道徳的動物日記

倫理学、社会科学、時事問題、世相などについて論じます。

近況報告(ネットに文章を書くことについての雑感)

・単著の準備をすすめており、11月か12月には出版できそうだ。

 昨年の夏に現代ビジネスに初めて署名記事を発表した時点から「批評家」を肩書きにしており、すでに「自分は作家だ」という意識はあるんだけれど、単著があるとないとでは気の持ちようがだいぶ変わってくる。

 

・署名記事を発表して、著作も出版するとなると、文章を書くときの意識や目的も変わってくる。

 このブログは金儲けを目的としておらず*1、読んだ本を紹介したり海外の議論を紹介したり自分の意見を展開することを通じて読者に知識や洞察を提供して啓蒙することを第一の目的とはしているのだが、まあ好き勝手に書いたり雑感やイライラを吐き出したりするだけなこともある。

 署名記事や本となると、そういうわけにはいかない。そこには金銭が発生しているし、出版社のWEBサイトや書店の棚や流通などの公共的なものの力を借りることになる。そうなると、責任というものを意識せざるをえない。だから、「読者に価値を提供する」という目標も明確になる。

 

・ブログ記事なら、気に入らない本や言論を紹介した挙句に批判したり揚げ足を取ったりするだけで済ますことができる。それが無意味だというわけでもない(「間違っている」「有害である」と自分が本気で思っているなら、それが世の中に浸透することを防ぐために、反対の言論を発信することには意義があるだろう)。

 しかし、それだけでは読者に価値を提供しているとは言い難い。なにかを批判する際には、対案を提示したり生産的な方向に進むための道筋を提示したりすることをセットにしないと、価値のある文章にすることは困難だろう。

 

・とはいえ、わたしもあまり他人のことをとやかく言えるわけでもないんだけれど、学問や社会に関する難しい話題に関してブログやSNSに文章を書くタイプの人のなかには、他人に対する批判や揚げ足取りに終始している人が多い。

 そして、そういう人の多くは、自分以外の人たちも他人について批判や揚げ足取りに終始することを望むのである。

 

・たとえばわたしに対してもそのような期待(批判や揚げ足取りをしつづけること)を抱いている人がいるようであり、わたしがその期待を裏切ると、勝手に心外して文句を書き込んだりする。

 

・ネットには、「自分と他人は違った問題意識を抱いている」ということや「自分と他人には違った目標がある」ということを理解したり想像したりする能力に欠けている人がかなり多い。

 とくにわたしの場合は複数のテーマについて文章を書いているので、たとえば動物倫理の話題についてなにかを書けば「そんなことよりフェミニズムを批判してくれ」と言われたり、ポリティカル・コレクトネスについてなにかを書けば「そんなものより哲学についての文章を書いてほしい」と言われたりするのだ。希望されるだけなら別にいいんだけれど、わたしがその希望を満たさないと勝手に失望して、「変節した」「日和った」と決めつけて文句や悪口を書き込む、というのはさすがに勘弁してほしい。

 

・諸々のトピックについて、わたしは自分なりに共通するテーマを見出している場合もあるし、複数のテーマについて同時に考えて別々の場所でそれぞれに文章を書くこともある。いずれにせよそれはわたしのプロジェクトなのであり、「他人には他人のプロジェクトがある」ということくらい、まともな大人なら理解しておいてほしいものだ。

 

・この問題は、知名度の低い一般人的なアカウントに限らず、いわゆる「ネット論客」の人たちにも生じがちだ。

 アカデミックな世界に属さないアマチュアであるネット論客(や読書人)の問題点のひとつは、自分が抱いている問題意識や自分が重要だと思っているテーマや分析枠組みについて外部から意見を受けて相対化される機会がなく、自分のプロジェクトが絶対的なものだと思ってしまうことだ。そのため、自分の問題意識に反していたり自分とは異なる視点や方法から物事を分析している人に対して、過剰に批判的になったり攻撃的になったりしがちである。

 ……もちろんわたしも「ネット論客」のひとりなので、こうなるリスクは常にある。もって他山の石として気を付けていきたいものだなと思う(「もう手遅れだ」と言ってくる人もいるかもしれないけど)。

 

・上述したようなことがあり、そしてオリンピックの開会式を皮切りにしてますます激化しているキャンセル・カルチャーにもうんざりさせられて、わたしはTwitterというものにとことん嫌気が差してしまった。

 

・とはいえ、自分の書いた記事や著作を宣伝するためには、Twitterは不可欠に等しい(とくにわたしが書くような文章はTwitterのようなところでウケるやつだから)。それに、嫌気が差して辞めたくなっても辞められないのが、Twitterというものである。

 たとえば会社の出勤時や昼休みや退勤時、あるいは食事したりネットフリックスを見たりしている最中になにかふとつぶやきたくなったらそれを止めるには意志力が必要とされる。

 

・現時点では、作家としての宣伝や他の人が書いたものの紹介、自分の意見や価値観や人間性にはっきり関わっていて「これは今後も残しておきたいな」というツイートは作家としてのアカウントでつぶやいて、ふとした思いつきや冗談などはプライベートのアカウントで消して24時間以内に消す、という運用にしている。

 これはかなり不自然で二度手間な運用なんだけれど、Twitterというものがわたしたちの自然な心理機能や報酬回路をハックしてロクでもない方向に導くものだから、これくらい不自然にしてようやくまともに運営できるものだと思うようになってきた。

 

・ところで数カ月前から恋人ができていて、それはめでたいことなんだけれど*2、平日に会社に出勤して休日に恋人と会って合間に執筆作業もすすめるとなれば、読書をすることはなかなか困難だ。特にここ二カ月はほとんど読書ができておらず、なんとかしたいなと思いつつ、なんとかできずに日々を過ごしている。なんとかしたい。本が売れたらいいな。

 

*1:とはいえ、ほしいものリストからなにか買ってくれるのは大歓迎だ。

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*2:めでたいのでなにか買ってほしい。https://www.amazon.co.jp/hz/wishlist/ls/2QDYPAMP3K2WJ?ref_=wl_share