道徳的動物日記

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二層功利主義と権利(引用メモ:『相手の立場に立つ ヘアの道徳哲学』)

 

相手の立場に立つ

相手の立場に立つ

  • 作者:山内 友三郎
  • 出版社/メーカー: 勁草書房
  • 発売日: 1991/05/20
  • メディア: オンデマンド (ペーパーバック)
 

 

ヘアの二層理論によれば権利は直観のレヴェルに位置を占めていて、特別ことがない限り、私たちを律すべき一般的原則であると考えられている。そのさいどのような権利がよいか、どの種の権利を選んで子供に教えるべきかという道徳の問題が生ずることになるが、これに答えるのが批判的な思考である。こうして、一定の社会において、どの種の権利が受け入れられるならば、社会全体の幸福を増進するか、という受け入れー功利性の原理にもとづいて、受け入れられるべき権利が選ばれることになる。したがってあらかじめ与えられた権利があってそれを疑うことはできないという絶対主義ではなく、社会の実状に応じた柔軟な原則を権利として採用する余地が残されている。

…(中略)…

権利を、自然法のような客観的価値にもとづく絶対的なものととらないで、社会幸福のために必要なものとして、教えられて身につけた原則にすぎないとする、この受け入れー功利性の考え方は、権利の絶対性を主張する人々にとっては甚だもの足りないものであって、あるいは道徳的堕落と映るかもしれない。しかし、権利を絶対のものと考える絶対主義の傾向にとって、権利を絶対視しえない二つの点がある。一つは権利と権利の衝突の問題である。さらにもう一つは人に一定の権利意識をもつように子供に一定の権利原則を教えることができるという点である。そのさい、どの権利を優先させるか、またどの権利を選んで教えるかを決定するためには批判的思考が必要とされるのである。ヘアの二層理論は、権利を守ることの根拠を説明しているだけではなく、権利の衝突を解決する理論をも、またどの権利原則を選んで教えるかについての解答をも、提供している点できわめて有力な理論である。

( p. 182 -184 )

 

  功利主義と権利論の関係については過去にも英語記事を訳したりしている*1。ヘアの二層理論について書いた記事はこちら功利主義と直観との関係について書いた記事はこちら。これらの記事のタネ本となっているヴァーナーの本と比べると、山内の本はいかにも解説本という感じであまりワクワクする内容ではない。しかし、ヘアによるメタ倫理学的な議論についての解説はヴァーナーのものより山内のものの方が充実しているように思える。