道徳的動物日記

人々の議論を眺めながら考えたことや読んだ本の感想など。このブログは利益や金銭目的ではなく人々に対する啓蒙のために書かれています。ありがたがれ。

動物倫理

捕鯨・文化の価値・動物倫理

動物愛護や動物の権利という話題に関すると、日本では「捕鯨問題」がイメージされることが多いようだ。実際、私が学生であった頃に「動物倫理や動物の権利について勉強している」と言ったときにも、「捕鯨問題についてはどういう意見を持っているんだ」と聞…

「肉食の自由」?

davitrice.hatenadiary.jp ↑ 昨年の5月に触れた話題について、改めてちゃんと書いてみた。 日本で動物の権利を主張する団体の最大手であるアニマルライツセンターは、2016年からほぼ毎年、渋谷で「動物はごはんじゃない」というプラカードを掲げたデモ行進を…

「広く共有された信念」と動物倫理(読書メモ:Ethics and the Beast)

Ethics and the Beast: A Speciesist Argument for Animal Liberation 作者:Tzachi Zamir 出版社/メーカー: Princeton University Press 発売日: 2014/11/23 メディア: ペーパーバック イスラエルの倫理学者、トサヒ・ザミール(Tzachi Zamir)の著書。とり…

動物の利益と人間の利益、文化的慣習

Animal Rights Without Liberation: Applied Ethics and Human Obligations (Critical Perspectives on Animals) 作者:Alasdair Cochrane 出版社/メーカー: Columbia Univ Pr 発売日: 2012/09/16 メディア: ハードカバー この本の8章、"Animal and Cultrual…

利益に基づいた動物の権利:ペットの避妊、娯楽における動物の利用、環境保護との関係

Animal Rights Without Liberation: Applied Ethics and Human Obligations (Critical Perspectives on Animals: Theory, Culture, Science, and Law) (English Edition) 作者:Alasdair Cochrane 出版社/メーカー: Columbia University Press 発売日: 2012/0…

「利益に基づいた権利」による動物の権利論(読書メモ:Animal Rights without Liberation)

Animal Rights Without Liberation: Applied Ethics and Human Obligations (Critical Perspectives on Animals: Theory, Culture, Science, and Law) (English Edition) 作者:Alasdair Cochrane 出版社/メーカー: Columbia University Press 発売日: 2012/0…

限界事例からの議論、種差別の正当化(読書メモ:『 Beyond Prejudice 』)

Beyond Prejudice: The Moral Significance of Human and Nonhuman Animals (English Edition) 作者:Evelyn B. Pluhar 出版社/メーカー: Duke University Press Books 発売日: 1995/07/21 メディア: Kindle版 1995年に出版された動物倫理の本で、「限界…

「ケアの倫理」の構造的問題点(読書メモ:『Entangled Empathy』)

Entangled Empathy: An Alternative Ethic for Our Relationships with Animals by Lori Gruen(2014-01-01) 作者:Lori Gruen 出版社/メーカー: Lantern Books 発売日: 1739 メディア: ペーパーバック 離職して、しばらくの間は本を読む時間もたっぷりとある…

読書メモ:『猫の精神生活がわかる本』

猫の精神生活がわかる本 作者:トーマス・マクナミー 出版社/メーカー: エクスナレッジ 発売日: 2017/12/24 メディア: 単行本(ソフトカバー) 作家である著者が、愛猫の「オーガスタ」との出会いから共同生活、オーガスタの死による別れを綴りながら、猫の心…

ペットの安楽死にまつわる倫理的問題(読書メモ:『ラストウォーク 愛犬オディー最後の一年』)

ラストウォーク ―愛犬オディー最後の一年 作者:ジェシカ・ピアス 出版社/メーカー: 新泉社 発売日: 2019/02/20 メディア: 単行本(ソフトカバー) 著者のジェシカ・ピアスは倫理学者で、この本以外にもペット飼育に関する倫理の本や生命倫理の本、動物の道徳…

タコ、魚、ロブスター、植物

さいきん、タコと頭足類に関する本を続けて読んだ。 タコの心身問題――頭足類から考える意識の起源 作者:ピーター・ゴドフリー=スミス 出版社/メーカー: みすず書房 発売日: 2018/11/17 メディア: 単行本 魚たちの愛すべき知的生活―何を感じ、何を考え、どう…

「アニマルライツセンターの言うことだから信用できない」という物言いについて

gendai.ismedia.jp ↑ この記事についたブクマなどの反応を見ての雑感。 記事に対する賛否は半々であり、記事で指摘されているニワトリの劣悪な飼育状況に対する懸念を表明する声や改善を求める声もある一方で、記事の著者がアニマルライツセンターの代表であ…

キムリッカによる動物の権利論(読書メモ:『人と動物の政治共同体 - 「動物の権利」の政治理論』)

人と動物の政治共同体-「動物の権利」の政治理論 作者:スー・ドナルドソン,ウィル・キムリッカ,Sue Donaldson,Will Kymlicka 出版社/メーカー: 尚学社 発売日: 2016/12/26 メディア: 単行本(ソフトカバー) この本は院生時代に原著を読んでおり、邦訳が出版…

動物に関する文化人類学の議論の有害性について

今回書くことは数年来考えてきたことであり、これまでにもTwitterなどでぶつぶつと文句は言ってきたのだが、まとまった文章を書くタイミングはなかった。 しかし、先月に文化人類学者の奥野克巳氏(以下敬称略)がアップした「分別と無分別の間で ~動物解放…

