道徳的動物日記

倫理学、社会科学、時事問題、世相などについて論じます。

政治

読書メモ:『階級「断絶」社会アメリカ』

階級「断絶」社会アメリカ: 新上流と新下流の出現 作者:チャールズ・マレー 発売日: 2013/02/21 メディア: 単行本 数年ぶりの再読。アメリカの「階級」に関する話題はトランプ当選以降に注目されるようになって、わたしもいくつかそれらの本の感想を書いてき…

読書メモ:『反逆の神話:カウンターカルチャーはいかにして消費文化になったか』(前半)

反逆の神話:カウンターカルチャーはいかにして消費文化になったか 作者:ジョセフ・ヒース,アンドルー・ポター 発売日: 2014/09/24 メディア: 単行本(ソフトカバー) 数年ぶりに読み返しているが、やはり面白い。著者であるヒースの嫌味さや性格の悪さが存分…

「反ポリコレ」とKKKや反ユダヤ主義は結び付いている…… かもしれない(読書メモ:『白人ナショナリズム:アメリカを揺るがす「文化的反動」』)

白人ナショナリズム アメリカを揺るがす「文化的反動」 (中公新書) 作者:渡辺靖 発売日: 2020/05/29 メディア: Kindle版 同じ著者の前著『リバタリアニズム:アメリカを揺るがす自由市場主義』では、表面上では客観的・中立に扱っている風でありながらも政治…

ひとこと感想:『格差は心を壊す:比較という呪縛』

格差は心を壊す 比較という呪縛 作者:リチャード ウィルキンソン,ケイト ピケット 発売日: 2020/04/03 メディア: Kindle版 タイトル通り、経済の格差がわたしたちの心や健康にもたらす悪影響について論じて、経済格差が広がると社会的分断も広まって政治にも…

スティーブン・ピンカーとブラック・ライヴズ・マター

togetter.com ↑ 自分でまとめたこの件について、思うところをちょっと書いておこう。 ●今回はスティーブン・ピンカーという大物がターゲットになったことで話題になったが、アメリカのアカデミアにおける「キャンセル・カルチャー」の問題はいまに始まったこ…

フェミニズムを素直に受け入れ過ぎ(ひとこと感想:『女性のいない民主主義』)

女性のいない民主主義 (岩波新書) 作者:前田 健太郎 発売日: 2020/01/30 メディア: Kindle版 日本の民主主義における「女性不在」の問題について、参政権や政策、投票行動や立候補などの問題に細かく分別しながら、「ジェンダー論」や「フェミニズム」という…

労働から逃避したところで幸せになれるの?(読書メモ:『隠された奴隷制』)

隠された奴隷制 (集英社新書) 作者:植村邦彦 発売日: 2019/08/23 メディア: Kindle版 本のタイトルはマルクスの『資本論』に出てくるキーワードであり、この本の内容もマルクス主義的なものだ。 第一章〜第三章では、ロックやモンテスキューからはじまってア…

ひとこと感想:『日本人のためのイスラエル入門』

日本人のためのイスラエル入門 (ちくま新書) 作者:洋, 大隅 発売日: 2020/03/06 メディア: 新書 著者はアカデミックな人物ではなく、外務省に入って在イスラエル日本大使館公使を数年間務めた経験のある外交官。というわけでこの本の内容もアカデミックなも…

ひとこと感想:『家族と仕事:日本はなぜ働きづらく、産みにくいのか』

仕事と家族 - 日本はなぜ働きづらく、産みにくいのか (中公新書) 作者:筒井 淳也 発売日: 2015/05/22 メディア: 新書 日本社会の少子化の原因を、日本の労働・雇用の環境や福祉制度などの特殊性に注目しながら分析する本。少子化の解決には男女共働きと育児…

ひとこと感想:『ルポ:技能実習生』

●『ルポ:技能実習生』 ルポ 技能実習生 (ちくま新書) 作者:澤田晃宏 発売日: 2020/05/15 メディア: Kindle版 世間では「奴隷労働」とか「騙されて日本に連れてこられた」というイメージの多い技能実習生制度だが、主にベトナムの技能実習生制度を扱ったこの…

