道徳的動物日記

動物や倫理学やアメリカについて勉強したことのある人の日記です。

読書メモ:『ポジティブ病の国、アメリカ』

ポジティブ病の国、アメリカ 作者: バーバラ・エーレンライク,中島由華 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2010/04/10 メディア: ハードカバー 購入: 2人 クリック: 40回 この商品を含むブログ (12件) を見る 内容はタイトル通り、アメリカに蔓延するポ…

読書メモ:『 大学なんか行っても意味はない? 教育反対の経済学』

大学なんか行っても意味はない?――教育反対の経済学 作者: ブライアン・カプラン,月谷真紀 出版社/メーカー: みすず書房 発売日: 2019/07/17 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 雇用主が大学を卒業した人そうでない人よりも高い給料を払うのは、そ…

読書メモ:『生きづらい明治社会』、余談

会社での労働やお金稼ぎ、ネオリベ的な言説などなどに嫌気が差してしまい、そういうのを批判してくれそうな本をまとめて図書館で借りて読んだ。その中でも特に気に入った本についてメモを残しておく。 生きづらい明治社会――不安と競争の時代 (岩波ジュニア新…

「どこに投票したか」に対する批判は許されないか?

投票日から一ヶ月くらい経ってしまったが、思うところあって雑感をいくつか。 ・ここ数年間の選挙では、右派が多くの議席を獲得して左派は大して議席を獲得できない、という結果になることが定番だ。自民党は毎度のように圧勝するし、大阪は相変わらず維新の…

浅き低きの幸福論

しあわせ仮説 作者: ジョナサン・ハイト,藤澤隆史,藤澤玲子 出版社/メーカー: 新曜社 発売日: 2011/07/06 メディア: 単行本 購入: 12人 クリック: 226回 この商品を含むブログ (15件) を見る 雑感。 ジョナサン・ハイトの『しあわせ仮説』を読んでからポジテ…

読書メモ:『徳は知なり』(by ジュリア・アナス)

徳は知なり: 幸福に生きるための倫理学 作者: ジュリア・アナス,相澤康隆 出版社/メーカー: 春秋社 発売日: 2019/03/25 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 本の要約などではなく、気に入ったところを抜き出すだけのほんとうに単なるメモ。 『徳は…

「男性のつらさ」論についての雑感

前回の記事の続き…と言いたいところだが、大したことが書けそうにないので箇条書きで。 ●議論が盛り上がるきっかけとなった「男性のつらさの構造」記事では、男性のつらさの原因の一つを「女性の高望み」と分析していた。そして、それに対する解決策の一つと…

「有害な男らしさ」論のイデオロギー

まとまった文章を書く気力がないので、最近の議論を見ていて思ったことをだらだらと。 日本のインターネットでは「男のつらさ」とか「男性の孤独」というトピックは周期的に話題になるが、今月は特にそれらの話題についての議論が盛んだ。 議論のきっかけは…

「一部に過激な奴がいるからお前らの主張は全て否定する」的な主張について

togetter.com 上記のTogetter記事などを見ての、諸々の反応に対する雑感。 ひとくちに「社会運動」と言ってもその定義の仕方は色々とあるだろう。とはいえ、ひとまず、社会運動とは「ある社会問題への対策を政治的・制度的に実現させるために、その社会問題…

動物の権利運動は部落差別?

otapol.com 上記の記事とか、それ以前からよく言われている「動物の権利運動は部落差別だ」的な主張に対する一般論的な反論。 多くの社会運動では、現行の社会で認められている社会制度を不当だとして、その制度に規制をかけたり撤廃したりすることが目標と…

「動物はおかずだ」デモに関して(2)

buzz-plus.com 出勤前に取り急ぎ、昨日の記事の続き。 「動物はおかずだデモ」はデモの名前からして「動物はごはんじゃないデモ」のカウンターである。また、単なるカウンターではなく、「動物はごはんじゃない」デモに対するパロディや皮肉を意識しているよ…

「動物はおかずだ」デモに関して(1)

(仕事の休憩時間に取り急ぎ書いた) 上記の記事に関して、まず気になったのは以下の箇所。 「しかし「動物はごはんじゃないデモ行進」は、自らが肉を忌避するだけでは飽き足らず、他者の権利や自由を否定し肉の撲滅を目論んでいる。」 「憎むべきは、ヴィー…

トロッコ問題批判批判

先日に森村進の『幸福とは何か』 (ちくまプリマー新書、2018年)を読んでいたら、後半の方で以下のような記述があった*1。 幸福とは何かを考えるにあたって、私は本書でさまざまの思考実験を利用してきましたが、その中には非現実的な例も少なくありませんで…

狩猟にまつわる倫理的問題

davitrice.hatenadiary.jp ↑ 倫理学者のゲイリー・ヴァーナーの論文「環境倫理、狩猟、動物の位置付け(Environmental Ethics, Hunting, and the Place of Animals)」を要約した上記の記事など、このブログでは英語圏の倫理学者が狩猟について書いた文章を…

文系インテリが進歩や科学を嫌う理由(「啓蒙をめぐる戦争」の要約【その4】)

前回と前々回と前々々回の続き。 これまでは『現代の啓蒙(Enlightment Wars)』に寄せられた具体的な批判に答えてきたピンカーだが、記事の後半では「『現代の啓蒙』はなぜ一部の人々をここまで猛烈に怒らたのか?」という疑問を呈して、自らそれに答えよう…

ピンカーによるニーチェ批判、AIとかスマホとかは理性の敵なのか(「啓蒙をめぐる戦争」の要約【その3】)

前々回と前回の続き。 批判その7:啓蒙主義(科学的な理性)は、その産物である人工知能やソーシャルメディアによって葬り去られてしまうだろう。 ピンカーの反論:メアリー・シェリーが『フランケンシュタイン』を書いた時代なら、そのような物語は魅力的…

悲観主義はなぜ賢そうに聞こえるのか?

