道徳的動物日記

倫理学、社会科学、時事問題、世相などについて論じます。

進化心理学

『男にいいところはあるのか?:文化はいかに男性を搾取して繁栄するか』

Is There Anything Good About Men?: How Cultures Flourish by Exploiting Men (English Edition) 作者:Baumeister, Roy F. 発売日: 2010/08/12 メディア: Kindle版 前回の記事でも紹介した、心理学者のロウ・バウマイスターの著作『Is There Anything Good…

男性と女性は対立していない

Is There Anything Good About Men?: How Cultures Flourish by Exploiting Men (English Edition) 作者:Baumeister, Roy F. 発売日: 2010/08/12 メディア: Kindle版 昨日からロイ・バウマイスターの『Is There Anything Good About Men? :How Cultures Flo…

「人生の意味」の進化心理学

野蛮な進化心理学―殺人とセックスが解き明かす人間行動の謎 作者:ダグラス・ケンリック 発売日: 2014/07/18 メディア: 単行本 ダグラス・ケンリックの『野蛮な進化心理学:殺人とセックスが解き明かす人間行動の謎』の白眉は、やはり、第七章の「マズローと…

ケアの倫理と二層理論/「アイデンティティ哲学」がつまらない理由

link.springer.com ヘルガ・クーゼ、ピーター・シンガー、モーリス・リカードによる共著論文 "Reconciling Impartial Morality and a Feminist Ethic of Care" (「公平な道徳と、フェミニストによるケアの倫理を調和させる」)を読んだのでメモ的に内容を記…

女性のための進化心理学?:『ジェンダーの終わり』読書メモ(2)

The End of Gender: Debunking the Myths about Sex and Identity in Our Society (English Edition) 作者:Soh, Debra 発売日: 2020/08/04 メディア: Kindle版 先日の記事で書いたように、『ジェンダーの終わり:性とアイデンティティに関する迷信を暴く』で…

読書メモ:『恋人選びの心:性淘汰と人間性の進化』

恋人選びの心―性淘汰と人間性の進化 (1) 作者:ジェフリー・F.ミラー 発売日: 2002/07/15 メディア: 単行本 davitrice.hatenadiary.jp 『Virtue Signaling』の書評で書いたようにわたしはジェフリー・ミラーは文筆家としてはあまり好ましく思っていないところ…

スピーチ・コードはニューロダイバーシティに反しているのか?

davitrice.hatenadiary.jp 先ほど書いた記事ではジェフリー・ミラーの『Virtue Signaling:Essays on Darwinian Politics & Free Speech』の辛口な感想を書いたが、この本のなかでも「The Neurodiversity Case for Free Speech(ニューロダイバーシティの観点…

ひとこと感想:『Vitrtue Signaling: Essays on Darwinian Politics & Free Speech』

Virtue Signaling: Essays on Darwinian Politics & Free Speech (English Edition) 作者:Miller, Geoffrey 発売日: 2019/09/18 メディア: Kindle版 以前からすこし気になっていた本であり、ほしいものリストから頂いたので、読んだ。しかし、贈ってくれた方…

読書メモ:『孤独の科学:人はなぜ寂しくなるのか』

孤独の科学---人はなぜ寂しくなるのか 作者:ウィリアム・パトリック,ジョン・T・カシオポ 発売日: 2010/01/20 メディア: 単行本 トマス・ジョイナーの『Lonley at the Top』と同じく「孤独」が人の心身に与える悪影響について書かれた本であるが、ジョイナー…

読書メモ:『モラル・トライブズ:共存の道徳哲学へ』

きのうからはじまった某所での連載の次々回くらいの原稿の元ネタとして『モラル・トライブズ:共存の道徳哲学へ』を借りて読み直しているうちに、図書館からお怒りの電話が来てしまった。 しかし『モラル・トライブズ』は細部まで刺激と啓発に満ちたおもしろ…

「男性同士のケア」が難しい理由

男同士の絆―イギリス文学とホモソーシャルな欲望― 作者:イヴ・K・セジウィック 発売日: 2001/02/20 メディア: 単行本 近頃では、「これからは男性同士でもケアし合わなければならない」と言った主張がちらほらとされるようになっている。 この主張がされる文…

