道徳的動物日記

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動物倫理

「動物の感情、動物の感覚、動物の福祉、動物の権利」 by マーク・ベコフ

www.psychologytoday.com 「動物の感情、動物の感覚、動物の福祉、動物の権利」 by マーク・ベコフ 私が書いてきた本やブログ記事の多くは、動物の感情や感覚という話題を扱ったものだ*1。この記事では、動物は実際に苦痛を感じることができるし深い感情を持…

「「ペット」:動物の家畜化に内在する本質的な問題」 by ゲイリー・フランシオン

www.abolitionistapproach.com 今回紹介するのは、動物の権利論者・動物の権利運動家の、ゲイリー・フランシオンの記事。フランシオンはアメリカの法律学者で、法律において動物が「所有物」として扱われていることを批判し、動物を利用することを認める ins…

「工場的畜産は残酷なのか?」という記事についての雑感

工場的畜産は残酷なのか? - 感想文 この記事についての雑感をTwitterの方でつぶやいたので、まとめて転載する。 工場的畜産は残酷なのか? - 感想文 https://t.co/zpYG4efP2h — デビット・ライス (@RiceDavit) 2016, 2月 2 自然界の動物も人間も、自分と同…

無神論と動物倫理 ・ 「ある種差別主義者の告白」 by マイケル・シャーマー

(翻訳はところどころ意訳・省略している。無神論については最近関心を持って調べ始めたところなので、知識の間違いや誤解などが含まれているかもしれない。) マイケル・シャーマーはアメリカの科学史家、サイエンスライター。疑似科学や宗教信仰を懐疑・批…

マーク・ベコフの「人道的自然保全」論

生物学者・動物行動学者のマーク・ベコフは、動物の抱く様々な感情について研究しており、動物の感情について解説した多くの著書を執筆している。*1また、ベコフは動物保護・動物の福祉への配慮の必要性を昔から説いている。*2 www.huffingtonpost.com 野生…

ピーター・シンガーの公式FAQ

プリンストン大学のwebページに掲載されている、ピーター・シンガーの公式FAQを非公式に翻訳した。発展途上国への援助と寄付・動物の道徳的地位・障害のある乳児の殺害や安楽死など、シンガーの主張のなかでもよく取り沙汰されているテーマについて、本人…

「イルカは馬鹿ではない」 by フィリッパ・ブレイク

今回紹介する記事の著者は、クジラやイルカを研究する生物学者フィリッパ・ブレイクである。彼女はクジラやイルカの保護活動にも関わっているようだ。編著の『Whales and Dolphins: Cognition, Culture, Conservation and Human Perceptions』はクジラやイル…

「動物の権利、多文化主義、左派」by ウィル・キムリッカ&スー・ドナルドソン 

ウィル・キムリッカとスー・ドナルドソンによる論文、"Animal Rights, Multicultrualism and the Left"を、要約して翻訳して紹介する。要約ではあるが、長い文章になっている。註釈や引用に参考文献などは省いているので、英語が読める人はもとの論文を読む…

ローリー・グルーエン『動物倫理入門』

本書は、Lori Gruen, Ethics and Animals: An introdution (2011)の翻訳である。 本書の構成としては、まず1章「動物問題とは何か」と2章「自然なことと規範的なこと」で動物のことを倫理学的に考えるために必要な基礎的な用語や理論を説明されてから、3…

ローリー・グルーエン「サミュエル・デュボースとライオンのセシル」

エコロジカル・フェミニストであり動物倫理についての著作もある倫理学者ローリー・グルーエンが、今年の7月末にアルジャジーラ・アメリカのWebサイトに投稿した英語記事を紹介する*1。 この記事は、オハイオ州で黒人男性サミュエル・デュボースが白人警官…

スティーブン・ピンカーによる「動物の権利運動」論

スティーブン・ピンカーの『暴力の人類史』では、様々な資料や統計を駆使して、人類が歴史を通じていかに暴力を減少させていったかが示されている。扱われている「暴力」の種類も様々であり、国と国同士で行われる戦争やある社会が特定の集団に行う虐殺など…

