道徳的動物日記

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動物愛護運動

効果的な利他主義と動物の権利運動(読書メモ:『アニマル・スタディーズ 29の基本概念』③)

アニマル・スタディーズ29の基本概念 平凡社 Amazon 第2章「アクティヴィズム」の著者はジェフ・スィーボウとピーター・シンガー。どちらも倫理学者であると同時に動物の権利運動に実践的に関わっている人だ。 この章で主に論じられるのは<効果的なアニマ…

フェミニズムと動物:まとめと批判

An Introduction to Animals and Political Theory (The Palgrave Macmillan Animal Ethics Series) (English Edition) 作者:Cochrane, Alasdair Palgrave Macmillan Amazon 先日に引き続き、「フェミニズムと動物倫理」というテーマでお勉強。 今回は政治哲…

読書メモ:「動物の権利とフェミニズム理論」

The Feminist Care Tradition in Animal Ethics: A Reader Columbia University Press Amazon Animal Rights and Feminist Theory - JSTOR 唐突に思われそうだが、本日から一時的に動物倫理に関する文献を読んで読書メモをここに書くターンに突入する。……と…

社会運動をするなら心理学を知らなければならない理由

Change Of Heart: What Psychology Can Teach Us About Spreading Social Change (English Edition) 作者:Cooney, Nick Amazon ニック・クーニーによる Change of Heart: What Psychology Can Teach Us About Spreading Social Change (『心を変える:社会…

覚え書き:なぜ功利主義者がいないと動物の権利は発見されなかったか

動物の解放 改訂版 作者:ピーター シンガー 発売日: 2011/05/20 メディア: 単行本 某所の連載で動物倫理についても何回か書くことになりそうなので、ピーター・シンガーの『動物の解放』を久しぶりに読み直している。 『動物の解放』では『実践の倫理』ほど…

「ラディカル」な議論が左翼やフェミにウケる理由(読書メモ:『荷を引く獣たち:動物の解放と障害者の解放』)

荷を引く獣たち: 動物の解放と障害者の解放 作者:テイラー,スナウラ 発売日: 2020/09/10 メディア: 単行本 版元による紹介はこんな感じ。 スナウラ・テイラーは、一人の障害当事者として、障害者運動と動物の権利運動の担い手として、そして一人の芸術家とし…

捕鯨・文化の価値・動物倫理

動物愛護や動物の権利という話題に関すると、日本では「捕鯨問題」がイメージされることが多いようだ。実際、私が学生であった頃に「動物倫理や動物の権利について勉強している」と言ったときにも、「捕鯨問題についてはどういう意見を持っているんだ」と聞…

「肉食の自由」?

davitrice.hatenadiary.jp ↑ 昨年の5月に触れた話題について、改めてちゃんと書いてみた。 日本で動物の権利を主張する団体の最大手であるアニマルライツセンターは、2016年からほぼ毎年、渋谷で「動物はごはんじゃない」というプラカードを掲げたデモ行進を…

限界事例からの議論、種差別の正当化(読書メモ:『 Beyond Prejudice 』)

Beyond Prejudice: The Moral Significance of Human and Nonhuman Animals (English Edition) 作者:Evelyn B. Pluhar 出版社/メーカー: Duke University Press Books 発売日: 1995/07/21 メディア: Kindle版 1995年に出版された動物倫理の本で、「限界…

「ケアの倫理」の構造的問題点(読書メモ:『Entangled Empathy』)

Entangled Empathy: An Alternative Ethic for Our Relationships with Animals by Lori Gruen(2014-01-01) 作者:Lori Gruen 出版社/メーカー: Lantern Books 発売日: 1739 メディア: ペーパーバック 離職して、しばらくの間は本を読む時間もたっぷりとある…

タコ、魚、ロブスター、植物

さいきん、タコと魚類に関する本を続けて読んだ。 タコの心身問題――頭足類から考える意識の起源 作者:ピーター・ゴドフリー=スミス 出版社/メーカー: みすず書房 発売日: 2018/11/17 メディア: 単行本 魚たちの愛すべき知的生活―何を感じ、何を考え、どう行…

「アニマルライツセンターの言うことだから信用できない」という物言いについて

gendai.ismedia.jp ↑ この記事についたブクマなどの反応を見ての雑感。 記事に対する賛否は半々であり、記事で指摘されているニワトリの劣悪な飼育状況に対する懸念を表明する声や改善を求める声もある一方で、記事の著者がアニマルライツセンターの代表であ…

キムリッカによる動物の権利論(読書メモ:『人と動物の政治共同体 - 「動物の権利」の政治理論』)

人と動物の政治共同体-「動物の権利」の政治理論 作者:スー・ドナルドソン,ウィル・キムリッカ,Sue Donaldson,Will Kymlicka 出版社/メーカー: 尚学社 発売日: 2016/12/26 メディア: 単行本(ソフトカバー) この本は院生時代に原著を読んでおり、邦訳が出版…

動物に関する文化人類学の議論の有害性について

今回書くことは数年来考えてきたことであり、これまでにもTwitterなどでぶつぶつと文句は言ってきたのだが、まとまった文章を書くタイミングはなかった。 しかし、先月に文化人類学者の奥野克巳氏(以下敬称略)がアップした「分別と無分別の間で ~動物解放…

「動物はおかずだ」デモに関して(1)

(仕事の休憩時間に取り急ぎ書いた) 上記の記事に関して、まず気になったのは以下の箇所。 「しかし「動物はごはんじゃないデモ行進」は、自らが肉を忌避するだけでは飽き足らず、他者の権利や自由を否定し肉の撲滅を目論んでいる。」 「憎むべきは、ヴィー…

