道徳的動物日記

人々の議論を眺めながら考えたことや読んだ本の感想など。このブログは利益や金銭目的ではなく人々に対する啓蒙のために書かれています。ありがたがれ。

自己責任論の風景

www.univ.gakushuin.ac.jp ↑ 先日、上記の謝辞が話題になった。特に以下の部分が批判されている。 支えてくれた人もいるが、残念ながら私のことを大学に対して批判的な態度であると揶揄する人もいた。しかし、私は素晴らしい学績を収めたので「おかしい」こ…

捕鯨・文化の価値・動物倫理

動物愛護や動物の権利という話題に関すると、日本では「捕鯨問題」がイメージされることが多いようだ。実際、私が学生であった頃に「動物倫理や動物の権利について勉強している」と言ったときにも、「捕鯨問題についてはどういう意見を持っているんだ」と聞…

「肉食の自由」?

davitrice.hatenadiary.jp ↑ 昨年の5月に触れた話題について、改めてちゃんと書いてみた。 日本で動物の権利を主張する団体の最大手であるアニマルライツセンターは、2016年からほぼ毎年、渋谷で「動物はごはんじゃない」というプラカードを掲げたデモ行進を…

続・「男性のつらさ」論についての雑感

davitrice.hatenadiary.jp ↑ この記事を書いた後に出版された本とかネットに上がった記事などを見ての雑感。 ジェンダー論の本やジェンダー論的なネットの記事などで「男性のつらさ」ということが論じられる際には、男性同士の「競争」がつらさの原因である…

ケア倫理の問題点(読書メモ:『ケアリング―看護婦・女性・倫理』)

ケアリング―看護婦・女性・倫理 作者:ヘルガ クーゼ 出版社/メーカー: メディカ出版 発売日: 2000/07/01 メディア: 単行本 この本は看護婦という仕事について哲学的に考察したり、看護の倫理について論じたものであるが、倫理学一般についても数章を割いて論…

野生動物に対する倫理的責任とは?

natgeo.nikkeibp.co.jp ↑ 上記の記事は本日に掲載されたものだが、この中で取り上げられているクレア・パーマーという倫理学者が書いた『Animal Ethics in Context(文脈のなかの動物倫理)』をちょうど再読していたところだった。この本の内容についてはパ…

フランシス・フクヤマの『IDENTITY 尊厳の欲求と憤りの政治』

IDENTITY (アイデンティティ) 尊厳の欲求と憤りの政治 作者:フランシス・フクヤマ 出版社/メーカー: 朝日新聞出版 発売日: 2019/12/06 メディア: 単行本 この本は途中まで原著で読んでいたのだが、全14章のうち5章まで読んだ時点で放置しているうちに翻訳…

読書メモ:サミュエル・ハンティントン『分断されるアメリカ』

(2018年の1月に別ブログで書いた記事だが、別ブログの方は閉鎖してしまったので再掲。この次にアップするフランシス・フクヤマの『IDENTITY 尊厳の欲求と憤りの政治』の感想記事に関係するので、このブログに再掲載することにした。) 分断されるアメリカ (…

「自殺」の思想史(読書メモ:『Stay: A History of Suicide and the Philosophies Against It』)

Stay: A History of Suicide and the Philosophies Against It (English Edition) 作者:Jennifer Michael Hecht 出版社/メーカー: Yale University Press 発売日: 2013/11/01 メディア: Kindle版 この本の副題の「自殺と、それに反対する哲学の歴史」が示す…

「広く共有された信念」と動物倫理(読書メモ:Ethics and the Beast)

Ethics and the Beast: A Speciesist Argument for Animal Liberation 作者:Tzachi Zamir 出版社/メーカー: Princeton University Press 発売日: 2014/11/23 メディア: ペーパーバック イスラエルの倫理学者、トサヒ・ザミール(Tzachi Zamir)の著書。とり…

動物の利益と人間の利益、文化的慣習

Animal Rights Without Liberation: Applied Ethics and Human Obligations (Critical Perspectives on Animals) 作者:Alasdair Cochrane 出版社/メーカー: Columbia Univ Pr 発売日: 2012/09/16 メディア: ハードカバー この本の8章、"Animal and Cultrual…

利益に基づいた動物の権利:ペットの避妊、娯楽における動物の利用、環境保護との関係

Animal Rights Without Liberation: Applied Ethics and Human Obligations (Critical Perspectives on Animals: Theory, Culture, Science, and Law) (English Edition) 作者:Alasdair Cochrane 出版社/メーカー: Columbia University Press 発売日: 2012/0…

「利益に基づいた権利」による動物の権利論(読書メモ:Animal Rights without Liberation)