反出生主義についての雑感

Better Never to Have Been: The Harm Of Coming Into Existence 作者: David Benatar 出版社/メーカー: Oxford University Press, Usa 発売日: 2008/09/15 メディア: ペーパーバック 購入: 2人 クリック: 72回 この商品を含むブログ (1件) を見る 先日にペ…

読書メモ:ペットと反出生主義

Pets and People: The Ethics of Our Relationships with Companion Animals (English Edition) 出版社/メーカー: Oxford University Press 発売日: 2017/02/01 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る www.oxfordscholarship.com 現代の哲学界にお…

読書メモ:ペットを飼うことを避けることの道徳的問題

Pets and People: The Ethics of Our Relationships with Companion Animals (English Edition) 出版社/メーカー: Oxford University Press 発売日: 2017/02/01 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る philpapers.org キャサリン・ノーロックという…

読書メモ:「ペットとの関係の、二層功利主義における分析」

Pets and People: The Ethics of Our Relationships with Companion Animals (English Edition) 出版社/メーカー: Oxford University Press 発売日: 2017/02/01 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る www.oxfordscholarship.com このブログでも何…

「動物に苦痛を与えてはいけない」という主張は功利主義?/功利主義は「苦痛」にしか注目しない?

功利主義及び動物倫理に関するよくある誤解について、さくっと書く。 「動物に苦痛を与えてはいけない」という主張は様々な倫理学者が提唱してきたものではあるが、過去の人であればジェレミー・ベンサム、現代の人であればピーター・シンガーが有名であろう…

「攻めの倫理」と「守りの倫理」(『ふだんづかいの倫理学』読書メモ)

ふだんづかいの倫理学 (犀の教室Liberal Arts Lab) 作者: 平尾昌宏 出版社/メーカー: 晶文社 発売日: 2019/03/12 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 前回の記事でも言及した内容とはまた別口で、『ふだんづかいの倫理学』を読んで考えたことにつ…

動物の権利運動は部落差別?

otapol.com 上記の記事とか、それ以前からよく言われている「動物の権利運動は部落差別だ」的な主張に対する一般論的な反論。 多くの社会運動では、現行の社会で認められている社会制度を不当だとして、その制度に規制をかけたり撤廃したりすることが目標と…

「動物はおかずだ」デモに関して(2)

buzz-plus.com 出勤前に取り急ぎ、昨日の記事の続き。 「動物はおかずだデモ」はデモの名前からして「動物はごはんじゃないデモ」のカウンターである。また、単なるカウンターではなく、「動物はごはんじゃない」デモに対するパロディや皮肉を意識しているよ…

「動物はおかずだ」デモに関して(1)

(仕事の休憩時間に取り急ぎ書いた) 上記の記事に関して、まず気になったのは以下の箇所。 「しかし「動物はごはんじゃないデモ行進」は、自らが肉を忌避するだけでは飽き足らず、他者の権利や自由を否定し肉の撲滅を目論んでいる。」 「憎むべきは、ヴィー…

狩猟にまつわる倫理的問題

davitrice.hatenadiary.jp ↑ 倫理学者のゲイリー・ヴァーナーの論文「環境倫理、狩猟、動物の位置付け(Environmental Ethics, Hunting, and the Place of Animals)」を要約した上記の記事など、このブログでは英語圏の倫理学者が狩猟について書いた文章を…

「動物の権利」と「人権」は対立する?

togetter.com くどいようだが、この件に関するはてな・Twitterなどでの反応を眺めての雑感。 今回の件に限らず、動物の権利運動に対する批判としてちらほら見られるのが、「動物に権利を与えると人権という概念の理念が損なわれる」あるいは「動物に対して道…

左派は動物の権利を支持するべきか?

togetter.com このTogetterに関わる論点として、数年前に要約して翻訳して紹介した ウィル・キムリッカとスー・ドナルドソンの論文「動物の権利、多文化主義、左派」から一部抜粋して紹介してみよう(手抜き記事である)。 現在、米国の動物の権利運動は「左…

アニマルライツとフェミニズム

The Feminist Care Tradition in Animal Ethics: A Reader 作者: Josephine Donovan,Carol J. Adams 出版社/メーカー: Columbia Univ Pr 発売日: 2007/11/01 メディア: ペーパーバック 購入: 1人 クリック: 1回 この商品を含むブログを見る ヴィーガンフェミ…

ロブスターの福祉に配慮するのは感情的?

jp.reuters.com このニュースに対するネット上の様々な反応を見ての雑感。 動物福祉運動や動物の権利運動に対しては批判が投げかけられることが多い。特によくあるのが「知能が人間に近いからという理由でイルカや類人猿の権利を主張して他の動物には配慮し…

『サピエンス全史』に対する批判に対する雑感

著者がヴィーガンだから「歴史書の形を借りた自己啓発書」とされるの、意味わかんない... — デビット・ライス (@RiceDavit) 2017年9月25日 たとえば歴史的事実なり科学的事実なりについて書かれている本で、それらの事実についての著者の理解から「人類は増…

『オクジャ』と動物愛護

www.excite.co.jp www.gizmodo.jp Netflixでポン・ジュノ監督の『オクジャ』を観賞。普段はこのブログでフィクション作品の感想を書くことはほとんど無いのだが、『オクジャ』は明らかに動物倫理的なテーマを扱っているということもあって、ちょっと感想を書…