2022年の前半に「晶文社スクラップブック」に連載した内容を大幅加筆していった結果、合計560ページの大著となりました。第七章を除くほとんどの章が連載時から2~3倍の文章量になっており、トピックやテーマや結論すら変わっている章もあるので、実質的にほとんど書き下ろしみたいな本です。
また、加筆・修正作業は2024年の正月から夏にかけて行ったので、最近の時事的な問題も反映した、アクチュアルな内容になっています。
目次は下記の通りです(版元ドットコムから、そのまま転載)。目次には反映されていませんが各見出しごとに3~5くらいの小見出しも付けられていて、ロジカルかつボリューミーな構成になっています。
「まえがき」はそのうち晶文社のサイトで公開されると思います。よろしくお願いいたします。
●まえがき
■第一部 社会的批判と自由の問題
第一章 キャンセル・カルチャーの問題はどこにある?
1 「キャンセル・カルチャー」が問題視されるようになった背景
2 デュー・プロセスの侵害
3 キャンセルをする人たちはどこが「おかしい」のか?
第二章 「思想と討論の自由」が守られなければならない理由
1 アカデミアでは「真実」よりも「社会正義」が重視されている?
2 「思想と討論の自由」を擁護するJ・S・ミルの議論
3 ロナルド・ドゥオーキンの「表現の自由」論
4 ネットやマスメディア、書籍の議論があてにならない理由
5 「言論の闘技場」としてのアカデミア
■第二部 マイノリティとレトリックの問題
第三章 「特権」について語ることに意味はあるのか?
1 特権理論とはなんだろうか
2 レトリックとしての特権理論
3 「物象化」された特権理論
4 在日外国人の視点から「日本人特権」を考えてみる
5 アイデンティティ・ポリティクスが引き起こす問題
6 いまこそ「公共的理性」が必要だ
第四章 トーン・ポリシングと「からかいの政治」
1 「トーン・ポリシング」という概念とその問題
2 「怒り」に関する哲学者たちの議論
3 マジョリティは「理性的」であるか?
4 公共的理性を毀損する「からかいの政治」
5 「トーン・ポリシング」というレトリックがもたらす弊害
第五章 マイクロアグレッションと「被害者意識の文化」
1 「マイクロアグレッション」理論とはなにか
2 「名誉の文化」「尊厳の文化」から「被害者意識の文化」へ
3 「感情的推論」に対処するための認知行動療法とストア哲学
4 在日アメリカ人の目から見たマイクロアグレッション
■第三部 男性学と弱者男性の問題
第六章 男性にも「ことば」が必要だ
1 男性の不利益や被害は社会から無視されている?
2 ひとりの男性としての経験と感情
3 なぜ現在の「男性学」は頼りにならないか
4 「弱者男性論」の有害な影響
5 男性のための「ことば」をどう語ればいいか
第七章 弱者男性のための正義論
1 「理念」に基づいた弱者男性論が必要な理由
2 恋人がいないことや結婚できないことの不利益とはなにか?
3 リベラリズムと弱者男性
4 フェミニズムと「幸福度」と弱者男性
5 潜在能力アプローチと弱者男性
6 「あてがえ論」と「上昇婚」
7 弱者男性の問題に社会はどのように対応できるか
終章 これからの「公共性」のために
1 「壁と卵」の倫理とその欠点
2 インターネット/SNS時代の「公共性」という難問
3 「理性的」で「中立的」な政治はあり得るのか?
4 フランクフルト学派の批判理論
5 討議、承認、自尊
6 リベラリズムと理性の未来
●あとがき