道徳的動物日記

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2017-04-01から1ヶ月間の記事一覧

環境美学のサバンナ仮説(ゴードン・オリアンズ『蛇、日の出、シェイクスピア』)

Snakes, Sunrises, and Shakespeare: How Evolution Shapes Our Loves and Fears 作者: Gordon H. Orians 出版社/メーカー: University of Chicago Press 発売日: 2014/04/14 メディア: Kindle版 この商品を含むブログ (1件) を見る 以前に趣味で読んだ洋書…

タチアナ・ヴィサク『幸せな動物を殺すこと』:置き換え可能性の議論、総量功利主義と先行存在功利主義、非同一性問題

Killing Happy Animals: Explorations in Utilitarian Ethics (The Palgrave Macmillan Animal Ethics Series) 作者: Tatjana Višak 出版社/メーカー: Palgrave Macmillan 発売日: 2013/08/23 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 今回はドイツ人…

「動物が苦痛を感じているとも、植物が苦痛を感じないとも、確実に言うことはできない」(倫理に関する事実判断と価値判断についての私見)

togetter.com 上記のTogetterは私のツイートをセルフまとめしたものだが、この話題について、ブログでもちょっと書いてみたい。 動物を道徳的配慮の対象とする倫理学理論(や政治哲学などその他の規範理論)の多くは「ある存在は幸福や快楽などのポジティブ…

社会運動において意見を発信する側はどうするべきか、そして意見を受け取る側はどうあるべきか

davitrice.hatenadiary.jp 上述の、先日に自分で書いた記事に付け足す形で思うところを書きたい。 先日の記事でも紹介したが、ニック・クーニー(Nick Cooney)の著書『心を変える:社会を変える方法について心理学が教えてくれること(Change of Heart: Wha…

社会運動を効果的に行うためにはどうすればいいのか?

Change of Heart: What Psychology Can Teach Us About Spreading Social Change (English Edition) 作者: Nick Cooney 出版社/メーカー: Lantern Books 発売日: 2015/09/01 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 今回は、ニック・クーニー(Nick …

"女のヒステリー"と動物愛護運動

ヒマなので、昔自分で書いた修士論文の内容の一部を参考にしながら、記事を書いてみようと思う。私はアメリカ史を専門にしていた訳ではないので歴史に関する文章については事実誤認とか間違いが含まれているかもしれないが、そこはまあ勘弁してほしい。 アメ…

マーサ・ヌスバウムによる動物の「繁栄・開花」/「可能力アプローチ」論と、その問題点

ドナルドソンとキムリッカの『人と動物の政治共同体』を読んだついでに、同じく政治哲学の視点から動物を扱っている、マーサ・ヌスバウムの『正義のフロンティア』の第6章「"同情と慈愛"を超えて」も、ぱらぱらと読み返してみた。 『正義のフロンティア』は…

野生動物と境界動物:『人と動物の政治共同体』(3)

人と動物の政治共同体-「動物の権利」の政治理論 作者: スー・ドナルドソン,ウィル・キムリッカ,Sue Donaldson,Will Kymlicka,青木人志,成廣孝 出版社/メーカー: 尚学社 発売日: 2016/12/26 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログ (3件) を…

『歴史の終わり』はトランプの出現を予期していた?

歴史の終わり〈上〉歴史の「終点」に立つ最後の人間 作者: Francis Fukuyama,フランシスフクヤマ,渡部昇一 出版社/メーカー: 三笠書房 発売日: 2005/05 メディア: 単行本 購入: 8人 クリック: 277回 この商品を含むブログ (21件) を見る 1992年に出版さ…

「死ぬ権利」を整備することは「死ぬ義務」につながるのか?

以下のツイートを目にしたのをきっかけに、前々から思っていたことを書こうと思う。 この学会の構成員は医療従事者(半数が医師)約4000人で、比較的小さな学会だが、こういうところからも「尊厳死」の世論作りを始めてきたんだね。 / ”本人が望まなければ救…

「植物への倫理的配慮?」 by ゲイリー・フランシオーン

A Frequently Asked Question: What About Plants? – Animal Rights: The Abolitionist Approach 今回訳して紹介するのは、動物の権利論者・動物の権利運動家のゲイリー・フランシオンがホームページに掲載した記事。記事の正式なタイトルは「よくある質問:…

家畜動物のシティズンシップ:『人と動物の政治共同体』(2)

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「動物実験のコストとベネフィット」 by アンドリュー・ナイト

今回紹介するのは、倫理学者のアンドリュー・ナイト(Andrew Knight)が2011年New Internationalist のwebページに掲載した「動物実験のコストとベネフィット(The costs and benefits of animal experiments)」という記事。ナイトは同じ題名の単著も出して…

動物の市民権:『人と動物の政治共同体』(1)

< 原著は数年前に読んだことがあるのだが、スー・ドナルドソンとウィル・キムリッカの共著『人と動物の政治共同体 「動物の権利」の政治理論(原題:ZoopolisA Political Theory of Animal Rights)』の邦訳をようやく入手することができたので、この本の第…