道徳的動物日記

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歴史

読書メモ:『フェミニズムズ:グローバル・ヒストリー』(+『はじめてのフェミニズム』補足)

フェミニズムズ――グローバル・ヒストリー 作者:ルーシー・デラップ 明石書店 Amazon 本書の目的や、本書における「フェミニスト」や「フェミニズム」の定義は下記の通り。 本書ではフェミニストおよび活動家の女性たちとナショナリズム、宗教教義、帝国主義…

読書メモ:『一冊でわかる 古代哲学』&『哲学がわかる 中世哲学』

古代哲学 (〈1冊でわかる〉シリーズ) 作者:ジュリア アナス 岩波書店 Amazon 『福祉国家』、『ポピュリズム』、『移民』、『法哲学』、『マルクス』などに続いてVery Short Introduction シリーズの邦訳書を紹介するシリーズ。 『一冊でわかる 古代哲学』の…

読書メモ:『一冊でわかる デモクラシー』&『啓蒙とはなにか:忘却された〈光〉の哲学』

『福祉国家』、『ポピュリズム』、『移民』、『法哲学』、『マルクス』、『貧困』に引き続きオックスフォードのVery Short Introduction シリーズの邦訳書を紹介するシリーズ第七弾。ただし今回紹介する『デモクラシー』と『権威主義』はどっちもあまり良い…

「公共道徳」と「私的倫理」(読書メモ:『J・S・ミル:自由を探究した思想家』)

J・S・ミル 自由を探究した思想家 (中公新書) 作者:関口正司 中央公論新社 Amazon この新書に関しては先日に前夜祭的な記事を書いている。 davitrice.hatenadiary.jp また、『自由論』についてはこのブログやWebメディアに掲載した記事などでもたびたび登…

読書メモ:『分配的正義の歴史』

分配的正義の歴史 作者:フライシャッカー,サミュエル 晃洋書房 Amazon 数年前にも読んだことあるはずだが内容はまったく覚えていない。 思想史の本ではあるがその主張と主張と明快だ。現在では当たり前に思われている「(功績 meritではなく)必要性に基づい…

「利他」は「理性」に由来する(読書メモ:『The Kindness of Strangers』)

The Kindness of Strangers: How a Selfish Ape Invented a New Moral Code (English Edition) 作者:McCullough, Michael E. Oneworld Publications Amazon ここではざっくりとしか紹介しないので、各章ごとのちゃんとした要約はShoreBirdさんのほうを参照し…

フェミニズムの「むずかしさ」に向き合う(読書メモ:『むずかしい女性が変えてきた:あたらしいフェミニズム史』)

むずかしい女性が変えてきた――あたらしいフェミニズム史 作者:ヘレン・ルイス みすず書房 Amazon 出版社による紹介は下記の通り。 女性が劣位に置かれている状況を変えてきた女性のなかには、品行方正ではない者がいた。危険な思想に傾く者も、暴力に訴える…

不平等は避けられなさそうです(読書メモ:『暴力と不平等の人類史―戦争・革命・崩壊・疫病』)

暴力と不平等の人類史―戦争・革命・崩壊・疫病 作者:ウォルター・シャイデル 東洋経済新報社 Amazon かなり長くて重たい本。経済史の本でありがちな、大量の具体例を紹介しながら同じような話が何度でも何度でも繰り返される内容なので、細かい部分は流し読…

「自由」にケチをつけるな(読書メモ:『自由の命運 : 国家、社会、そして狭い回廊』)

[まとめ買い] 自由の命運 国家、社会、そして狭い回廊 作者:ダロン アセモグル,ジェイムズ A ロビンソン Amazon もう図書館に返却してしまって読み直せないので、浅い感想をメモ的に残しておく。 『自由の命運』は経済学の本(制度論の本)であり、様々な時…

読書メモ:『「勤労青年」の教養文化史』

「勤労青年」の教養文化史 (岩波新書) 作者:福間 良明 発売日: 2020/04/18 メディア: 新書 タイトル通り歴史(文化史)に関する本であり、歴史に関する本ってひとくちにまとめたり感想を書いたりするのが難しいものだが、この本は「プロローグ」に書かれてい…

「動物はおかずだ」デモに関して(2)

buzz-plus.com 出勤前に取り急ぎ、昨日の記事の続き。 「動物はおかずだデモ」はデモの名前からして「動物はごはんじゃないデモ」のカウンターである。また、単なるカウンターではなく、「動物はごはんじゃない」デモに対するパロディや皮肉を意識しているよ…

「動物の権利」と「人権」は対立する?

togetter.com くどいようだが、この件に関するはてな・Twitterなどでの反応を眺めての雑感。 今回の件に限らず、動物の権利運動に対する批判としてちらほら見られるのが、「動物に権利を与えると人権という概念の理念が損なわれる」あるいは「動物に対して道…

『歴史の終わり』はトランプの出現を予期していた?

歴史の終わり〈上〉歴史の「終点」に立つ最後の人間 作者: Francis Fukuyama,フランシスフクヤマ,渡部昇一 出版社/メーカー: 三笠書房 発売日: 2005/05 メディア: 単行本 購入: 8人 クリック: 277回 この商品を含むブログ (21件) を見る 1992年に出版さ…

ジョエル・モキール『経済発展の文化:近代経済の起源』

A Culture of Growth: The Origins of the Modern Economy (Graz Schumpeter Lectures) 作者: Joel Mokyr 出版社/メーカー: Princeton University Press 発売日: 2016/10/25 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 経済史学者のジョエル・モキール…

動物愛護運動は人間の苦痛から目を逸らすための運動?

