道徳的動物日記

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ポリティカル・コレクトネスの問題点を指摘した記事の雑なまとめ

jbpress.ismedia.jp

 

 当ブログでは、ポリティカル・コレクトネスについて批判的であったりポリティカル・コレクトネスの問題点を指摘した英語記事をいくつか訳してきた。上記記事と上記記事に付いたコメントを見て思ったのが、ポリティカル・コレクトネスに対しては具体的にはどのような批判がなされているかということはまだあまり知られていないようなので、私が今まで訳してきた記事を紹介していこう。ついでに、まだ訳されていないが有意義な英語記事へのリンクも貼っておく。

 

 

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 ↑ 憲法学者のグレッグ・ルキアノフと社会心理学者のジョナサン・ハイトによる「アメリカン・マインドの甘やかし:トリガー警告はいかにキャンパスの精神的健康を傷付けいるか」は昨年の9月に書かれた記事で、英語圏ではこの記事をきっかけにポリティカル・コレクトネス批判に勢いが付いた感もある。

「トリガー警告」や「マイクロアグレッション」などの単語に象徴されるような、近年の大学で過熱する学生たちによるPCへの要求には、認知行動療法で分析されているような「認知の歪み」が背景にある、と分析している記事である。そして、学生たちのPCへの要求を受け入れることは批判的思考を教育する場である大学の本分に反する行為であり、学びや成長の機会を奪われ「認知の歪み」を修正する機会を与えられない学生たち自身にとっても害である、ということを主張している記事。

 

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 ↑ 社会学者が「マイクロアグレッション」という概念の問題点についてによって書いた論文をジョナサン・ハイトが要約しながら紹介する、という記事。「マイクロアグレッション」というのは、悪意によって発せられたものではない些細な言葉でも偏見などが含まれていて聴く側にとっては差別的な言葉に感じられて危害を受ける、というような概念だが、「マイクロアグレッション」という概念を利用することで他人を「加害者」だと糾弾して自分たちは「被害者」だという社会的地位を得ようとする人たちがいるという現象が見受けられる、みたいなことを分析した記事。

 

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www.patheos.com

 

 ↑ これらの記事の著者のジョージ・ヤンシーはアフリカ系アメリカ人社会学者で、アメリカ社会におけるキリスト教徒に対する差別を研究している人。大学内でポリティカル・コレクトネスが強まることは左派的なイデオロギーを持っている人や人種的マイノリティなどにとっては心地よいが、保守的なイデオロギーを持っている人やキリスト教徒にとっては抑圧的な効果をもたらす、ということを指摘している。

 

 

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togetter.com

 

 ↑ 元イスラム教徒で無神論者でフェミニストのマリアム・ナマジエという人がロンドン大学で講演を行ったのだが、その講演がイスラム教徒の学生によって妨害されて、さらにロンドン大学内のフェミニスト団体もナマジエが講演を行うことを非難した、という事件に関連する諸々の記事。フェミニスト団体がフェミニズムリベラリズムよりも反植民地主義・反西洋などのポリティカルコレクトネスなイデオロギーを優先してリベラルなフェミニストを攻撃した、という皮肉な事件である。

 

 

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 ↑ いずれも、ポリティカル・コレクトネスやフェミニズムなどの左派的なイデオロギーがいかに学問の内容を歪めるか、学問の本分である真実の追求が軽視されるか、という問題点について論じた記事。

 

 

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 ↑ 文化人類学イデオロギー的になっていることを指摘した記事。

 

 

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 ↑ 文章が活動家っぽくて読みづらいのだが、性犯罪や性的暴行の容疑者に対してフェミニストや左派の集団は推定無罪を無視して私刑を行いたがる、という問題点を指摘した記事。また、その記事を書いたために著者が学生に糾弾された事件についての記事。

 

 

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www.washingtonpost.com

 

 ↑ ポリティカル・コレクトネスやフェミニズムが反西洋主義と結びついてユダヤ人に対する人種差別的な陰謀論を主張するようになる、という問題点を指摘した記事。 

 

 

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www.thedailybeast.com

 

 ↑ 白人の警官による黒人の射殺事件が相次いだことからそれに対する抗議運動であるBlack Lives Matter運動が起こった訳だが、「黒人の射殺は人種差別が原因だ」という主張に統計的な面から疑問を呈する記事と、Black Lives Matter運動の問題点を指摘した記事。

 

www.thedailybeast.com

 

www.spiked-online.com

 

 ↑ 白人がブリトーを食べたりジャズを聴いたり中華料理を食べたり着物を着たり中東料理を食べたりヨガをしたりすることは、マイノリティの"文化に対する簒奪(Cultural Appropriation)"と批判されるのだが、その"文化に対する簒奪"という概念を批判する記事。


 

www.theguardian.com

heterodoxacademy.org

www.psychologytoday.com

 

 ↑ 心理学者のニック・ハスラムが最近の論文で主張した「Concept Creep」という概念に関連する記事。「Concept Creep」とは、心理学における「いじめ」「偏見」「トラウマ」や「マイクロアグレッション」などの概念が、当初は限定されていて客観的であった定義がより多くの些細な現象に当てはまるように拡大されることを指している。ジョナサン・ハイトは、心理学が他の多くの社会科学と同じように左派の学者ばかりになっているので、心理学の概念も社会正義運動家が論敵を告発して非難するのに便利になるように変化させられた、と分析している。

 

www.wsj.com

 

 ↑ 大学における人種的アファーマティブ・アクションの非有効性や問題点について心理学者のジョナサン・ハイトとリー・ジュシムが論じた記事。

 

 

 

 ………と、雑に紹介していった。後半は話題が逸れていたかもしれないが。

 

 ここで紹介した記事の多くは、大学や学問におけるポリティカル・コレクトネスの問題点を指摘したものである。大学や学問の本分とは、偏見やイデオロギーを排した自由な議論や研究によって真実を追求することなので、ポリティカル・コレクトネスとは相反するという訳である。

 大学とは離れた普段の生活の場や企業などにおけるポリティカル・コレクトネスや、創作表現や映像や広告などにおけるポリティカル・コレクトネスについてはまた違った論点があるだろう。私としては、普段の生活の場や企業などにおけるポリティカル・コレクトネスや創作表現や映像や広告などにおけるポリティカル・コレクトネスについてはあまり否定的な気持ちを抱いていない。