倫理学
今回書くことは数年来考えてきたことであり、これまでにもTwitterなどでぶつぶつと文句は言ってきたのだが、まとまった文章を書くタイミングはなかった。 しかし、先月に文化人類学者の奥野克巳氏(以下敬称略)がアップした「分別と無分別の間で ~動物解放…
「倫理学入門」的なタイトルが付けられた本や授業では、規範倫理について紹介する際には、「倫理学の代表的な理論としては帰結主義(功利主義)と義務論がありまして、この二つの理論は対立するものとして見られておりますが、また別の角度から道徳を論じる…
幸福と人生の意味の哲学 作者: 山口尚 出版社/メーカー: トランスビュー 発売日: 2019/05/20 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る この本では「幸福であることの欺瞞性」や「私たちがひとを苦しめながら生きているという事実」が重視されている。 …
Better Never to Have Been: The Harm Of Coming Into Existence 作者: David Benatar 出版社/メーカー: Oxford University Press, Usa 発売日: 2008/09/15 メディア: ペーパーバック 購入: 2人 クリック: 72回 この商品を含むブログ (1件) を見る 先日にペ…
幸福と人生の意味の哲学 作者: 山口尚 出版社/メーカー: トランスビュー 発売日: 2019/05/20 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 先日に『若者のための<死>の倫理学』についての記事を書いた時には同著を(否定的な意味も込めて)「"文学的"な哲…
良き人生について―ローマの哲人に学ぶ生き方の知恵 作者: ウィリアム・B・アーヴァイン,竹内和世 出版社/メーカー: 白揚社 発売日: 2013/09/11 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 人生哲学としてのストア哲学の知見をわかりやすく紹介して、現代…
Pets and People: The Ethics of Our Relationships with Companion Animals (English Edition) 出版社/メーカー: Oxford University Press 発売日: 2017/02/01 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る www.oxfordscholarship.com 現代の哲学界にお…
迷いを断つためのストア哲学 作者: マッシモピリウーチ,為末大,月沢李歌子 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2019/04/03 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 邦題はちょっと安っぽくてビジネス書感があるが、原題は「ストイック(ストア派)にな…
スミス先生の道徳の授業 ―アダム・スミスが経済学よりも伝えたかったこと 作者: ラス・ロバーツ,村井章子 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社 発売日: 2016/02/25 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログ (2件) を見る 経済学の祖であるア…
これからの「正義」の話をしよう (ハヤカワ・ノンフィクション文庫) 作者: マイケルサンデル,Michael J. Sandel,鬼澤忍 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2011/11/25 メディア: 文庫 購入: 4人 クリック: 204回 この商品を含むブログ (81件) を見る 功利主…
欲望について 作者: ウィリアム・B.アーヴァイン,William B. Irvine,竹内和世 出版社/メーカー: 白揚社 発売日: 2007/12/01 メディア: 単行本 クリック: 3回 この商品を含むブログ (5件) を見る タイトル通り、欲望という事象についての本。 第一部では「欲…
若者のための死の倫理学 作者: 三谷尚澄 出版社/メーカー: ナカニシヤ出版 発売日: 2013/01/01 メディア: 単行本 クリック: 2回 この商品を含むブログ (1件) を見る なかなか感想を書くのが難しい本である。 テーマは「死」となっており、身近な人が亡くなる…
自分で考える勇気――カント哲学入門 (岩波ジュニア新書) 作者: 御子柴善之 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2015/03/21 メディア: 新書 この商品を含むブログ (7件) を見る 石川文廉の『カント入門』もわかりやすかったが、こちらはさらに輪をかけてわかり…
ギリシア・ローマ-ストア派の哲人たち-セネカ、エピクテトス、マルクス・アウレリウス 作者: 國方栄二 出版社/メーカー: 中央公論新社 発売日: 2019/01/09 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 自然は動物が自分自身と親密であるように創ったから、…
進化倫理学入門 作者: スコット・ジェイムズ,児玉聡 出版社/メーカー: 名古屋大学出版会 発売日: 2018/01/29 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (4件) を見る 前半は進化心理学や人類学などが道徳に関してもたらす客観的知見の概説やおさらい、後半はそ…
