道徳的動物日記

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2015-01-01から1年間の記事一覧

2015年のベスト本は『暴力の人類史』

暴力の人類史 上 作者: スティーブン・ピンカー,幾島幸子,塩原通緒 出版社/メーカー: 青土社 発売日: 2015/01/28 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (23件) を見る スティーブン・ピンカーの『暴力の人類史』は、殺人・戦争・虐殺・喧嘩・強姦・DV・児…

「聖域なき社会科学」by ボー・ワインガード 

社会心理学者のボー・ワインガードが、臨床心理学者のベンジャミン・マーク・ワインガードと共著で発表した評論「聖域なき社会科学」(A Social Scienece withou Sacred Value)の、著者本人による要約である。 原文はこちら。原文では二回に分けて発表され…

イデオロギーは社会学の知見をいかに妨げたか by クリス・マーティン

社会学者クリス・マーティンの論文「イデオロギーは社会学の知見をいかに妨げたか」の、著者本人による要約である。 原文はこちら。参考文献は省略している。 How Ideology Has Hindered Sociological Insight, summarized | HeterodoxAcademy.org イデオロ…

私はこの記事を書くべきではない ー ある非・左翼的大学教授の告白 by ジョージ・ヤンシー

今年のアメリカの大学では例年にも増して学生による抗議運動が盛んであったらしい。ミズーリ大学では人種差別に適切な対応をしなかったという理由で学生に抗議された学長が辞任した*1。イェール大学では、ハロウィンにて人種差別やマイノリティ差別につなが…

「動物愛護はナチス」「ヒトラーはベジタリアンだった」についての雑感

ナチスと動物―ペット・スケープゴート・ホロコースト 作者: ボリアサックス,Boria Sax,関口篤 出版社/メーカー: 青土社 発売日: 2002/05 メディア: 単行本 クリック: 22回 この商品を含むブログ (7件) を見る ヒトラーはベジタリアンであったと言われるし、…

ピーター・シンガーの公式FAQ

プリンストン大学のwebページに掲載されている、ピーター・シンガーの公式FAQを非公式に翻訳した。発展途上国への援助と寄付・動物の道徳的地位・障害のある乳児の殺害や安楽死など、シンガーの主張のなかでもよく取り沙汰されているテーマについて、本人…

「イルカは馬鹿ではない」 by フィリッパ・ブレイク

今回紹介する記事の著者は、クジラやイルカを研究する生物学者フィリッパ・ブレイクである。彼女はクジラやイルカの保護活動にも関わっているようだ。編著の『Whales and Dolphins: Cognition, Culture, Conservation and Human Perceptions』はクジラやイル…

グレッグ・ルキアノフ, ジョナサン・ハイト 「アメリカン・マインドの甘やかし:トリガー警告はいかにキャンパスの精神的健康を傷付けているか」

アメリカでは、PC(ポリティカル・コレクトネス=政治的な正しさ)を追求する運動は1980年代から行われてきたようであり、運動に対する批判や揶揄も行われ続けていたようだ。しかし、有名な風刺コメディアニメの『サウスパーク』が今年のシーズン19の…

「動物の権利、多文化主義、左派」by ウィル・キムリッカ&スー・ドナルドソン 

ウィル・キムリッカとスー・ドナルドソンによる論文、"Animal Rights, Multicultrualism and the Left"を、要約して翻訳して紹介する。要約ではあるが、長い文章になっている。註釈や引用に参考文献などは省いているので、英語が読める人はもとの論文を読む…

ジェリー・コイン「障害者運動家たちがピーター・シンガーの辞任を要求」

シカゴ大学に勤める進化生物学者のジェリー・コーンが、当人のブログWhy Evolution Is Trueで、障害者運動家たちによるピーター・シンガーへの辞職要求について話題にしていた。元記事が掲載されたのは今年の6月なので、半年近く前の記事ではあるが、翻訳し…

ローリー・グルーエン『動物倫理入門』

本書は、Lori Gruen, Ethics and Animals: An introdution (2011)の翻訳である。 本書の構成としては、まず1章「動物問題とは何か」と2章「自然なことと規範的なこと」で動物のことを倫理学的に考えるために必要な基礎的な用語や理論を説明されてから、3…

ローリー・グルーエン「サミュエル・デュボースとライオンのセシル」

エコロジカル・フェミニストであり動物倫理についての著作もある倫理学者ローリー・グルーエンが、今年の7月末にアルジャジーラ・アメリカのWebサイトに投稿した英語記事を紹介する*1。 この記事は、オハイオ州で黒人男性サミュエル・デュボースが白人警官…

伴野準一『イルカ漁は残酷か』

イルカ漁は残酷か (平凡社新書) 作者: 伴野準一 出版社/メーカー: 平凡社 発売日: 2015/08/13 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る ジャーナリストの著者による、和歌山県太地町を中心とした、イルカ漁と反イルカ漁運動について書かれた新書である。 …

スティーブン・ピンカーによる「動物の権利運動」論

スティーブン・ピンカーの『暴力の人類史』では、様々な資料や統計を駆使して、人類が歴史を通じていかに暴力を減少させていったかが示されている。扱われている「暴力」の種類も様々であり、国と国同士で行われる戦争やある社会が特定の集団に行う虐殺など…

ニューヨークタイムス誌のwebページにピーター・シンガーのインタビュー「人種差別、動物の権利と人権について」

私たちはどう生きるべきか (ちくま学芸文庫) 作者: ピーターシンガー,Peter Singer,山内友三郎 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2013/12/10 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (3件) を見る http://opinionator.blogs.nytimes.com/2015/05/27/peter-si…

『暴力の解剖学』の書評も気になった

暴力の解剖学: 神経犯罪学への招待 作者: エイドリアンレイン,Adrian Raine,高橋洋 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店 発売日: 2015/02/26 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (3件) を見る レイプの遺伝子『暴力の解剖学』: わたしが知らないスゴ本は、き…

『暴力の人類史』の書評が気になった

暴力の人類史 上 作者: スティーブン・ピンカー,幾島幸子,塩原通緒 出版社/メーカー: 青土社 発売日: 2015/01/28 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (17件) を見る 1月末に発売されたスティーブン・ピンカーの『暴力の人類史』だが、図書館に予約して…

倫理学における、動物の「知能による線引き」について、雑に説明してみた

<a href="http://anond.hatelabo.jp/20150523180144" data-mce-href="http://anond.hatelabo.jp/20150523180144">イルカ漁の是非について</a>anond.hatelabo.jp 「おれのアタマじゃ結論出ないので、倫理学の専門家に説明してほしいなあ。」 私も専門家ではないし、時間がないので雑になるが、前半の「知能による線引き」について、とりあえず説明してみる。 基本的に、倫理学…