なんかこのタイミングで「2023年おすすめ本」の記事を書いたら多くの人に読んでもらえそうな流れなので、書いておきます(それぞれの本の詳細な感想や書評は各記事へのリンクをクリックしてください)。
■今年のベスト本
今年に発売されたなかでの個人的なベスト本はポール・ケリーの『リベラリズム:リベラルな平等主義を擁護して』です。
大晦日まで新宿ブックファーストの「名著百選 2023」フェアコーナーにわたしのコメント付きで並べられているはずなので、関東に住んでいる方は年内に新宿まで急いで行って購入してください。
【ブックファースト新宿店様「名著百選2023」フェア】ポール・ケリー『リベラリズム』が選ばれました🎉推薦者は気鋭の批評家ベンジャミン・クリッツァー氏、「自由主義の真髄がこの一冊でわかる」と高評いただいています!1冊以上購入で、それ自体読みごたえ満点の冊子ももらえる!お店へ急げ🏃 pic.twitter.com/WI4mXl4n7b
— 新評論編集部 (@ShinhyoronE) 2023年11月17日
■中公新書
新書本をいっぱい読みながらも「なんか新書本って内容薄いのが多すぎていくら読みやすくても読むだけ時間のムダだな」と感じたり、とくにちくまプリマー新書なんかには「いくら若い人向けだからといってこんな凡庸でつまらないお説教をよく書けるもんだな」と思ったりしてひとりでうんざりしていることが多いわたしだけれど、今年は、新書のなかでも中公新書はかなり内容が充実していてレベルが高く外れが少ないということに気付かされました(読書家の人々ならとっくの昔から知っていることだろうけど)。
今年に発売したものとしては『J・S・ミル』と『ジェンダー格差』をしっかり読みました。
また、昨年以前に発売されたものとしては12月に読んだ『マスメディアとは何か』は内容がかなり充実しており、ひとつの学問の入門書を読んだくらいの満足感が抱けた。ネット民こそが読むべき本です。
『リベラルとは何か』もまあまあ良かったです。
記事はまだ書けていないけど『ジョン・ロールズ』もヨシ。
■その他新書
中公新書ほどではないけど下記の本にも考えさせられました。
■ Very Short Introdutionシリーズの翻訳
くちなしさんの記事に触発されてしまい、今年の夏頃からは唐突にVery Short Introdutionシリーズの翻訳本を集めていっぱい読むというプロジェクトを行なっていました。Very Short Introdutionは玉石混合ではあるのだが(大御所の書いた本ほどクソになりやすいという妙な傾向がある)、よい本はとてもよい。
今年に邦訳が出版されたものとしては『シティズンシップ』と『懐疑論』が内容も充実しているしいろいろと考えさせられたりすることも多くてよかったです。
『福祉国家』はもはや名著の域。
哲学系では『法哲学』『古代哲学』『マルクス』あたりがよかったです。
『移民』や『ポピュリズム』なんかも社会問題のことを考えるきっかけとしてよいと思いました。
これからもどんどん邦訳を出してください。
■哲学
昨年出版の『アゲインスト・デモクラシー』はゴリゴリの政治哲学の学術書でありながら、主張はキャッチーだし文章も平易で読みものとしても面白い本でした。
昨年末出版の『自由意志対話』も哲学の伝統的なテーマでありながら「自己責任論」をはじめとした現代社会の問題にも関わっていて有意義でした(その前に『そうしないことはありえたか?:自由論入門』で予習するのもオススメ)。
2月に出版された『アニマル・スタディーズ 29の基本概念』は動物倫理を勉強している者としては見逃せない本で、6つも記事を書きました。翻訳についてケチを付けられたりもしている本だけど、翻訳されたこと自体がそもそも喜ばしいと思います。
あとは出版されたのはだいぶ前だけど『平等とは何か』とか『感情と法』とか『多文化主義時代の市民権』などの分厚い学術書も読みました。
これらの本の副読本として『平等主義の哲学』とか『一冊でわかる 感情』なんかも読んだ。
今年に出版された哲学書としては『なぜ美を気にかけるか』も読みやすくてよかったです(記事では批判的に書いているけど)。
ことしは「やっぱりフェミニズムの考え方も重要だよなあ」とか「アンチフェミってやっぱりロクでもないな」とか思わされることが多々あったというのもあり、またフェミニズム倫理に関して学会発表したというのもあって、フェミニズムの本も折に触れて読みました。……でも記事を読み返すと批判や文句ばっかり書いているな。
『笑いと嘲り』は「からかいの政治学」から流れで読みました。
■洋書
忙しいのもあって、きちんと読めて書評をかけたのは2冊だけ。でもどちらも有意義な本なので、翻訳されることを希望します。
ところで1月2日(火)に誕生日を迎えますので誕生日プレゼントになんか買ってください(クリスマスプレゼントも可)。