読書メモ:『民主主義は終わるのか:瀬戸際に立つ日本』

民主主義は終わるのか 瀬戸際に立つ日本 (岩波新書) 作者:山口 二郎 発売日: 2020/02/27 メディア: Kindle版 民主党のブレーンでもあった左派的な政治学者が書いた本で、1990年代以降の日本の政治とか民主主義とかの問題点をまとめつつ、安倍政権を痛烈…

ひとこと感想:『働く女子のキャリア格差』&『若者は社会を変えられるか?』

●『働く女子のキャリア格差』 働く女子のキャリア格差 (ちくま新書) 作者:祥子, 国保 発売日: 2018/01/10 メディア: 新書 タイトルからして様々な属性の職業選択や出世に関する格差(地方と東京ではこんなに違う、大卒と非大卒とではこんなに違う、みたいな…

リバタリアンはフレンドリーで温かい白人男性ばっかり?(読書メモ:『リバタリアニズム:アメリカを揺るがす自由至上主義』)

リバタリアニズム アメリカを揺るがす自由至上主義 (中公新書) 作者:渡辺靖 発売日: 2019/05/17 メディア: Kindle版 タイトル通りリバリアニズムについて書かれた本であるが、政治哲学や経済学などにおける理論としてのリバタリアニズムについて書いた本では…

「トランプ支持者の白人労働者」について書かれた本をまとめて読んでみて…

ヒルビリー・エレジー~アメリカの繁栄から取り残された白人たち~ 作者:J・D・ヴァンス 発売日: 2017/03/24 メディア: Kindle版 新たなマイノリティの誕生―声を奪われた白人労働者たち 作者:ジャスティン・ゲスト 発売日: 2019/05/31 メディア: 単行本 壁…

「再分配に関心はあるが、政党には無関心」(読書メモ:『アンダークラス:新たな下層階級』)

アンダークラス (ちくま新書) 作者:健二, 橋本 発売日: 2018/12/06 メディア: 新書 同じ著者の『新・日本の階級社会』は以前に読んだが、その本から内容はあまり変わっていない。社会科学らしく統計情報が大量に出てくる本ではあるのだが、大量に出てくる図…

読書メモ:『アメリカを動かす「ホワイト・ワーキング・クラス」という人々』②

アメリカを動かす『ホワイト・ワーキング・クラス』という人々 世界に吹き荒れるポピュリズムを支える“真・中間層”の実体 作者:ジョーン・C・ウィリアムズ 発売日: 2017/08/25 メディア: 単行本 ●ワーキング・クラスの人種差別 カナーシーのワーキング・クラ…

読書メモ:『金持ち課税:税の公正をめぐる経済史』

金持ち課税 作者:ケネス・シーヴ,デイヴィッド・スタサヴェージ 発売日: 2018/06/09 メディア: 単行本 公正さには多くの異なる意味があるだろうが、課税における公正さには共通する特徴がひとつある。それは、人びとは平等に扱わなければならないという考え…

「ていねいな暮らし」のなにが悪い?

www.webchikuma.jp 大塚英志による上記の記事は、はてブでも先日から人気記事となっておりおおむね好意的に受け止められているようだが、わたしは読んでいてモヤモヤ……というよりも「うんざり」という感情を抱いてしまった。 なので、わたしが共感するブコメ…

読書メモ:『経済政策で人は死ぬか?:公衆衛生学から見た不況対策』

経済政策で人は死ぬか?: 公衆衛生学から見た不況対策 作者:デヴィッド スタックラー,サンジェイ バス 発売日: 2014/10/15 メディア: 単行本 邦訳が出たのは6年前であるが、コロナ禍により再注目されている。わたしは数年前にこの本をいちど通読していたが、…

フランシス・フクヤマの『IDENTITY 尊厳の欲求と憤りの政治』

IDENTITY (アイデンティティ) 尊厳の欲求と憤りの政治 作者:フランシス・フクヤマ 出版社/メーカー: 朝日新聞出版 発売日: 2019/12/06 メディア: 単行本 この本は途中まで原著で読んでいたのだが、全14章のうち5章まで読んだ時点で放置しているうちに翻訳…

