道徳的動物日記

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生物学、動物行動学など

最近読んだ本シリーズ:『体育がきらい』&『サイエンス超簡潔講義 動物行動学』&『サイエンス超簡潔講義 うつ病』

●『体育がきらい』 体育がきらい (ちくまプリマー新書) 作者:坂本拓弥 筑摩書房 Amazon 著者は大学で体育やスポーツを教えており、また「体育哲学」という研究を行なっているそうだ。本書で哲学っぽいことが書かれるのは終盤になってからだが、身体を通じて…

「アニマル・ウェルフェア」の多様な意味(読書メモ:『アニマル・スタディーズ 29の基本概念』⑤)

アニマル・スタディーズ29の基本概念 平凡社 Amazon 第29章「ウェルフェア」の執筆者はクレア・パルマーとぺテル・サンデュ。どちらも倫理学者であり、前者についてはこのブログでも過去に何度か取り上げている。また、両者はコンパニオン・アニマルの倫理…

「利他」は「理性」に由来する(読書メモ:『The Kindness of Strangers』)

The Kindness of Strangers: How a Selfish Ape Invented a New Moral Code (English Edition) 作者:McCullough, Michael E. Oneworld Publications Amazon ここではざっくりとしか紹介しないので、各章ごとのちゃんとした要約はShoreBirdさんのほうを参照し…

社会性の収斂進化、「社会性」は「善」であるのか?(読書メモ:『ブループリント:「よい未来」を築くための進化論と人類史』)

ブループリント:「よい未来」を築くための進化論と人類史(下) 作者:ニコラス・クリスタキス ニューズピックス Amazon この本のメインの主張である「青写真(社会性一式)」に関する議論などは先日の記事で紹介したので、今回は、感想とか気に入った部分の引…

愛情と結婚の進化論と人類史

ブループリント:「よい未来」を築くための進化論と人類史(上) (NewsPicksパブリッシング) 作者:ニコラス・クリスタキス ニューズピックス Amazon 『ブループリント:「よい未来」を築くための進化論と人類史』では、基本的には進化心理学や文化進化論などの…

『男にいいところはあるのか?:文化はいかに男性を搾取して繁栄するか』

Is There Anything Good About Men?: How Cultures Flourish by Exploiting Men (English Edition) 作者:Baumeister, Roy F. 発売日: 2010/08/12 メディア: Kindle版 前回の記事でも紹介した、心理学者のロウ・バウマイスターの著作『Is There Anything Good…

読書メモ:『恋人選びの心:性淘汰と人間性の進化』

恋人選びの心―性淘汰と人間性の進化 (1) 作者:ジェフリー・F.ミラー 発売日: 2002/07/15 メディア: 単行本 davitrice.hatenadiary.jp 『Virtue Signaling』の書評で書いたようにわたしはジェフリー・ミラーは文筆家としてはあまり好ましく思っていないところ…

読書メモ:『猫の精神生活がわかる本』

猫の精神生活がわかる本 作者:トーマス・マクナミー 出版社/メーカー: エクスナレッジ 発売日: 2017/12/24 メディア: 単行本(ソフトカバー) 作家である著者が、愛猫の「オーガスタ」との出会いから共同生活、オーガスタの死による別れを綴りながら、猫の心…

倫理学の理論や知識と、実際の生活との齟齬や乖離について(読書メモ:『哲学者とオオカミ』)

哲学者とオオカミ―愛・死・幸福についてのレッスン 作者:マーク ローランズ 出版社/メーカー: 白水社 発売日: 2010/04/01 メディア: 単行本 哲学者である著者がオオカミの子どもを引き取って「ブレニン」と名付けて、アメリカやアイルランド、イギリスにフラ…

進化心理学はなぜ批判されるのか?

quillette.com 上記のQuilletteの記事を要約紹介しつつ、雑感を書く。…というか、ダラダラと長ったらしい記事なので、思い切って要点や特徴的な点だけ紹介する。 上記の記事では、デビッド・バスとウィリアム・フォンヒッペルという二人の進化心理学者が行っ…

科学的知識に基づいた動物倫理:ゲイリー・ヴァーナーのパーソン論

動物について言及する倫理学的主張の多くは「人間だけでなく動物も道徳的地位を持つ」「人間だけでなく動物も道徳的配慮の対象になる」と主張するが、「人間と動物は全く全く同じ道徳的地位を持つ」とは主張しない。例えば人間と猫を比較する場合には、多く…

「昆虫に意識はあるか?」 by ピーター・シンガー

www.project-syndicate.org 今回紹介する記事は、Project Syndicateに掲載された倫理学者ピーター・シンガーのコラム「Are Insects Conscious?」。 「昆虫に意識はあるか?」 by ピーター・シンガー 昨年の夏、私が栽培していたルッコラの葉にモンシロチョウ…

「植物は痛みを感じるか? 生物学者に訊いてみた。」

アメリカのVICEというwebページに掲載された、植物学者のダニエル・チャモヴィッツ氏へのインタビュー記事を私訳。 チャモヴィッツ氏の著書は翻訳もされており、植物が痛みを感じるかということや植物への倫理的配慮などの論点は160ー164ページにて触…

「イルカは馬鹿ではない」 by フィリッパ・ブレイク

今回紹介する記事の著者は、クジラやイルカを研究する生物学者フィリッパ・ブレイクである。彼女はクジラやイルカの保護活動にも関わっているようだ。編著の『Whales and Dolphins: Cognition, Culture, Conservation and Human Perceptions』はクジラやイル…

『世界一賢い鳥、カラスの科学』

世界一賢い鳥、カラスの科学 作者: ジョン・マーズラフ,トニー・エンジェル,東郷えりか 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2013/09/13 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 『世界一賢い鳥、カラスの科学』 2013年 河出書房新社 著:ジョ…