発を行うことは不可能だ。
 だとすれば、動物たちの置かれている状況の問題点を誰が指摘するのか?

 業界の外にいて、業界の監視・改善(・廃止)を目的とする、アニマルライツセンターのような団体に代表されるような社会運動家たちしかいないだろう。
(もちろん、研究者やジャーナリスト、普通の個人などが業界の問題について調査を行って問題点を発表する、ということもある。しかし、調査することにも発表することにも、時間や金銭などのコスト、また精神的な負担がかかるものだ。継続的な調査と発表は、やはり、団体でなければ行えないものだろう。)

 

 特に日本では社会運動団体というものは不審がられて軽視されがちであり、また、業界やその内部にいる人たちの発表は鵜呑みにする傾向があるように思われる。だが、それは、浅薄な現場主義としか言えない。

 とはいえ、たとえばステマだったりブラック労働の問題だったりであれば、多くの人が業界を批判している。

 

 動物の問題に限って「アニマルライツセンターの言うことだから信じない」的な反応が目立つようになるのは、やはり、認知的不協和が原因だろう。つまり、自分が消費している食物が生産される現場がこれほどまでにひどいということを直視したくない、また直視してしまった結果として生じた罪悪感を解消したいために、「問題点を指摘する側に何らかの問題があるから、この問題は直視しなくてよい」という風に自分を納得させる心理が働いているのだと思われる。
 こういう人たちにもメッセージが届くように「伝え方を変える」なり「イメージを良くする」なりも、社会運動団体に求められることではあるかもしれない。
 だが、それはそれとして、彼らの主張がかなり不合理であることをこうやって指摘しておくことも必要であるだろう。

 

 

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