読書メモ:サミュエル・ハンティントン『分断されるアメリカ』

(2018年の1月に別ブログで書いた記事だが、別ブログの方は閉鎖してしまったので再掲。この次にアップするフランシス・フクヤマの『IDENTITY 尊厳の欲求と憤りの政治』の感想記事に関係するので、このブログに再掲載することにした。) 分断されるアメリカ (…

キムリッカによる動物の権利論(読書メモ:『人と動物の政治共同体 - 「動物の権利」の政治理論』)

人と動物の政治共同体-「動物の権利」の政治理論 作者:スー・ドナルドソン,ウィル・キムリッカ,Sue Donaldson,Will Kymlicka 出版社/メーカー: 尚学社 発売日: 2016/12/26 メディア: 単行本(ソフトカバー) この本は院生時代に原著を読んでおり、邦訳が出版…

選挙制のエリート主義、抽選制と熟議民主主義(読書メモ:『選挙制を疑う』)

選挙制を疑う(サピエンティア) (サピエンティア 58) 作者: ダーヴィッド・ヴァン・レイブルック,岡?晴輝,ディミトリ・ヴァンオーヴェルベーク 出版社/メーカー: 法政大学出版局 発売日: 2019/04/05 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 最近は感想…

フランシス・フクヤマのアイデンティティ論(1)

Identity: The Demand for Dignity and the Politics of Resentment 作者: Francis Fukuyama 出版社/メーカー: Farrar Straus & Giroux 発売日: 2018/09/11 メディア: ハードカバー この商品を含むブログを見る 『歴史の終わり』を書いたことで有名なフクヤ…

護心術としてのレトリック(読書メモ:『論証のレトリック - 古代ギリシアの言論の技術』)

論証のレトリック―古代ギリシアの言論の技術 (講談社現代新書) 作者: 浅野楢英 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 1996/04 メディア: 新書 購入: 6人 クリック: 69回 この商品を含むブログ (2件) を見る 古代ギリシャのレトリックを概説した本。論理学的な内…

スポーツチームへの支持と政治的党派性の共通点、ほか(読書メモ:『反共感論:社会はいかに判断を誤るか』)

反共感論―社会はいかに判断を誤るか 作者: ポール・ブルーム,高橋洋 出版社/メーカー: 白揚社 発売日: 2018/02/02 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (2件) を見る この本のメインとなる論旨については、以前に別の記事で紹介しているので、今回は細か…

「どこに投票したか」に対する批判は許されないか?

投票日から一ヶ月くらい経ってしまったが、思うところあって雑感をいくつか。 ・ここ数年間の選挙では、右派が多くの議席を獲得して左派は大して議席を獲得できない、という結果になることが定番だ。自民党は毎度のように圧勝するし、大阪は相変わらず維新の…

文系インテリが進歩や科学を嫌う理由(「啓蒙をめぐる戦争」の要約【その4】)

前回と前々回と前々々回の続き。 これまでは『現代の啓蒙(Enlightment Wars)』に寄せられた具体的な批判に答えてきたピンカーだが、記事の後半では「『現代の啓蒙』はなぜ一部の人々をここまで猛烈に怒らたのか?」という疑問を呈して、自らそれに答えよう…

精神病や自殺者の数は世界的に増えている?トランプやブレクジットは啓蒙主義が終わった証拠?(スティーブン・ピンカー「啓蒙をめぐる戦争」の要約【その2】)

前回の記事の続き。ほんとは前半と後半の2つに分けるつもりだったがしんどいので3つに分けることにした(4つになるかも)。 批判その5:トランプやブレクジット、権威主義的ポピュリズムの隆興はどう説明する?それらは、啓蒙主義の時代が終わり進歩が逆行…

「啓蒙をめぐる戦争」(『Enlightment Now』への批判に対するスティーブン・ピンカーの応答)【その1】

2018年の初頭に出版されたスティーブン・ピンカーの新著『Enlightenment Now: The Case for Reason, Science, Humanism, and Progress (現代の啓蒙:理性、科学、人道主義、進歩を擁護する)』は、多くの批判にさらされてきた。タイトルの通り合理主義や科…