ニューヨークタイムス誌のwebページにピーター・シンガーのインタビュー「人種差別、動物の権利と人権について」

私たちはどう生きるべきか (ちくま学芸文庫) 作者: ピーターシンガー,Peter Singer,山内友三郎 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2013/12/10 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (3件) を見る http://opinionator.blogs.nytimes.com/2015/05/27/peter-si…

倫理学における、動物の「知能による線引き」について、雑に説明してみた

<a href="http://anond.hatelabo.jp/20150523180144" data-mce-href="http://anond.hatelabo.jp/20150523180144">イルカ漁の是非について</a>anond.hatelabo.jp 「おれのアタマじゃ結論出ないので、倫理学の専門家に説明してほしいなあ。」 私も専門家ではないし、時間がないので雑になるが、前半の「知能による線引き」について、とりあえず説明してみる。 基本的に、倫理学…

パーソン論について雑にまとめてみた

The Oxford Handbook of Animal Ethics (Oxford Handbooks) 作者: Tom L. Beauchamp,R. G. Frey 出版社/メーカー: Oxford Univ Pr (Txt) 発売日: 2014/02 メディア: ペーパーバック この商品を含むブログを見る ・「女性には自分の意志に基づいて胎児を中絶…

動物の権利運動と動物福祉 ー 規制か、撤廃か? 動物の権利運動における畜産をめぐる論争

アニマルウェルフェア―動物の幸せについての科学と倫理 作者: 佐藤衆介 出版社/メーカー: 東京大学出版会 発売日: 2005/06 メディア: 単行本 購入: 1人 この商品を含むブログ (8件) を見る 1:「動物福祉」とは何か 欧米では、動物愛護運動は主にイギリスを…

「動物の権利」を主張するとはどういうことか  (動物の「道徳的権利」と、その他の意味合いでの「権利」)

動物の権利 (〈1冊でわかる〉シリーズ) 作者: デヴィッド・ドゥグラツィア,戸田清 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2003/09/06 メディア: 単行本(ソフトカバー) クリック: 20回 この商品を含むブログ (18件) を見る 「動物の権利」という言葉をめぐるや…

「文化は尊重されるべきである」という規範と動物倫理

・一般的に、「文化とはよいものである」「文化の多様性は尊重されるべきである」「人々が自分の親しんでいる文化から引き離されて、親しみのない異文化を押し付けられることは問題である」といった考えは広く支持されていると思う。*1多くの人は、自分にと…

ピーター・シンガーによる「種差別」の議論

「人間の利益を“人間だから”という理由で優先して、動物には“動物だから”という理由で配慮しないことは、その存在が 属している生物種によって配慮するかしないかを非合理的に選択する、種差別(生物種による差別)である。これは、白人の利益を“白人だから”…

ピーター・シンガーの「利益に対する平等な配慮」の原理

ピーター・シンガーが『動物の解放』で行った主張の要点は、以下のようなものである。 「動物は、人間と同じように、道徳的な配慮の対象となる」 「現在の社会において人間が動物たちに行っていること(畜産や動物実験など)は、人間の利益を優先して動物に…

ピーター・シンガーの『動物の解放』

現在、欧米やアジアなどの世界各国で「動物の権利運動」が行われている。 動物の権利運動は「人間の利益のために、動物を利用・搾取する制度」を批判する。具体的には、大規模な集約式畜産制度・学問研究や新製品開発のための動物実験制度・動物の毛皮を利用…

「動物は道徳的地位を持つ」という主張

・「動物の権利論」や「動物開放論」と呼ばれる議論の基本となる主張は「私たちは、動物に対して、直接的な義務を負っている」という主張である。これは「動物は道徳的地位を持つ」という主張でもある。 今回は、ジェイムズ・レイチェルズの議論を参考にしな…