道徳的動物日記

『21世紀の道徳』発売中です。amzn.asia/d/1QVJJSj

宣伝:最近の執筆活動について(『群像』批評特集号に掲載など)

 

 

 

↑ 著書の『21世紀の道徳』です。2月に3刷目が発行されたけれど4刷目も目指したいので、まだ買っていない人は買ってください*1

 

●発売から2週間経ってしまったけれど、6月7日に発売された文芸誌『群像』の7月号の特別企画【批評総特集:「論」の遠近法2022】にて、「感情と理性:けっきょくどちらが大切なのか?」を寄稿しました。

 

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『21世紀の道徳』の8章「ケアや共感を道徳の基盤とすることはできるのか?」で展開したようなフェミニズム倫理学(ケアの倫理)批判や、5月に更新された晶文社の連載記事「トーン・ポリシングの罠」で行ったような「怒り」を肯定する風潮に対する批判をしながら、アリストテレスやジョセフ・ヒースを引用しつつ、「昨今ではフェミニズム哲学やマイノリティのアイデンティティ・ポリティクスの後押しを受けながら感情を肯定する風潮が強くなっているけれど、やっぱり理性が大事なんですよ」といった主張をしております*2。それだけだと穏当というかなんということのない議論に聞こえるかもしれないけれど、昨今の日本では文芸誌と「批評」こそがフェミニズム的なアイデンティティ・ポリティクスと「ケア」や「怒り」を肯定する風潮の最前線となっていることをふまえると、その文芸誌の批評特集においてあえてフェミニズムと感情を批判して男性的ともされる理性の重要性を主張する議論を投じたことはまさに「批評家」として本懐を遂げたと評せるだろう……という感じの評価がされることを期待していたんだけれど、そもそも感想を書いたり話題にしてくれたりする人がほとんどいなくて、悲しい感じになっています。よければ『群像』も読んでください。

 

晶文社のWeb連載、今月号では、ジョン・スチュアート・ミルの『自由論』を軸としながら、ジョナサン・ハイトやピーター・シンガーやジョナサン・ローチなどの議論も参照しつつ、とくにアカデミズムにおけるキャンセル・カルチャーが「意見を表明する自由」に対してどのような問題をもたらしているか、ということについて論じています。

 

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 なにしろ3万字もかけているので、ネットに掲載される記事やコラムとして適切な分量ではなく読み通せる人の数が限られていることも承知しているんだけれど、『21世紀の道徳』のときと同じく晶文社の連載は後に加筆修正したうえで単著にまとめることを前提としてやっているので、読む際には「本のなかの一章」という認識でよろしくお願いします。ネットで読むのがキツい場合にはそのうち発売されるはずの次作を待っていてください。

 

●先日の記事では御田寺圭さんの著作『ただしさに殺されないために』について、「想定されている読者層(弱者男性)の被害者意識を煽る内容である」という点や「現代社会における問題を(恣意的に・誇張したレトリックを用いながら)提示しているだけで、解決策が示されていない」という点などを批判しました*3

 前者の批判については、「読者の被害者意識を煽っているのは御田寺だけではないし、リベラルやフェミニストの議論にも被害者意識を煽るものは多いじゃないか」といったコメントがありました。これについては、今後の連載で、いわゆる「反差別」の立場の人たちによる「被害者意識を煽る言説」の問題点を指摘しながら、「被害者であること」が重視されてしまう昨今の社会風潮を批判する文章が掲載される予定です。

 後者の批判については「そういうお前も問題に対する解決策を示すことはほとんどないじゃないか」といったコメントがありました。この反論については耳が痛いところがあるとは認めつつも、たとえば「男性の自殺率の高さ」という弱者男性の問題にもつながるトピックについての個人的な解決策については、記事を書いたことがあります。

 

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 また、弱者男性の問題についての社会的な解決策については模索中、というところです*4。考えている方向性としては、「弱者男性(または男性一般)が被っている危害や不利益は女性やその他のマイノリティが危害や不利益と同じように社会正義に係る問題であり、対応策が検討されたり、可能であれば是正されたりするべき問題である」と主張すること。また、(アイデンティティポリティクスの言葉やラディカルな言葉ではなく)政治哲学における正義論やリベラリズムの言葉を用いながらその主張を明確化して、公的な議論や討議の対象として取り上げられるべき問題であると示すこと。……つまり、結局のところは「ただしさ」を否定するのではなく肯定することが必要になるのではないか、と考えています。倫理学に比べると政治学にはまだ馴染みが薄いので苦戦しているけれど。

 

●今年に入ってから『中央公論』や『群像』に記事を掲載してもらったけれど、この後は雑誌などに文章を掲載してもらう予定がいまのところないので、よかったらどこか記事を掲載してくれる雑誌などを募集しています。文筆家としての生活を続けるために知名度を上げたいのと原稿料がほしいのとで。ほしいものリストからの食糧や本の支援も引き続き募集します。

 

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*1:どういう内容の本か知りたい人は、わたしが書いた紹介記事、および倫理学者の平尾昌宏先生や先日の記事で批判しちゃったシロクマ先生による書評記事を参考にしてみてください。

gendai.ismedia.jp

synodos.jp

toyokeizai.net

www.genron-alpha.com

p-shirokuma.hatenadiary.com

*2:

s-scrap.com

*3:

davitrice.hatenadiary.jp

*4:手がかりとして数ヶ月前に書いたメモ的な記事はこちら。

davitrice.hatenadiary.jp