経済コラムニストのモーガン・ハウゼル(Morgan Housel)が、英語版のモトリー・フール(投資に関するニュース・メディア)に2016年に投稿した記事を要約して簡単に紹介。 www.fool.com 経済史学者のディアドラ・マクロスキーは「何故だかわからないが、人々…

精神病や自殺者の数は世界的に増えている?トランプやブレクジットは啓蒙主義が終わった証拠?(スティーブン・ピンカー「啓蒙をめぐる戦争」の要約【その2】)

前回の記事の続き。ほんとは前半と後半の2つに分けるつもりだったがしんどいので3つに分けることにした(4つになるかも)。 批判その5:トランプやブレクジット、権威主義的ポピュリズムの隆興はどう説明する?それらは、啓蒙主義の時代が終わり進歩が逆行…

「啓蒙をめぐる戦争」(『Enlightment Now』への批判に対するスティーブン・ピンカーの応答)【その1】

2018年の初頭に出版されたスティーブン・ピンカーの新著『Enlightenment Now: The Case for Reason, Science, Humanism, and Progress (現代の啓蒙:理性、科学、人道主義、進歩を擁護する)』は、多くの批判にさらされてきた。タイトルの通り合理主義や科…

家父長制・弱者男性・フェミニズム

以前に訳して紹介したポーラ・ライト(Paula Wright)のブログの記事を読みながら、だらだらと考えたこと*1。 porlawright.com 「改良された"家父長制"を擁護する」というこの記事では、家父長制とは単一の種類しかないものではなく、悪性の家父長制もあれば…

「動物の権利」と「人権」は対立する?

togetter.com くどいようだが、この件に関するはてな・Twitterなどでの反応を眺めての雑感。 今回の件に限らず、動物の権利運動に対する批判としてちらほら見られるのが、「動物に権利を与えると人権という概念の理念が損なわれる」あるいは「動物に対して道…

左派は動物の権利を支持するべきか?

togetter.com このTogetterに関わる論点として、数年前に要約して翻訳して紹介した ウィル・キムリッカとスー・ドナルドソンの論文「動物の権利、多文化主義、左派」から一部抜粋して紹介してみよう(手抜き記事である)。 現在、米国の動物の権利運動は「左…

弱者男性論とか女性だけの街とかについての雑感

Twitterやはてななどで「弱者男性」論を見かけたり、また先日の「女性だけの街」に関する議論などを見かけた際には、モヤモヤすることが多い。モヤモヤを吐き出すために雑感を書いてみた(あまり論理的ではない、感覚に頼ったくどい文章になってしまったが)…

ある人が保守であるかリベラルであるかは生理的なもの?

アメリカの政治家科学者兼心理学者のJohn R HibbingがPsychology Todayに投稿した記事を訳して紹介。なお、私は同様のテーマについて論じられた著作『Predisposed: Liberals, Conservatives, and the Biology of Political Differences』も数年前に読んだこ…

配偶者選択が政治的分断を悪化させる?

今回はThe Atlanticに掲載されたアメリカの進化心理学者のAvi Tucshmanの記事を訳して紹介。数年前に読んだTucshmanの著書の『Our Political Nature(私たちの政治的な本性)』でもこの記事と同様の話題が含まれていた。なお記事が公開されたのは2014年2月な…

アニマルライツとフェミニズム

The Feminist Care Tradition in Animal Ethics: A Reader 作者: Josephine Donovan,Carol J. Adams 出版社/メーカー: Columbia Univ Pr 発売日: 2007/11/01 メディア: ペーパーバック 購入: 1人 クリック: 1回 この商品を含むブログを見る ヴィーガンフェミ…

「かわいそうランキング」についての雑感

一年くらい前から、Twitterやはてブなどで「かわいそうランキング」という単語を目にする機会がある。TLなどに流れてくるのをざっと見た感じでは、「反ポリコレ」「反フェミニズム」、「弱者男性論者」といったクラスタの人々が特によく用いる単語であるよう…

「子供のワクチン接種を拒否することは、脱税に等しい罪である」 by アルベルト・ジュリビーニ

久しぶりにオックスフォードのPractical Ethicsブログから、イタリアの倫理学者であるアルベルト・ジュリビーニ(Alberto Giubilini)の記事を訳して紹介。元記事の公開日は2017年10月31日。記事中に貼られている資料などへのリンクは割愛した。 blog.practica…

ロブスターの福祉に配慮するのは感情的?

jp.reuters.com このニュースに対するネット上の様々な反応を見ての雑感。 動物福祉運動や動物の権利運動に対しては批判が投げかけられることが多い。特によくあるのが「知能が人間に近いからという理由でイルカや類人猿の権利を主張して他の動物には配慮し…

『サピエンス全史』に対する批判に対する雑感

著者がヴィーガンだから「歴史書の形を借りた自己啓発書」とされるの、意味わかんない... — デビット・ライス (@RiceDavit) 2017年9月25日 たとえば歴史的事実なり科学的事実なりについて書かれている本で、それらの事実についての著者の理解から「人類は増…