道徳的動物日記

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12月〜2月に読んだ本まとめ

年明けから二作目の著書の執筆作業を再開したこと(どんどん内容が長くなっているのでいつ終わるかまるでわからん)、異動により会社員としての仕事内容が変わって忙したくなったことから、本格的な学術本を読む時間は全然なくなったしこのブログに読書メモ…

2023年のおすすめ本(哲学&社会科学系がメイン)

なんかこのタイミングで「2023年おすすめ本」の記事を書いたら多くの人に読んでもらえそうな流れなので、書いておきます(それぞれの本の詳細な感想や書評は各記事へのリンクをクリックしてください)。 ■今年のベスト本 今年に発売されたなかでの個人的なベ…

真・公共的理性とはなんぞや(読書メモ:『政治的リベラリズム』①)

政治的リベラリズム 増補版 (単行本) 作者:ジョン・ロールズ 筑摩書房 Amazon 年明けからは分厚い本を読めるタイミングもしばらくなさそうなので、以前にほしいものリストからいただいた『政治的リベラリズム』を手に取り*1、とりあえず第二部第六章の「公共…

「恥辱」と法、ヌスバウムによるJ・S・ミル論(読書メモ:『感情と法』③)

感情と法―現代アメリカ社会の政治的リベラリズム 作者:マーサ ヌスバウム 慶應義塾大学出版会 Amazon davitrice.hatenadiary.jp davitrice.hatenadiary.jp 前回からだいぶ間が空いたが、「恥辱感」をテーマにした4〜6章とジョン・スチュアート・ミルの自由…

人文書とTwitter

Twitterは辞めたけれど、気になる話題があったら、いまだに外部サイトを経由して検索などはしてしまったりしている。 すこし前になるが、いろいろと気になったのはKADOKAWAによる『あの子もトランスジェンダーになった SNSで伝染する性転換ブームの悲劇』の…

近況報告(引っ越し、猫を飼い始め、結婚、身内の不幸、コロナ罹患、異動など)

davitrice.hatenadiary.jp 昨年末にも挨拶記事を書いていたし、SNSを辞めてからは日々の生活や状況を書く場所がなくなったからわたしの近況が気になる人もいるだろうし(いるよね?)、今年1年のわたしの生活の変遷や最近の状況についてここで書いておこう…

インターネット時代におけるマスメディアの必要性(読書メモ:『マスメディアとは何か 影響力の正体』)

マスメディアとは何か 「影響力」の正体 (中公新書) 作者:稲増一憲 中央公論新社 Amazon マスメディアを研究する分野といってもさまざまにあるだろうが、本書の内容は「マスメディアが人々にもたらす影響をデータを用いて科学的に検証する研究分野」である「…

感情の普遍性と合理性(読書メモ:『一冊でわかる 感情』)

感情 (〈1冊でわかる〉シリーズ) 作者:ディラン エヴァンズ 岩波書店 Amazon 『福祉国家』、『ポピュリズム』、『法哲学』、『マルクス』、『古代哲学』、『懐疑論』などに続いてVery Short Introduction シリーズの邦訳書を紹介するシリーズ。 当たり外れも…

反共同体主義としてのリバタリアニズム(読書メモ:『自由はどこまで可能か』)

自由はどこまで可能か=リバタリアニズム入門 (講談社現代新書) 作者:森村 進 講談社 Amazon タイトル通り、思想や哲学としてのリバタリアニズムの入門書。 本書の初版は2001年ともう20年以上前であるし、わたしが本書を最初に読んだのも学部生だったときだ。…

最近読んだ本シリーズ:『体育がきらい』&『サイエンス超簡潔講義 動物行動学』&『サイエンス超簡潔講義 うつ病』

●『体育がきらい』 体育がきらい (ちくまプリマー新書) 作者:坂本拓弥 筑摩書房 Amazon 著者は大学で体育やスポーツを教えており、また「体育哲学」という研究を行なっているそうだ。本書で哲学っぽいことが書かれるのは終盤になってからだが、身体を通じて…

内在的公正世界信念と究極的公正世界信念(読書メモ:『「心のクセ」に気づくには 社会心理学から考える』)

