学問論
マスメディアとは何か 「影響力」の正体 (中公新書) 作者:稲増一憲 中央公論新社 Amazon マスメディアを研究する分野といってもさまざまにあるだろうが、本書の内容は「マスメディアが人々にもたらす影響をデータを用いて科学的に検証する研究分野」である「…
●『体育がきらい』 体育がきらい (ちくまプリマー新書) 作者:坂本拓弥 筑摩書房 Amazon 著者は大学で体育やスポーツを教えており、また「体育哲学」という研究を行なっているそうだ。本書で哲学っぽいことが書かれるのは終盤になってからだが、身体を通じて…
「心のクセ」に気づくには ――社会心理学から考える (ちくまプリマー新書) 作者:村山綾 筑摩書房 Amazon 「公正世界仮説」についてはいまや多くの人が知っていることだろう(小賢しいネット民好みの理論でもあるし)。しかし公正世界仮説(本書では公正世界信…
感情と法―現代アメリカ社会の政治的リベラリズム 作者:マーサ ヌスバウム 慶應義塾大学出版会 Amazon 前回の記事でも触れたように、『感情と法」の第2章と第3章では、おおむね「嫌悪感は不適切で理に適っていない感情だから法律に組み込んではいけないが、…
フェミニズムズ――グローバル・ヒストリー 作者:ルーシー・デラップ 明石書店 Amazon 本書の目的や、本書における「フェミニスト」や「フェミニズム」の定義は下記の通り。 本書ではフェミニストおよび活動家の女性たちとナショナリズム、宗教教義、帝国主義…
なぜ美を気にかけるのか: 感性的生活からの哲学入門 作者:ドミニク・マカイヴァー・ロペス,ベンス・ナナイ,ニック・リグル 勁草書房 Amazon 『なぜ美を気にかけるのか』は美学の入門書でもあるが、そのなかでも「美的価値」や「美的感性」「美的生活」の問題…
人生の意味とは何か (フィギュール彩) 作者:テリー イーグルトン 彩流社 Amazon Very Short Introduction シリーズの邦訳書を紹介するシリーズ(カテゴリを新設しました)。 U -NEXTの余っていたポイントを使ってビル・ナイ主演の『生きる LIVING』を観たと…
図書館で借り、出退勤の電車で流し読みした新書本たち。どの本もdisることにはなるけれど、ちゃんと読めてはいないです。 悪口ってなんだろう (ちくまプリマー新書) 作者:和泉悠 筑摩書房 Amazon 「「からかい」の政治学」や『笑いと嘲り』を読んだ流れで、…
『福祉国家』、『ポピュリズム』、『法哲学』、『マルクス』、『古代哲学』などに続いてVery Short Introduction シリーズの邦訳書を紹介するシリーズ。 哲学がわかる 懐疑論──パラドクスから生き方へ 作者:ダンカン・プリチャード 岩波書店 Amazon 本書の冒…
古代哲学 (〈1冊でわかる〉シリーズ) 作者:ジュリア アナス 岩波書店 Amazon 『福祉国家』、『ポピュリズム』、『移民』、『法哲学』、『マルクス』などに続いてVery Short Introduction シリーズの邦訳書を紹介するシリーズ。 『一冊でわかる 古代哲学』の…
『福祉国家』、『ポピュリズム』、『移民』、『法哲学』、『マルクス』などに続いてVery Short Introduction シリーズの邦訳書を紹介するシリーズ。 今回はすばる舎から出ている『14歳から考えたい』シリーズのうち3冊を一気に流し読みしたので、ごく短い感…
市民的抵抗:非暴力が社会を変える 作者:エリカ・チェノウェス 白水社 Amazon 『福祉国家』、『ポピュリズム』、『移民』、『法哲学』、『マルクス』、『貧困』と、最近のこのブログではVery Short Introduction シリーズの邦訳書を紹介し続けているが、今回…
『福祉国家』、『ポピュリズム』、『移民』、『法哲学』、『マルクス』、『貧困』に引き続きオックスフォードのVery Short Introduction シリーズの邦訳書を紹介するシリーズ第七弾。ただし今回紹介する『デモクラシー』と『権威主義』はどっちもあまり良い…
14歳から考えたい 貧困 (A Very Short Introduction) 作者:フィリップ・ジェファーソン すばる舎 Amazon 『福祉国家』、『ポピュリズム』、『移民』、『法哲学』、『マルクス』に引き続きオックスフォードのVery Short Introduction シリーズの邦訳書を紹介…
ロールズ正義論とその周辺―コミュニタリアニズム、共和主義、ポストモダニズム 作者:渡辺 幹雄 春秋社 Amazon マイケル・サンデルの『実力も運のうち』は案の定ベストセラーになって、この度は文庫版も出版された*1。しかし、『実力も運のうち』でなされてい…