階級としての動物―ヴィクトリア時代の英国人と動物たち 作者: ハリエットリトヴォ,Harriet Ritvo,三好みゆき 出版社/メーカー: 国文社 発売日: 2001/10 メディア: 単行本 クリック: 2回 この商品を含むブログ (4件) を見る 動物への配慮―ヴィクトリア時代精…

ヨハン・ノルベルグ『進歩:未来について前向きになるべき10の理由』

Progress: Ten Reasons to Look Forward to the Future 作者: Johan Norberg 出版社/メーカー: Oneworld Publications 発売日: 2016/09/01 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 『進歩:未来について前向きになるべき10の理由(Progress: Ten Re…

ナチスの理性は世界一?

ナチスというと、その科学技術力が注目されることが多い。私は軍事は全然詳しくないのだが、V2ロケットとかいうすごいミサイルを開発したらしいというくらいのことは知っているし、フィクションの中では月面に基地を作ったり爆散した少佐をサイボーグ化さ…

アメリカという実験/科学的手続きと民主主義

The Science of Liberty: Democracy, Reason, and the Laws of Nature 作者: Timothy Ferris 出版社/メーカー: Harper Perennial 発売日: 2011/02/08 メディア: ペーパーバック この商品を含むブログを見る 先の記事に引き続いて、ティモシー・フェリス著『…

フランシス・フクヤマによる、民主主義の発達過程についての議論

Political Order and Political Decay: From the Industrial Revolution to the Globalisation of Democracy 作者: Francis Fukuyama 出版社/メーカー: Profile Books Ltd 発売日: 2015/09/17 メディア: ペーパーバック この商品を含むブログを見る フランシ…

19世紀アメリカにおける子供の権利と動物の権利

humanitiesctr.cas2.lehigh.edu 前回に引き続き、動物愛護運動の歴史を書いた本に関する記事を紹介。 「政治的なケアと、子供と動物に対する配慮:歴史的視点」 (前略) 「感傷と野蛮:アメリカの歴史における動物と子供の境界を崩す」と題された講演の冒頭…

イギリスにおける動物愛護運動の歴史

www.csmonitor.com クリスチャン・サイエンス・モニター誌に掲載された書評を紹介する。 書評:『動物たちのために』 by ランディ・ドティンガ (Randy Dotinga) 数世紀前のイギリスで行われていた動物たちに対するショッキングな虐待は、歴史からは忘れら…

アメリカにおける動物愛護運動の歴史

www.csmonitor.com 今回紹介するのは、2014年の4月にクリスチャン・サイエンス・モニター誌のホームページに掲載された、アメリカの歴史家 ダイアン・ビアーズ(Diane Beers) へのインタビュー記事。 ビアーズはアメリカの動物愛護運動の歴史について…

「長い目で見れば、戦争は人類を安全にして豊かにしてきた」by イアン・モリス

www.washingtonpost.com 今回紹介するのは、2014年の4月に歴史家のイアン・モリス(Ian Morris)が Wshington Post に発表した記事で、自著『War! What is Good For ? : The Role of Conflict in Civilization, from Primates to Robots』 で行っている…

「なぜヨーロッパが世界を征服したのか?」  by フィリップ・T・ホフマン

www.foreignaffairs.com 今回紹介するのは、歴史学と経済学の教授であるフィリップ・T・ホフマン(Philip T Hoffman)が2015年の10月に Foreign Affairs に掲載した記事。同年に発売された自著の 『Why Did Europe Conquer the World ?(なぜヨーロッ…

「原爆の夏から70周年」 by マイケル・シャーマー(世界的な核兵器廃絶の展望についての議論)

www.scientificamerican.com 今回紹介するのは、マイケル・シャーマー(Michael Shermer)がサイエンティフィック・アメリカン(Scientific American)に掲載した記事「原爆の夏から70周年(The 70th Anniversary of the Summer of The Bomb)」。2015…

広島・長崎への原爆投下の是非についての、マイケル・シャーマーの議論

オバマ大統領が広島を訪問することや、そこで「謝罪」はしないであろうことの是非を巡って議論が起きているようだ。 最近読んでいたマイケル・シャーマーの『Moral Arc』のなかで、「ファットマンの道徳、リトルボーイをめぐる論争」という題の、広島・長崎…

「私たちは道徳的に賢くなっているのか?:IQの上昇、暴力の減少、経済的リベラリズムの関係」 by マイケル・シャーマー

reason.com 今回紹介するのは、心理学者で疑似科学批判者で無神論者のマイケル・シャーマー(Michael Shermer)が Reason.com というサイトに掲載した「Are We Becoming Morally Smarter?」という記事。 シャーマーは昨年に『 The Moral Arc: How Science an…

「文明が登場する以前の戦争」 by ピーター・ターチン

evolution-institute.org 今回紹介するのは、進化生物学者・心理学者・人類学者たちなどが集まって進化に関する様々な記事を掲載しているサイトであるEvolution Institueに掲載された、ピーター・ターチン(Peter Turchin)の「文明が登場する前の戦争(War …

『暴力の人類史』の書評が気になった

暴力の人類史 上 作者: スティーブン・ピンカー,幾島幸子,塩原通緒 出版社/メーカー: 青土社 発売日: 2015/01/28 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (17件) を見る 1月末に発売されたスティーブン・ピンカーの『暴力の人類史』だが、図書館に予約して…