「心のクセ」に気づくには ――社会心理学から考える (ちくまプリマー新書) 作者:村山綾 筑摩書房 Amazon 「公正世界仮説」についてはいまや多くの人が知っていることだろう(小賢しいネット民好みの理論でもあるし)。しかし公正世界仮説(本書では公正世界信…

「怒り」はよくて「嫌悪感」はダメなのか?(読書メモ:『感情と法』②)

感情と法―現代アメリカ社会の政治的リベラリズム 作者:マーサ ヌスバウム 慶應義塾大学出版会 Amazon 前回の記事でも触れたように、『感情と法」の第2章と第3章では、おおむね「嫌悪感は不適切で理に適っていない感情だから法律に組み込んではいけないが、…

法律に「感情」が必要である理由(読書メモ:『感情と法』①)

感情と法―現代アメリカ社会の政治的リベラリズム 作者:マーサ ヌスバウム 慶應義塾大学出版会 Amazon 本書の序章や第1章などでまず強調されるのは、「感情はともかく非合理的であり、法的なルールを作るうえで感情に配慮することは常に間違いだ」(p.6)と…

読書メモ:『フェミニズムズ:グローバル・ヒストリー』(+『はじめてのフェミニズム』補足)

フェミニズムズ――グローバル・ヒストリー 作者:ルーシー・デラップ 明石書店 Amazon 本書の目的や、本書における「フェミニスト」や「フェミニズム」の定義は下記の通り。 本書ではフェミニストおよび活動家の女性たちとナショナリズム、宗教教義、帝国主義…

読書メモ:『なぜ美を気にかけるのか :感性的生活からの哲学入門』&『近代美学入門』

なぜ美を気にかけるのか: 感性的生活からの哲学入門 作者:ドミニク・マカイヴァー・ロペス,ベンス・ナナイ,ニック・リグル 勁草書房 Amazon 『なぜ美を気にかけるのか』は美学の入門書でもあるが、そのなかでも「美的価値」や「美的感性」「美的生活」の問題…

読書メモ:『人生の意味とは何か』

人生の意味とは何か (フィギュール彩) 作者:テリー イーグルトン 彩流社 Amazon Very Short Introduction シリーズの邦訳書を紹介するシリーズ(カテゴリを新設しました)。 U -NEXTの余っていたポイントを使ってビル・ナイ主演の『生きる LIVING』を観たと…

最近読んだ本シリーズ:『悪口ってなんだろう』『「美味しい」とは何か』『ケアしケアされ、生きていく』

図書館で借り、出退勤の電車で流し読みした新書本たち。どの本もdisることにはなるけれど、ちゃんと読めてはいないです。 悪口ってなんだろう (ちくまプリマー新書) 作者:和泉悠 筑摩書房 Amazon 「「からかい」の政治学」や『笑いと嘲り』を読んだ流れで、…

ユーモアのダークサイド(読書メモ:『笑いと嘲り』)

笑いと嘲り―ユーモアのダークサイド 作者:マイケル ビリッグ 新曜社 Amazon 先日に江原由美子の「からかいの政治学」を読んだ流れで、前々から図書館で見かけてタイトルだけは知っていたこの本も中古で購入して読了*1。 著者のマイケル・ビリッグは心理学者…

読書メモ:『哲学がわかる 懐疑論:パラドクスから生き方へ』

『福祉国家』、『ポピュリズム』、『法哲学』、『マルクス』、『古代哲学』などに続いてVery Short Introduction シリーズの邦訳書を紹介するシリーズ。 哲学がわかる 懐疑論──パラドクスから生き方へ 作者:ダンカン・プリチャード 岩波書店 Amazon 本書の冒…

読書メモ:『一冊でわかる 古代哲学』&『哲学がわかる 中世哲学』

古代哲学 (〈1冊でわかる〉シリーズ) 作者:ジュリア アナス 岩波書店 Amazon 『福祉国家』、『ポピュリズム』、『移民』、『法哲学』、『マルクス』などに続いてVery Short Introduction シリーズの邦訳書を紹介するシリーズ。 『一冊でわかる 古代哲学』の…