「動物の権利」と「人権」は対立する?

togetter.com くどいようだが、この件に関するはてな・Twitterなどでの反応を眺めての雑感。 今回の件に限らず、動物の権利運動に対する批判としてちらほら見られるのが、「動物に権利を与えると人権という概念の理念が損なわれる」あるいは「動物に対して道…

ロブスターの福祉に配慮するのは感情的?

jp.reuters.com このニュースに対するネット上の様々な反応を見ての雑感。 動物福祉運動や動物の権利運動に対しては批判が投げかけられることが多い。特によくあるのが「知能が人間に近いからという理由でイルカや類人猿の権利を主張して他の動物には配慮し…

『オクジャ』と動物愛護

www.excite.co.jp www.gizmodo.jp Netflixでポン・ジュノ監督の『オクジャ』を観賞。普段はこのブログでフィクション作品の感想を書くことはほとんど無いのだが、『オクジャ』は明らかに動物倫理的なテーマを扱っているということもあって、ちょっと感想を書…

"女のヒステリー"と動物愛護運動

ヒマなので、昔自分で書いた修士論文の内容の一部を参考にしながら、記事を書いてみようと思う。私はアメリカ史を専門にしていた訳ではないので歴史に関する文章については事実誤認とか間違いが含まれているかもしれないが、そこはまあ勘弁してほしい。 アメ…

動物愛護運動は人間の苦痛から目を逸らすための運動?

階級としての動物―ヴィクトリア時代の英国人と動物たち 作者: ハリエットリトヴォ,Harriet Ritvo,三好みゆき 出版社/メーカー: 国文社 発売日: 2001/10 メディア: 単行本 クリック: 2回 この商品を含むブログ (4件) を見る 動物への配慮―ヴィクトリア時代精…

19世紀アメリカにおける子供の権利と動物の権利

humanitiesctr.cas2.lehigh.edu 前回に引き続き、動物愛護運動の歴史を書いた本に関する記事を紹介。 「政治的なケアと、子供と動物に対する配慮:歴史的視点」 (前略) 「感傷と野蛮:アメリカの歴史における動物と子供の境界を崩す」と題された講演の冒頭…

イギリスにおける動物愛護運動の歴史

www.csmonitor.com クリスチャン・サイエンス・モニター誌に掲載された書評を紹介する。 書評:『動物たちのために』 by ランディ・ドティンガ (Randy Dotinga) 数世紀前のイギリスで行われていた動物たちに対するショッキングな虐待は、歴史からは忘れら…

アメリカにおける動物愛護運動の歴史

www.csmonitor.com 今回紹介するのは、2014年の4月にクリスチャン・サイエンス・モニター誌のホームページに掲載された、アメリカの歴史家 ダイアン・ビアーズ(Diane Beers) へのインタビュー記事。 ビアーズはアメリカの動物愛護運動の歴史について…

肉食を正当化する心理

nymag.com 今回紹介するのは、 Science of Usというwebページにジェシ・シンガル(Jesse Singal)という人が掲載した「肉食を正当化する4つの方法(The 4 Ways People Rationalize Eating Meat)」という記事。 Why We Love Dogs, Eat Pigs, and Wear Cows:…

「人道革命」by ニコラス・クリストフ (消費者主導の、動物福祉の改善運動についての記事)

http://www.nytimes.com/2016/05/15/opinion/sunday/a-humane-revolution.html 今回紹介するのは、ニューヨークタイムス紙にコラムニストのニコラス・クリストフ(Nicholas Kristof)が、全米人道協会(Humane Society of the United States)の会長のウェイ…

「人権から感覚のある存在の権利へ」 by アラスデア・コクレーン

www.casj.org.uk 先日に引き続き、イギリスの政治学者アラスデア・コクレーンがCentre for Animals and Social Justiceに掲載した記事を紹介。 記事の原題はFrom Human Rights to Sentient Rights. 別のところで発表された論文の圧縮版のようである。記事の…

「誰が動物の福祉に責任を負っているのか?」 by ロバート・ガーナー

www.casj.org.uk 今回の記事はイギリスのレスター大学の政治学部の教授であるロバート・ガーナー(Robert Garner)によるもの。ガーナーは以前から動物に関する政治学的な著作を書いており、この分野では有名な人。 先日の記事と同じく、イギリスの「Centre …

「動物の福祉 VS 動物の権利:誤った二分法」 by アラスデア・コクレーン

www.casj.org.uk 今回は、イギリスのシェフフィールド大学の政治学部で政治学理論の講師をしている政治学者アラスデア・コクレーンの記事を紹介。コクレーンは動物の権利・動物倫理に関する単著も出版している。 原文が掲載されているサイトは「Centre for A…

「動物の感情、動物の感覚、動物の福祉、動物の権利」 by マーク・ベコフ

www.psychologytoday.com 「動物の感情、動物の感覚、動物の福祉、動物の権利」 by マーク・ベコフ 私が書いてきた本やブログ記事の多くは、動物の感情や感覚という話題を扱ったものだ*1。この記事では、動物は実際に苦痛を感じることができるし深い感情を持…

「「ペット」:動物の家畜化に内在する本質的な問題」 by ゲイリー・フランシオン

www.abolitionistapproach.com 今回紹介するのは、動物の権利論者・動物の権利運動家の、ゲイリー・フランシオンの記事。フランシオンはアメリカの法律学者で、法律において動物が「所有物」として扱われていることを批判し、動物を利用することを認める ins…