はじめてのフェミニズム (ちくまプリマー新書) 作者:デボラ・キャメロン,向井和美 筑摩書房 Amazon 『福祉国家』、『ポピュリズム』、『移民』、『法哲学』に引き続きオックスフォードのVery Short Introduction シリーズの邦訳書を紹介するシリーズ第五弾………
法哲学 (〈1冊でわかる〉シリーズ) 作者:レイモンド・ワックス 岩波書店 Amazon 『福祉国家』、『ポピュリズム』、『移民』に引き続きオックスフォードのVery Short Introduction シリーズの邦訳書を紹介するシリーズ第四弾。今回は『法哲学』である。 『一…
ポピュリズム:デモクラシーの友と敵 作者:カス・ミュデ,クリストバル・ロビラ・カルトワッセル 白水社 Amazon 昨日の『福祉国家』に引き続き、オックスフォードのVery Short Introduction シリーズの邦訳書を紹介するシリーズ第二弾*1。 ポピュリズムとはそ…
原理の問題 作者:ロナルド・ドゥオーキン 岩波書店 Amazon 政治哲学っぽい『平等とは何か』や議論がシンプルな『自由と法』はまだ読めたのだけれど、この本は法哲学という個人的に馴染みのない分野であるうえに議論もやたらとくどくどとしており、3章ぶん(…
ジェンダー格差-実証経済学は何を語るか (中公新書 2768) 作者:牧野 百恵 中央公論新社 Amazon 「ジェンダー格差」と「実証経済学」の組み合わせに惹かれたこと、そして中公新書というレーベルの信頼度から、発売日直後に購入。 他にも読んでいる本はあるん…
自由の法―米国憲法の道徳的解釈 作者:ロナルド・ドゥウォーキン,文彦, 石山 木鐸社 Amazon 家庭の事情(飼い始めた猫の夜泣きがひどくて睡眠に支障が出ているなど)のために執筆時間はもちろんのこと読書に割ける時間もかなり目減りしている状況なのだが、今…
Liberalism: The Basics (English Edition) 作者:Charvet, John Routledge Amazon 次の本の執筆に向けて昨年からリベラリズムのことを勉強し続けているうちに気が尽かされたのだが、哲学や理論としてのリベラリズムの入門書は意外なほどに少ない。 中公新書…
J・S・ミル 自由を探究した思想家 (中公新書) 作者:関口正司 中央公論新社 Amazon この新書に関しては先日に前夜祭的な記事を書いている。 davitrice.hatenadiary.jp また、『自由論』についてはこのブログやWebメディアに掲載した記事などでもたびたび登…
哲学がわかる シティズンシップ: 民主主義をいかに活用すべきか 作者:リチャード・ベラミー 岩波書店 Amazon シティズンシップ(Citizenship) という単語は様々に訳せられる言葉であり、単に「市民であること」を意味する場合もあれば、「市民権」「公民権…
哲学人―生きるために哲学を読み直す〈上〉 作者:ブライアン マギー 日本放送出版協会 Amazon 著者のブライアン・マギーはオックスフォードやケンブリッジを学んだ経歴を持つが、アカデミシャンや職業的な「プロ哲学者」ではなく、あくまで在野の人間としてテ…
ヘイト・スピーチという危害 作者:ジェレミー・ウォルドロン みすず書房 Amazon 前回の記事でも紹介したジェレミー・ウォルドロンの『ヘイト・スピーチという危害』では、表現の自由を擁護する議論の古典であり現代でも頻繁に参照されているジョン・スチュア…
davitrice.hatenadiary.jp 前回に引き続き、来たる6月13日の「左からのキャンセル・カルチャー論」トークイベントに向けて、表現の自由というトピックに関して復習中*1。 最近に読んだり再読したりした本は以下の通り。 ヘイト・スピーチという危害 作者:…
出勤前の短い時間なのでメモ的な記事。 www.project-syndicate.org 昨年の11月に倫理学者のピーター・シンガーが書いたコラム。イ ーロン・マスクがTwitterを買収したことに言及しながら、自身が編集委員をやっている雑誌 Journal of Controversial Ideas …
ケアの倫理と共感 作者:マイケル・スロート 勁草書房 Amazon この本は邦訳の発売直後、2021年の年末に当時もらった図書カードで購入済だったのだが積んでいたところ、先日の日本哲学会のワークショップに向けて、『もうひとつの声で』に続いて読んだ、という…
6月13日(火)の19:30から、東京の阿佐ヶ谷ロフトAにて、「左からのキャンセル・カルチャー論」と題したトークイベントをやります。 トークの相手は文芸批評家在野研究者の荒木優太さん、『情況』編集長で2022年のキャンセル・カルチャー特集号も担…