経済学
The Ethics of Capitalism: An Introduction (English Edition) 作者:Halliday, Daniel,Thrasher, John Oxford University Press Amazon さきほどの記事で書いたように、この4月は引越しに伴う作業と会社の仕事とでなかなか読書・執筆の時間が取れなかった…
自己責任の時代――その先に構想する、支えあう福祉国家 作者:ヤシャ・モンク みすず書房 Amazon タイトルが想像できるように、近年に蔓延している(とされる)、いわゆる「自己責任論」を批判する本。 また、著者のヤシャ・モンクの教師のひとりがマイケル・…
平等主義の哲学: ロールズから健康の分配まで 作者:巌, 広瀬 勁草書房 Amazon 知っての通り、ジョン・ロールズは『正義論』で「社会的・経済的不平等は、それが最も恵まれない人たちにとって利益になる時にのみ正当化する」とする、「格差原理」を提案した。…
平等とは何か 作者:ロナルド・ドゥウォーキン 木鐸社 Amazon もし保険というものが利用可能だとすれば、これは自然の運と選択の運を連結する役目を果すことになるだろう。というのも、災害保険に入ったり、これを拒否することは計算された賭けと言えるからで…
「正しい政策」がないならどうすべきか: 政策のための哲学 作者:ウルフ,ジョナサン 勁草書房 Amazon 動物実験やギャンブルにドラッグなどの規制、公共交通機関の安全性や刑罰や健康など、様々なトピックに関する政策について、哲学・倫理学の視点から何が言…
改訂第二版〈学問〉の取扱説明書 作者:仲正昌樹 作品社 Amazon 久しぶりに写経っぽい読書メモ。 「新自由主義」という言葉自体にも気をつけなくてはいけません。日本語の「〜主義」、あるいは英語の<〜ism>という言い方はすごく曖昧です。「マルクス主義」…
「格差の時代」の労働論―ジョン・ロールズ『正義論』を読み直す (いま読む!名著) 作者:福間 聡 現代書館 Amazon …労働や生産性を人間にとって最も重要な価値であると規定し、そうした価値を促進すように社会の諸制度は編成されることを唱導する「労働中心主…
資本主義が嫌いな人のための経済学 作者:ジョセフ・ヒース NTT出版社 Amazon ● 第7章「公正価格の誤謬」から。 あえて私の考えを言えば、左派または人類の味方とすら辞任する御仁にとって、豊かな工業化社会で食住をあがえない人がいるのはいるのは許し…
資本主義が嫌いな人のための経済学 作者:ジョセフ・ヒース NTT出版社 Amazon 『資本主義が嫌いな人のための経済学』の第10章のテーマは「同一賃金」であり、「貧困に対策するためには最低賃金を上げなければいけない」や「男女の賃金格差を是正するために…
新版 現代政治理論 作者:W. キムリッカ 日本経済評論社 Amazon 昨日に引き続き、キムリッカの『現代政治理論』から気になったところを引用。第5章「マルクス主義」から。 …マルクス主義による批判の核心は、むしろ法的共同体の理念それ自体にたいする反論で…
資本主義が嫌いな人のための経済学 作者:ジョセフ・ヒース NTT出版社 Amazon まずは「エピローグ」から引用。 若かりしころの私は、社会正義の問題など簡単だと考えていた。世界には二種類の人間がーー根っから利己的な人間と、もっと寛大で思いやりのあ…
啓蒙思想2.0―政治・経済・生活を正気に戻すために 作者:ジョセフ・ヒース NTT出版 Amazon 先日の記事でも述べたように、現代社会は、わたしたちの報酬系や認知バイアスの欠陥をついて健康と時間(とお金)を奪うような商品やシステムで溢れており、そういう…
啓蒙思想2.0―政治・経済・生活を正気に戻すために 作者:ジョセフ・ヒース NTT出版 Amazon 『啓蒙思想2.0』の主なテーマは「非合理化する政治」であるが、現代社会では、政治に限らずわたしたちの「生活」全般が、非合理なものとなっている。 これまでの記事…
IDENTITY (アイデンティティ) 尊厳の欲求と憤りの政治 作者:フランシス・フクヤマ 朝日新聞出版 Amazon フランシス・フクヤマの『IDENTITY:尊厳の欲求と憤りの政治』はこのブログでも何度か扱ったが、あまり高く評価してきたわけではなかった*1。しかし、ポ…
きみの脳はなぜ「愚かな選択」をしてしまうのか 意思決定の進化論 (KS一般書) 作者:ダグラス・ T・ケンリック,ヴラダス・グリスケヴィシウス 講談社 Amazon 同じ著者のダグラス・ケンリックが書いている『野蛮な進化心理学』は名著なんだけれど*1、こちらは…
