道徳的動物日記

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「聾者がアクセスできなくて不平等」という理由で、カリフォルニア大学バークレー校の無料公開オンライン講義が中止されるかも、という記事

 

 タイトルに書かれている事態について、生物学者のジェリー・コインがブログで書いていた短い記事を紹介。

 今回の事態についてはこちらの記事などでも紹介されている*1

 

UC Berkeley cancels free online courses because they weren’t accessible to the deaf « Why Evolution Is True

 

「聾者がアクセスできなかったという理由で、カリフォルニア大学バークレー校が無料のオンライン講義を中止する」 by ジェリー・コイン

 

 

 これは嫌な事態だし、どうすればいいのか私にはわからない。しかし、この事態に関係する人たち全員が敗者になっているということは明らかだ。

 

 何が起こったかというと…カリフォルニア大学バークレー校は、学生向けの無料大規模公開オンライン講義(Massive Open Online Courses, MOOCs)を提供している。資金や移動力の問題のために学校に通うことができない人にとってはまさにボーナスだ。問題なのは、抗議を受けた司法省が判断したように、大半の講義には聾者向けの字幕や手話が用意されていなかったことだ。以下は「市民権の教育と促進センター」のサイトからの引用である*2

 

司法省はバークレーのオンラインページを通じてMOOCsをレビューし、一部のビデオには字幕が無かったこと、ドキュメントがスクリーンリーダー(画面読み上げソフト)を使う人向けに作成されていなかったこと、その他の問題があると判断した。司法省はYouTubeに掲載された講義をサンプリングして、それらの動画には数々の障壁があることを発見した。例えば、不正確であり不完全な自動再生字幕、講義の内容についての視覚に依らない説明が用意されていない、また、視力障害者向けの適切なコントラスト調整がされていない、などの障壁が発見された。また、司法省はiTunes Uに掲載された講義をサンプリングし、サンプルされた動画のいずれにも字幕がなかったこと、動画に含まれている視覚情報が他の形式で代替して提供されてもいなかったことを発見した。

司法省は、バークレーアクセシビリティの基準の違反していると結論した。特に、バークレーは「聴覚や視覚、または手先に障害のある人たちにも効果的なコミュニケーションを保証するアクセス方法が必要であるのに、大半のオンライン講義でそのようなアクセス方法を提供していなかったために(訳注:米国障害者法の)第二章に違反している。加えて、バークレーのオンライン講義の運営方法は、障害のある人たちにもオンライン講義を利用するための平等な機会が得られることを保証していない」ことを、司法省は発見した。これらの発見に加えて、バークレーが将来的にアクセシビリティを保証するために実施しなければならない6つの改善策を掲載したリストを、司法省は発表した。

 

  司法省の発表はここから見ることができる*3バークレーによる応答を見ると、司法省の要求を満たす方法を見つけるまで(そもそも見つけることが可能であったとしての話だが)、オンライン講義は中止されるようだ*4

 これは、誰もが勝者とならない「ピュロスの勝利」と呼ばれる事態だ。聾者たちやその他の人たちがオンライン講義へのアクセスを得る訳ではない(オンライン講義を修正するためのリソースをバークレーが発見しない限りでだが、オンライン講義は無料であるということを忘れないでほしい)。そして、バークレーのオンライン講義やその他の同様の講義が単に消滅してしまう、という可能性も十分にあるのだ。それは良いことなのか?

 私が思うに、この問題の良い側面とは、聴覚障害者たちが必要としていることについて私たちに注意を促したということだ(盲者については、私たちはまだ考慮すらもしていないのだ)。リソースがあるなら、全ての人が講義にアクセスできるようにするべきなのだ。

 しかし、もしリソースが不足しているためにオンライン講義を修正できないとすれば、どのような解決策があるだろう?私にはわからない。だが、全てのオンライン講義をしばらく中止するとは、粗悪な解決策であるように思える。