「からかいの政治学」(読書メモ:『増補 女性解放という思想』)

増補 女性解放という思想 (ちくま学芸文庫) 作者:江原 由美子 筑摩書房 Amazon 『増補 女性解放という思想』は昨年の12月にネット上の「からかい」に関する記事を書いた後にAmazonのほしいものリストから買ってもらったのだが、最近は「からかい」に関する…

読書メモ:『14歳から考えたい レイシズム』&『14歳から考えたい セクシュアリティ』&『14歳から考えたい 優生学』

『福祉国家』、『ポピュリズム』、『移民』、『法哲学』、『マルクス』などに続いてVery Short Introduction シリーズの邦訳書を紹介するシリーズ。 今回はすばる舎から出ている『14歳から考えたい』シリーズのうち3冊を一気に流し読みしたので、ごく短い感…

読書メモ:『市民的抵抗:非暴力が社会を変える』

市民的抵抗:非暴力が社会を変える 作者:エリカ・チェノウェス 白水社 Amazon 『福祉国家』、『ポピュリズム』、『移民』、『法哲学』、『マルクス』、『貧困』と、最近のこのブログではVery Short Introduction シリーズの邦訳書を紹介し続けているが、今回…

読書メモ:『一冊でわかる デモクラシー』&『啓蒙とはなにか:忘却された〈光〉の哲学』

『福祉国家』、『ポピュリズム』、『移民』、『法哲学』、『マルクス』、『貧困』に引き続きオックスフォードのVery Short Introduction シリーズの邦訳書を紹介するシリーズ第七弾。ただし今回紹介する『デモクラシー』と『権威主義』はどっちもあまり良い…

読書メモ:『14歳から考えたい 貧困』

14歳から考えたい 貧困 (A Very Short Introduction) 作者:フィリップ・ジェファーソン すばる舎 Amazon 『福祉国家』、『ポピュリズム』、『移民』、『法哲学』、『マルクス』に引き続きオックスフォードのVery Short Introduction シリーズの邦訳書を紹介…

読書メモ:『ロールズ正義論とその周辺 コミュニタリアニズム、共和主義、ポストモダニズム』

ロールズ正義論とその周辺―コミュニタリアニズム、共和主義、ポストモダニズム 作者:渡辺 幹雄 春秋社 Amazon マイケル・サンデルの『実力も運のうち』は案の定ベストセラーになって、この度は文庫版も出版された*1。しかし、『実力も運のうち』でなされてい…

ピーター・シンガーによるマルクス論(読書メモ:『マルクス』)

マルクス ピーターシンガー/著 重田晃一/訳 ノーブランド品 Amazon 『福祉国家』、『ポピュリズム』、『移民』、『法哲学』に引き続きオックスフォードのVery Short Introduction シリーズの邦訳書を紹介するシリーズ第五弾。 1989年発行のこの本はAmazon…

フェミニズムの理論をバランスよく(※)紹介する本(読書メモ:『はじめてのフェミニズム』)

はじめてのフェミニズム (ちくまプリマー新書) 作者:デボラ・キャメロン,向井和美 筑摩書房 Amazon 『福祉国家』、『ポピュリズム』、『移民』、『法哲学』に引き続きオックスフォードのVery Short Introduction シリーズの邦訳書を紹介するシリーズ第五弾………

解釈としての法(読書メモ:『一冊でわかる 法哲学』)

法哲学 (〈1冊でわかる〉シリーズ) 作者:レイモンド・ワックス 岩波書店 Amazon 『福祉国家』、『ポピュリズム』、『移民』に引き続きオックスフォードのVery Short Introduction シリーズの邦訳書を紹介するシリーズ第四弾。今回は『法哲学』である。 『一…

読書メモ:『移民をどう考えるか:グローバルに学ぶ入門書』

移民をどう考えるか: グローバルに学ぶ入門書 作者:カリド・コーザー 勁草書房 Amazon 一昨日の『福祉国家』、そして昨日の『ポピュリズム』に並んで、オックスフォードのVery Short Introduction シリーズの邦訳書を紹介するシリーズ第三弾。今回は『移民』…