道徳的動物日記

『21世紀の道徳』発売中です。amzn.asia/d/1QVJJSj

2019-03-01から1ヶ月間の記事一覧

トロッコ問題批判批判

先日に森村進の『幸福とは何か』 (ちくまプリマー新書、2018年)を読んでいたら、後半の方で以下のような記述があった*1。 幸福とは何かを考えるにあたって、私は本書でさまざまの思考実験を利用してきましたが、その中には非現実的な例も少なくありませんで…

狩猟にまつわる倫理的問題

davitrice.hatenadiary.jp ↑ 倫理学者のゲイリー・ヴァーナーの論文「環境倫理、狩猟、動物の位置付け(Environmental Ethics, Hunting, and the Place of Animals)」を要約した上記の記事など、このブログでは英語圏の倫理学者が狩猟について書いた文章を…

文系インテリが進歩や科学を嫌う理由(「啓蒙をめぐる戦争」の要約【その4】)

前回と前々回と前々々回の続き。 これまでは『現代の啓蒙(Enlightment Wars)』に寄せられた具体的な批判に答えてきたピンカーだが、記事の後半では「『現代の啓蒙』はなぜ一部の人々をここまで猛烈に怒らたのか?」という疑問を呈して、自らそれに答えよう…

ピンカーによるニーチェ批判、AIとかスマホとかは理性の敵なのか(「啓蒙をめぐる戦争」の要約【その3】)

前々回と前回の続き。 批判その7:啓蒙主義(科学的な理性)は、その産物である人工知能やソーシャルメディアによって葬り去られてしまうだろう。 ピンカーの反論:メアリー・シェリーが『フランケンシュタイン』を書いた時代なら、そのような物語は魅力的…

悲観主義はなぜ賢そうに聞こえるのか?

経済コラムニストのモーガン・ハウゼル(Morgan Housel)が、英語版のモトリー・フール(投資に関するニュース・メディア)に2016年に投稿した記事を要約して簡単に紹介。 www.fool.com 経済史学者のディアドラ・マクロスキーは「何故だかわからないが、人々…

精神病や自殺者の数は世界的に増えている?トランプやブレクジットは啓蒙主義が終わった証拠?(スティーブン・ピンカー「啓蒙をめぐる戦争」の要約【その2】)

前回の記事の続き。ほんとは前半と後半の2つに分けるつもりだったがしんどいので3つに分けることにした(4つになるかも)。 批判その5:トランプやブレクジット、権威主義的ポピュリズムの隆興はどう説明する?それらは、啓蒙主義の時代が終わり進歩が逆行…

「啓蒙をめぐる戦争」(『Enlightment Now』への批判に対するスティーブン・ピンカーの応答)【その1】

2018年の初頭に出版されたスティーブン・ピンカーの新著『Enlightenment Now: The Case for Reason, Science, Humanism, and Progress (現代の啓蒙:理性、科学、人道主義、進歩を擁護する)』は、多くの批判にさらされてきた。タイトルの通り合理主義や科…

家父長制・弱者男性・フェミニズム

以前に訳して紹介したポーラ・ライト(Paula Wright)のブログの記事を読みながら、だらだらと考えたこと*1。 porlawright.com 「改良された"家父長制"を擁護する」というこの記事では、家父長制とは単一の種類しかないものではなく、悪性の家父長制もあれば…