「生きにくさ」はどこからくるのか—進化が生んだ二種類の精神システムとグローバル化 作者:山祐嗣 新曜社 Amazon 著者は心理学者で、ほかにも『日本人は論理的に考えることが本当に苦手なのか』などの著作がある。 『「生きにくさ」はどこからくるのか』につ…
gendai.ismedia.jp なんとなく上記の記事を眺めていたら色々とひっかかるところがあり、以前からのわたしの問題意識や関心とも関連している内容でもあるので、思うところをメモしていく*1。 現代社会における「男らしさ」は多様化していますが、それでも「男…
資本主義だけ残った――世界を制するシステムの未来 作者:ブランコ・ミラノヴィッチ みすず書房 Amazon 『資本主義だけ残った』では、アメリカを代表とする「リベラル能力資本主義」と中国を代表とする「政治資本主義」、現代の社会に存在するふたつの形の資本…
暴力と不平等の人類史―戦争・革命・崩壊・疫病 作者:ウォルター・シャイデル 東洋経済新報社 Amazon かなり長くて重たい本。経済史の本でありがちな、大量の具体例を紹介しながら同じような話が何度でも何度でも繰り返される内容なので、細かい部分は流し読…
21世紀の啓蒙 上:理性、科学、ヒューマニズム、進歩 作者:スティーブン・ピンカー 草思社 Amazon 原著が出たあとに寄せられた反論に対してピンカーが行なった再反論を紹介したり*1、現代ビジネスの記事でピンカーについて書いたりしたけれど*2、『21世紀の…
実力も運のうち 能力主義は正義か? 作者:マイケル サンデル 発売日: 2021/04/14 メディア: Kindle版 前回の記事で論じたように、サンデルによる能力主義批判の核心は、能力主義が人々の「心情」に与える影響についての議論にある。 生まれ落ちた環境のちが…
実力も運のうち 能力主義は正義か? 作者:マイケル サンデル 発売日: 2021/04/14 メディア: Kindle版 「能力主義」に対する批判には、二つのパターンが考えられる。「不徹底な能力主義」に対する批判と、「能力主義」そのものに対する批判だ。 学問的なもの…
Is There Anything Good About Men?: How Cultures Flourish by Exploiting Men (English Edition) 作者:Baumeister, Roy F. 発売日: 2010/08/12 メディア: Kindle版 前回の記事でも紹介した、心理学者のロウ・バウマイスターの著作『Is There Anything Good…
しあわせ仮説 作者:ジョナサン・ハイト 発売日: 2011/07/06 メディア: 単行本 『しあわせ仮説:古代の知恵と現代科学の知恵』の第10章から、仕事(労働)に関する議論を紹介しよう。 カール・マルクスによる資本主義批判は、産業革命が、職人と生産物とのあ…
「経済学101」では、政治や経済について論じるカナダの哲学者、ジョセフ・ヒースのブログも訳されている。 econ101.jp econ101.jp 上記の記事ではどちらもかなり重要なことが書かれていると思うが、その一方で(特に日本の読者にとっては)さして重要でな…
ブルシット・ジョブ――クソどうでもいい仕事の理論 作者:デヴィッド・グレーバー 発売日: 2020/07/30 メディア: 単行本 はじめに断っておくと、わたしはこの本をフラットな状態で読みはじめたわけではない。『隠された奴隷制』でデヴィッド・グレーバー(やジ…
反逆の神話:カウンターカルチャーはいかにして消費文化になったか 作者:ジョセフ・ヒース,アンドルー・ポター 発売日: 2014/09/24 メディア: 単行本(ソフトカバー) カウンターカルチャー的な分析からは、決まったパターンが浮かびあがってくる。社会問題は…
davitrice.hatenadiary.jp econ101.jp 先ほどの記事でジョセフ・ヒースの「『批判的』研究の問題」を取り上げたことなので、この記事から面白いところをいくつか引用しよう。 さっき言ったように,「批判的社会科学」の志は,たんに規範的な決意に導かれた社…
格差は心を壊す 比較という呪縛 作者:リチャード ウィルキンソン,ケイト ピケット 発売日: 2020/04/03 メディア: Kindle版 タイトル通り、経済の格差がわたしたちの心や健康にもたらす悪影響について論じて、経済格差が広がると社会的分断も広まって政治にも…
隠された奴隷制 (集英社新書) 作者:植村邦彦 発売日: 2019/08/23 メディア: Kindle版 本のタイトルはマルクスの『資本論』に出てくるキーワードであり、この本の内容もマルクス主義的なものだ。 第一章〜第三章では、ロックやモンテスキューからはじまってア…