道徳的動物日記

動物や倫理学やアメリカについて勉強したことのある人の日記です。

動物倫理

「動物の権利」と「人権」は対立する?

togetter.com くどいようだが、この件に関するはてな・Twitterなどでの反応を眺めての雑感。 今回の件に限らず、動物の権利運動に対する批判としてちらほら見られるのが、「動物に権利を与えると人権という概念の理念が損なわれる」あるいは「動物に対して道…

左派は動物の権利を支持するべきか?

togetter.com このTogetterに関わる論点として、数年前に要約して翻訳して紹介した ウィル・キムリッカとスー・ドナルドソンの論文「動物の権利、多文化主義、左派」から一部抜粋して紹介してみよう(手抜き記事である)。 現在、米国の動物の権利運動は「左…

アニマルライツとフェミニズム

The Feminist Care Tradition in Animal Ethics: A Reader 作者: Josephine Donovan,Carol J. Adams 出版社/メーカー: Columbia Univ Pr 発売日: 2007/11/01 メディア: ペーパーバック 購入: 1人 クリック: 1回 この商品を含むブログを見る ヴィーガンフェミ…

ロブスターの福祉に配慮するのは感情的?

jp.reuters.com このニュースに対するネット上の様々な反応を見ての雑感。 動物福祉運動や動物の権利運動に対しては批判が投げかけられることが多い。特によくあるのが「知能が人間に近いからという理由でイルカや類人猿の権利を主張して他の動物には配慮し…

『サピエンス全史』に対する批判に対する雑感

著者がヴィーガンだから「歴史書の形を借りた自己啓発書」とされるの、意味わかんない... — デビット・ライス (@RiceDavit) 2017年9月25日 たとえば歴史的事実なり科学的事実なりについて書かれている本で、それらの事実についての著者の理解から「人類は増…

『オクジャ』と動物愛護

www.excite.co.jp www.gizmodo.jp Netflixでポン・ジュノ監督の『オクジャ』を観賞。普段はこのブログでフィクション作品の感想を書くことはほとんど無いのだが、『オクジャ』は明らかに動物倫理的なテーマを扱っているということもあって、ちょっと感想を書…

市民的不服従と動物の権利運動

www.theage.com.au 今回紹介するのは、2013年の5月10日にオーストラリアの The Ageというニュースサイトに掲載された、政治学者のシヴォーン・オサリヴァン(Siobhan O'Sullivan)と倫理学者のクレア・マコーズランド(Clare McCausland)による記事。オサリ…

肉食が引き起こす5つの倫理的問題

今回紹介するのは、オーストラリアの Conversation誌に掲載された、公衆衛生学者の フランシス・ヴァーガンスト(Francis Vergunst)と倫理学者のジュリアン・サバレスキュ(Julian Savulescu)による記事。 theconversation.com 「あなたの皿に載った肉が地…

肉食は"自然"で"必要"か?

honz.jp この記事についているブコメなどの反応を見てみると、社会心理学者のメラニー・ジョイ(Melanie Joy)が『Why We Love Dogs, Eat Pigs, and Wear Cows: An Introduciton to Carnism(肉食主義へのイントロダクション:なぜ私たちは犬を愛し、豚を食…

カント的な動物倫理の議論:クリスティン・コースガードのインタビュー記事

blog.practicalethics.ox.ac.uk オックスフォードのPractical Ethicsブログから、2015年の4月に公開された、カント的な立場の倫理学を主張する倫理学者クリスティン・コースガード(Christine Korsgaard)にEmilian Mihailovというルーマニア(?)の倫理学…

「あなたが平等主義者なら、どうしてあなたは種差別主義者なのか?」 by カティア・ファリア

オックスフォードのPractical Ethicsブログに、2015年の2月に倫理学者のカティア・ファリア(Catia Faria)が公開した記事を訳して紹介。 blog.practicalethics.ox.ac.uk 「あなたが平等主義者なら、どうしてあなたは種差別主義者なのか?」 by カティ…

ある生物種が絶滅することの何が問題なのか?

オックスフォードのPractical Ethicsブログに、2015年の8月に倫理学者のカティア・ファリア(Catia Faria)が公開した記事を訳して紹介。 blog.practicalethics.ox.ac.uk 「生物種の絶滅を悪いこととする理由は(もしそんな理由が存在するとすれば)何…

「動物の苦痛の道徳的重要性」 by ロジャー・クリスプ

昨日に引き続き、オックスフォードのPractical Ethicsのブログから、2015年6月に公開された、倫理学者のロジャー・クリスプ(Roger Crisp)の記事を訳して紹介。 blog.practicalethics.ox.ac.uk 「動物の苦痛の道徳的重要性」 by ロジャー・クリスプ 最近、…

動物倫理における宗教・文化の扱いについて

togetter.com 上記のTogetterは2016年のものだが、なぜか最近になってブクマが集まっているようだ。このTogetterの内容は基本的には「アニマルライツは宗教よりも重要ではない」と考えているまとめ主が自身の見解や自身に近い見解を持つ人の主張をまとめ…

タチアナ・ヴィサク『幸せな動物を殺すこと』:置き換え可能性の議論、総量功利主義と先行存在功利主義、非同一性問題

Killing Happy Animals: Explorations in Utilitarian Ethics (The Palgrave Macmillan Animal Ethics Series) 作者: Tatjana Višak 出版社/メーカー: Palgrave Macmillan 発売日: 2013/08/23 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 今回はドイツ人…