反共感論―社会はいかに判断を誤るか 作者: ポール・ブルーム,高橋洋 出版社/メーカー: 白揚社 発売日: 2018/02/02 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (2件) を見る この本のメインとなる論旨については、以前に別の記事で紹介しているので、今回は細か…
反共感論―社会はいかに判断を誤るか 作者: ポール・ブルーム,高橋洋 出版社/メーカー: 白揚社 発売日: 2018/02/02 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (2件) を見る 心理学者のポール・ブルームによる『反共感論』については、原著が出版される前にブル…
資本主義に徳はあるか 作者: アンドレコント=スポンヴィル,Andr´e Comte‐Sponville,小須田健,コリーヌカンタン 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店 発売日: 2006/08 メディア: 単行本 クリック: 6回 この商品を含むブログ (10件) を見る フランス人の哲学者であ…
幸福はなぜ哲学の問題になるのか (homo viator) 作者: 青山拓央 出版社/メーカー: 太田出版 発売日: 2016/09/14 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (6件) を見る 昨日にも『幸福はなぜ哲学の問題になるのか』の感想を書いたが、本書の中でも特に印象に…
幸福はなぜ哲学の問題になるのか (homo viator) 作者: 青山拓央 出版社/メーカー: 太田出版 発売日: 2016/09/14 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (6件) を見る 幸福論系の哲学をまとめて読んでいた時期があったのだが、その中でもこの本はかなり良か…
不道徳的倫理学講義: 人生にとって運とは何か (ちくま新書) 作者: 古田徹也 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2019/05/07 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る 西洋の倫理思想史の中でも「運」について言及している哲学者たちの思想を取り上げて、…
功利主義及び動物倫理に関するよくある誤解について、さくっと書く。 「動物に苦痛を与えてはいけない」という主張は様々な倫理学者が提唱してきたものではあるが、過去の人であればジェレミー・ベンサム、現代の人であればピーター・シンガーが有名であろう…
ふだんづかいの倫理学 (犀の教室Liberal Arts Lab) 作者: 平尾昌宏 出版社/メーカー: 晶文社 発売日: 2019/03/12 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 前回の記事でも言及した内容とはまた別口で、『ふだんづかいの倫理学』を読んで考えたことにつ…
記事のタイトルは、過去に自分で訳した記事のパロディ*1。 ふだんづかいの倫理学 (犀の教室Liberal Arts Lab) 作者: 平尾昌宏 出版社/メーカー: 晶文社 発売日: 2019/03/12 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 先日から『ふだんづかいの倫理学』と…
人生の意味―価値の創造 (りぶらりあ選書) 作者: アーヴィングシンガー,Irving Singer,工藤政司 出版社/メーカー: 法政大学出版局 発売日: 1995/10/01 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 読んだ。いろんな哲学者が「人生の意味」について論じた主…
投票日から一ヶ月くらい経ってしまったが、思うところあって雑感をいくつか。 ・ここ数年間の選挙では、右派が多くの議席を獲得して左派は大して議席を獲得できない、という結果になることが定番だ。自民党は毎度のように圧勝するし、大阪は相変わらず維新の…
徳は知なり: 幸福に生きるための倫理学 作者: ジュリア・アナス,相澤康隆 出版社/メーカー: 春秋社 発売日: 2019/03/25 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 本の要約などではなく、気に入ったところを抜き出すだけのほんとうに単なるメモ。 『徳は…
先日に森村進の『幸福とは何か』 (ちくまプリマー新書、2018年)を読んでいたら、後半の方で以下のような記述があった*1。 幸福とは何かを考えるにあたって、私は本書でさまざまの思考実験を利用してきましたが、その中には非現実的な例も少なくありませんで…
davitrice.hatenadiary.jp ↑ 倫理学者のゲイリー・ヴァーナーの論文「環境倫理、狩猟、動物の位置付け(Environmental Ethics, Hunting, and the Place of Animals)」を要約した上記の記事など、このブログでは英語圏の倫理学者が狩猟について書いた文章を…
前々回と前回の続き。 批判その7:啓蒙主義(科学的な理性)は、その産物である人工知能やソーシャルメディアによって葬り去られてしまうだろう。 ピンカーの反論:メアリー・シェリーが『フランケンシュタイン』を書いた時代なら、そのような物語は魅力的…