ジェンダー論が男性を救わない理由

Lonely at the Top: The High Cost of Men's Success 作者: Thomas Joiner Ph.D. 出版社/メーカー: St. Martin's Press 発売日: 2011/10/25 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 思うところあって、トマス・ジョイナーの『Lonely at the Top: The…

アファーマティブ・アクションとクオータ制が支持されない理由

The Coddling of the American Mind: How Good Intentions and Bad Ideas Are Setting Up a Generation for Failure (English Edition) 作者:Lukianoff, Greg,Haidt, Jonathan 発売日: 2018/09/04 メディア: Kindle版 前回に引き続き、先日から、社会心理学…

読書メモ:『階級「断絶」社会アメリカ』

階級「断絶」社会アメリカ: 新上流と新下流の出現 作者:チャールズ・マレー 発売日: 2013/02/21 メディア: 単行本 数年ぶりの再読。アメリカの「階級」に関する話題はトランプ当選以降に注目されるようになって、わたしもいくつかそれらの本の感想を書いてき…

覚え書き:「被害者性の文化」と「美徳シグナリング」

(深夜に突貫で書いた記事なので、かなりグダグタな内容になっている) ポリティカル・コレクトネスとそれが引き起こす問題は様々な場面に存在している。このブログでは主にアカデミアにおけるポリコレの問題を扱ってきたし、今年からはじめた映画日記の方で…

ひとこと感想:『ステレオタイプの科学:「社会の刷り込み」は成果にどう影響し、わたしたちは何ができるのか』

ステレオタイプの科学――「社会の刷り込み」は成果にどう影響し、わたしたちは何ができるのか 作者:クロード・スティール 発売日: 2020/04/06 メディア: Kindle版 本の題名だけ見ると、わたしたちが"他人"に対してどのようなステレオタイプを抱いているか、わ…

ひとこと感想:『美学への招待:増補版』

美学への招待 増補版 (中公新書) 作者:佐々木 健一 発売日: 2019/07/19 メディア: 新書 旧版は学部生のころに読んだような気がするが、詳細は忘れた。 タイトル通り「美学」の入門書だが、美学について主張してきた思想家たちを通時的に解説するタイプの本で…

「負の性欲」論についての雑感

gendai.ismedia.jp ↑ この記事に関する雑感。 ・この記事では「負の性欲」という概念がさも画期的な発明であるかのように大げさな言葉で説明されているが、実のところ「負の性欲」が指し示す現象はこれまでにも俗流の男女論や恋愛心理学で散々言われてきたも…

「"女性の上昇婚志向"論」についての雑感

このブログではこれまでにも何度かジェンダー論について話題にしてきたし、ジェンダーや恋愛に関して論じた本についての読書メモなども残している*1。また、ブログには取り上げなくても、進化生物学や社会科学などの観点から男女論や恋愛論や結婚制度などに…

読書メモ:『良き人生について - ローマの哲人に学ぶ生き方の知恵』

良き人生について―ローマの哲人に学ぶ生き方の知恵 作者: ウィリアム・B・アーヴァイン,竹内和世 出版社/メーカー: 白揚社 発売日: 2013/09/11 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 人生哲学としてのストア哲学の知見をわかりやすく紹介して、現代…

読書メモ:『進化倫理学入門』

進化倫理学入門 作者: スコット・ジェイムズ,児玉聡 出版社/メーカー: 名古屋大学出版会 発売日: 2018/01/29 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (4件) を見る 前半は進化心理学や人類学などが道徳に関してもたらす客観的知見の概説やおさらい、後半はそ…

進化心理学はなぜ批判されるのか?

quillette.com 上記のQuilletteの記事を要約紹介しつつ、雑感を書く。…というか、ダラダラと長ったらしい記事なので、思い切って要点や特徴的な点だけ紹介する。 上記の記事では、デビッド・バスとウィリアム・フォンヒッペルという二人の進化心理学者が行っ…