「動物が苦痛を感じているとも、植物が苦痛を感じないとも、確実に言うことはできない」(倫理に関する事実判断と価値判断についての私見)

togetter.com 上記のTogetterは私のツイートをセルフまとめしたものだが、この話題について、ブログでもちょっと書いてみたい。 動物を道徳的配慮の対象とする倫理学理論(や政治哲学などその他の規範理論)の多くは「ある存在は幸福や快楽などのポジティブ…

"女のヒステリー"と動物愛護運動

ヒマなので、昔自分で書いた修士論文の内容の一部を参考にしながら、記事を書いてみようと思う。私はアメリカ史を専門にしていた訳ではないので歴史に関する文章については事実誤認とか間違いが含まれているかもしれないが、そこはまあ勘弁してほしい。 アメ…

マーサ・ヌスバウムによる動物の「繁栄・開花」/「可能力アプローチ」論と、その問題点

正義のフロンティア: 障碍者・外国人・動物という境界を越えて (サピエンティア) 作者: マーサ・C.ヌスバウム,神島裕子 出版社/メーカー: 法政大学出版局 発売日: 2012/06/29 メディア: 単行本 クリック: 10回 この商品を含むブログを見る ドナルドソンとキ…

野生動物と境界動物:『人と動物の政治共同体』(3)

人と動物の政治共同体-「動物の権利」の政治理論 作者: スー・ドナルドソン,ウィル・キムリッカ,Sue Donaldson,Will Kymlicka,青木人志,成廣孝 出版社/メーカー: 尚学社 発売日: 2016/12/26 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログ (3件) を…

「植物への倫理的配慮?」 by ゲイリー・フランシオーン

A Frequently Asked Question: What About Plants? – Animal Rights: The Abolitionist Approach 今回訳して紹介するのは、動物の権利論者・動物の権利運動家のゲイリー・フランシオンがホームページに掲載した記事。記事の正式なタイトルは「よくある質問:…

家畜動物のシティズンシップ:『人と動物の政治共同体』(2)

人と動物の政治共同体-「動物の権利」の政治理論 作者: スー・ドナルドソン,ウィル・キムリッカ,Sue Donaldson,Will Kymlicka,青木人志,成廣孝 出版社/メーカー: 尚学社 発売日: 2016/12/26 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログ (3件) を…

「動物実験のコストとベネフィット」 by アンドリュー・ナイト

今回紹介するのは、倫理学者のアンドリュー・ナイト(Andrew Knight)が2011年New Internationalist のwebページに掲載した「動物実験のコストとベネフィット(The costs and benefits of animal experiments)」という記事。ナイトは同じ題名の単著も出して…

動物の市民権:『人と動物の政治共同体』(1)

人と動物の政治共同体-「動物の権利」の政治理論 作者: スー・ドナルドソン,ウィル・キムリッカ,Sue Donaldson,Will Kymlicka,青木人志,成廣孝 出版社/メーカー: 尚学社 発売日: 2016/12/26 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログ (3件) を…

野生動物とペット・家畜に対する道徳的責任の違い - クレア・パーマー『文脈のなかの動物倫理』

Animal Ethics in Context 作者: Clare Palmer 出版社/メーカー: Columbia University Press 発売日: 2010/12/05 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 数年前にClare Palmer(クレア・パーマー)という人が書いた『Animal Ethics in Context(文…

動物園にまつわる倫理的問題

動物倫理入門 作者: ローリーグルーエン,Lori Gruen,河島基弘 出版社/メーカー: 大月書店 発売日: 2015/11/20 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (5件) を見る davitrice.hatenadiary.jp 某アニメの影響で動物園への関心が高まっているようだが、倫理学…

動物倫理とポストモダン思想

davitrice.hatenadiary.jp ゲイリー・シュタイナーの主張は以前にも本人が書いた短い記事を訳して紹介したが、何しろ短かい記事だったのでシュタイナーの主張がわかりづらかったかもしれない。今回は、シュタイナーが著書『動物と、ポストモダニズムの限界』…

「動物の権利と先住民の権利」 by ウィル・キムリッカ、スー・ドナルドソン

人と動物の政治共同体-「動物の権利」の政治理論 作者: スー・ドナルドソン,ウィル・キムリッカ,Sue Donaldson,Will Kymlicka,青木人志,成廣孝 出版社/メーカー: 尚学社 発売日: 2016/12/26 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログを見る 政…

読書メモ:デール・ジェイミーソンの環境倫理学入門

Ethics and the Environment: An Introduction (Cambridge Applied Ethics) 作者: Dale Jamieson 出版社/メーカー: Cambridge University Press 発売日: 2008/01/24 メディア: ペーパーバック この商品を含むブログを見る 先日に読んでいた本。著者のデール…

「限界事例の議論」に関する、ゲイリー・ヴァーナーの議論

道徳的地位やパーソン論に関する議論では「限界事例の議論(Argument from Marginal Cases)」がよく出てくる。 「人間はパーソンであるが動物はパーソンではない」と論じるとき、人間がパーソンである理由として「過去・現在・未来に渡って自分が存在すると…

メモ・道徳的地位と道徳的重要性、なぜパーソンの生は特別な道徳的重要性を持つのか

davitrice.hatenadiary.jp 前回の記事の付け足し、補足的な内容。書き終わってから気付いたが、前回では「人格」「準-人格」と訳していたところを「パーソン」「準-パーソン」と訳してしまった。直すのめんどくさいのでそのままにしておく。意味は一緒。 パ…