道徳的動物日記

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人類学

動物に関する文化人類学の議論の有害性について

今回書くことは数年来考えてきたことであり、これまでにもTwitterなどでぶつぶつと文句は言ってきたのだが、まとまった文章を書くタイミングはなかった。 しかし、先月に文化人類学者の奥野克巳氏(以下敬称略)がアップした「分別と無分別の間で ~動物解放…

家父長制・弱者男性・フェミニズム

以前に訳して紹介したポーラ・ライト(Paula Wright)のブログの記事を読みながら、だらだらと考えたこと*1。 porlawright.com 「改良された"家父長制"を擁護する」というこの記事では、家父長制とは単一の種類しかないものではなく、悪性の家父長制もあれば…

配偶者選択が政治的分断を悪化させる?

今回はThe Atlanticに掲載されたアメリカの進化心理学者のAvi Tucshmanの記事を訳して紹介。数年前に読んだTucshmanの著書の『Our Political Nature(私たちの政治的な本性)』でもこの記事と同様の話題が含まれていた。なお記事が公開されたのは2014年2月な…

『サピエンス全史』に対する批判に対する雑感

著者がヴィーガンだから「歴史書の形を借りた自己啓発書」とされるの、意味わかんない... — デビット・ライス (@RiceDavit) 2017年9月25日 たとえば歴史的事実なり科学的事実なりについて書かれている本で、それらの事実についての著者の理解から「人類は増…

「ブルジョワ文化」が失われたことがアメリカの社会問題の原因?

www.philly.com 今回紹介するのは、Philly.comというサイトに掲載された、ペンシルヴァニア大学のロースクールの教授であるエイミー・ワックス(Amy Wax)とサンディエゴ大学法学部の特別教授であるラリー・アレクサンダー(Larry Alexander)による「ブルジ…

宗教はいかにして人を道徳的にするか(ロバート・パットナム『アメリカの恩寵』)

今日は『American Grace: How Religion Divides and Unites Us(アメリカの恩寵:宗教はアメリカ人をいかに分断していかに結び付けているか)』について軽く紹介しよう。この本はロバート・パットナムというデビッド・キャンベルという二人の政治学者の共著…

「善と悪は科学で測れるか?」 by サム・ハリス

www.samharris.org 今回紹介するのは、心理学者哲学者・神経科学者のサム・ハリス(Sam Harris)が自著『Moral Landscape: How Science Can Determine Human Values(道徳の風景:科学はいかにして人間の価値を決定することができるか)』で行っている議論を…

環境美学のサバンナ仮説(ゴードン・オリアンズ『蛇、日の出、シェイクスピア』)

Snakes, Sunrises, and Shakespeare: How Evolution Shapes Our Loves and Fears 作者: Gordon H. Orians 出版社/メーカー: University of Chicago Press 発売日: 2014/04/14 メディア: Kindle版 この商品を含むブログ (1件) を見る 以前に趣味で読んだ洋書…

ポストモダニズムとポリティカル・コレクトネス

The Science of Liberty: Democracy, Reason, and the Laws of Nature 作者: Timothy Ferris 出版社/メーカー: Harper Perennial 発売日: 2011/02/08 メディア: ペーパーバック この商品を含むブログを見る 先日から読み始めたティモシー・フェリス著『自由…

「長い目で見れば、戦争は人類を安全にして豊かにしてきた」by イアン・モリス

www.washingtonpost.com 今回紹介するのは、2014年の4月に歴史家のイアン・モリス(Ian Morris)が Wshington Post に発表した記事で、自著『War! What is Good For ? : The Role of Conflict in Civilization, from Primates to Robots』 で行っている…

「文化相対主義と女子割礼」by ドミニク・ウィルキンソン

blog.practicalethics.ox.ac.uk 今回紹介するのは、イギリスの Practical Ethics というサイトに掲載された、倫理学者のドミニク・ウィルキンソン(Dominic Wilkinson)による記事。 「文化相対主義と女子割礼」by ドミニク・ウィルキンソン 2014年2月…

「性別間の生物学的な差異は存在しない、という社会学者たちの宗教」 by ジェリー・コイン 

The sociological religion of no biological differences between the sexeswhyevolutionistrue.wordpress.com 昨日に引き続き、進化生物学者・無神論者のジェリー・コインのブログからまたまた記事を紹介。 「性別間の生物学的な差異は存在しない、と…

「戦争は人間の本性に深く根付いているという生物学理論」に関する、ジョン・ホーガンとスティーブン・ピンカーの見解

Steve Pinker demolishes John Horgan’s view of war « Why Evolution Is True 今回紹介するのは、進化生物学者のジェリー・コイン(Jerry Coyne)のブログに掲載された、「戦争は人間にとって生得的なものである」という主張を批判する科学ジャーナリストの…

「古代の戦争と、空白の石板論」by マイケル・シャーマー

evolution-institute.org 今回紹介するのは、心理学者で疑似科学批判者であるマイケル・シャーマーがEvolution Instituteというサイトに掲載した記事。 記事の原題を全て訳すと「ツイートと石板について:古代の戦争と空白の石板論に関して、デビッド・スロ…

「文明が登場する以前の戦争」 by ピーター・ターチン

evolution-institute.org 今回紹介するのは、進化生物学者・心理学者・人類学者たちなどが集まって進化に関する様々な記事を掲載しているサイトであるEvolution Institueに掲載された、ピーター・ターチン(Peter Turchin)の「文明が登場する前の戦争(War …

「科学から政治的活動へと変貌させられる人類学」by グリン・カストレッド

www.popecenter.org 今回は、カリフォルニア州立大学イーストベイ校の人類学者グリン・カストレッド(Glynn Custred)による記事「Turning Anthropology from Science into Political Activism(社会科学から政治的活動に変貌させられる人類学)」を紹介する…

「科学はお断り。私たちは人類学者だ」by アリス・ドレガー

www.psychologytoday.com 今回紹介する記事は、アリス・ドレガー(Alice Dreger)の「科学はお断り。私たちは人類学者だ」(No Science, Please. We're Anthropologists.)という記事。 2010年の11月25日に発表された記事で、アメリカ人類学会(Amer…

「イスラエルに対するBDS運動と、非-事実的(post-factual)な人類学の登場」 by  デビッド・ローゼン

BDS and the Rise of Post-Factual Anthropology | Minding The Campus 今回はアメリカの人類学者、デビッド・ローゼン(David Rosen)の記事を紹介する。 記事の本題とはあまり関係ないが、ローゼンの専門は少年兵士に関する人類学的な研究であるようだ。 A…

スティーブン・ピンカー、ノーム・チョムスキーらがイスラエルに対する学術的ボイコットを批判

japanese.irib.ir Anthropologists for the Boycott of Israeli Academic Institutions アメリカ人類学会(American Anthropological Association)は、パレスチナに対するイスラエルの侵略などを批判する目的で、イスラエルに対する学術的ボイコットを20…