Animal Rights Without Liberation: Applied Ethics and Human Obligations (Critical Perspectives on Animals: Theory, Culture, Science, and Law) (English Edition) 作者:Alasdair Cochrane 出版社/メーカー: Columbia University Press 発売日: 2012/0…

読書メモ:『人間にとって善とは何か』

人間にとって善とは何か: 徳倫理学入門 (単行本) 作者:フィリッパ フット 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2014/04/10 メディア: 単行本 先日にはチャールズ・テイラーの『卓越の倫理』を読んだが、フットのこの本は、同じ徳倫理といってもテイラーのそれ…

二層功利主義と権利(引用メモ:『相手の立場に立つ ヘアの道徳哲学』)

相手の立場に立つ 作者:山内 友三郎 出版社/メーカー: 勁草書房 発売日: 1991/05/20 メディア: オンデマンド (ペーパーバック) ヘアの二層理論によれば権利は直観のレヴェルに位置を占めていて、特別ことがない限り、私たちを律すべき一般的原則であると考え…

「卓越した人間」の代用品としてのスポーツ選手?

卓越の倫理―よみがえる徳の理想 作者:リチャード テイラー 出版社/メーカー: 晃洋書房 発売日: 2013/10/01 メディア: 単行本 先ほどの記事でも『卓越の倫理』の感想を長々と書いたが、とりわけ印象深かった以下の箇所に関連して、自分の思うところをさらに書…

ルサンチマン倫理 vs 徳の倫理(読書メモ:『卓越の倫理』)

卓越の倫理―よみがえる徳の理想 作者:リチャード テイラー 出版社/メーカー: 晃洋書房 発売日: 2013/10/01 メディア: 単行本 倫理学の入門書などにおいて義務論や帰結主義とならぶ規範倫理として徳倫理学が紹介されるときは、「〜主義」を否定して「中庸」を…

限界事例からの議論、種差別の正当化(読書メモ:『 Beyond Prejudice 』)

Beyond Prejudice: The Moral Significance of Human and Nonhuman Animals (English Edition) 作者:Evelyn B. Pluhar 出版社/メーカー: Duke University Press Books 発売日: 1995/07/21 メディア: Kindle版 1995年に出版された動物倫理の本で、「限界…

「お気持ち」はいけないのか?

davitrice.hatenadiary.jp 先日の記事でも書いたが、ケアの倫理やフェミニズム倫理などの「理性」より「感情」を重視する倫理学理論には根本的に問題点があり、理論として破綻しているように思える。 しかし、「“理性的”を標榜する既存の倫理学理論によって“…

「ケアの倫理」の構造的問題点(読書メモ:『Entangled Empathy』)

Entangled Empathy: An Alternative Ethic for Our Relationships with Animals by Lori Gruen(2014-01-01) 作者:Lori Gruen 出版社/メーカー: Lantern Books 発売日: 1739 メディア: ペーパーバック 離職して、しばらくの間は本を読む時間もたっぷりとある…

読書メモ:『哲学者が走る 人生の意味についてランニングが教えてくれたこと』

哲学者が走る: 人生の意味についてランニングが教えてくれたこと 作者:マーク ローランズ 出版社/メーカー: 白水社 発売日: 2013/09/14 メディア: 単行本 私は子供の頃から喘息を患っており、すこしでも走るだけですぐに息が切れてしまいしんどいことになる…

読書メモ:『ダーウィン・エコノミー 自由、競争、公益』

ダーウィン・エコノミー 自由、競争、公益 作者:ロバート・H・フランク 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社 発売日: 2018/03/24 メディア: 単行本(ソフトカバー) この本の著者のロバート・フランクには1990年代から多数の著作を出版しており、最近のもの…

読書メモ:『猫の精神生活がわかる本』

猫の精神生活がわかる本 作者:トーマス・マクナミー 出版社/メーカー: エクスナレッジ 発売日: 2017/12/24 メディア: 単行本(ソフトカバー) 作家である著者が、愛猫の「オーガスタ」との出会いから共同生活、オーガスタの死による別れを綴りながら、猫の心…

『功利主義とは何か』

功利主義とは何か 作者:ピーター・シンガー,カタジナ・デ・ラザリ=ラデク 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2018/11/16 メディア: 単行本(ソフトカバー) おそらく現代の世界に現存する哲学者としていちばん有名で影響力のあるピーター・シンガーと、ポ…

明けましておめでとうございます1月2日は僕の誕生日です

このブログは利益や金銭目的で運営しているわけではないのですが、せっかくの誕生日なので… www.amazon.co.jp www.amazon.co.jp www.amazon.co.jp

ペットの安楽死にまつわる倫理的問題(読書メモ:『ラストウォーク 愛犬オディー最後の一年』)

ラストウォーク ―愛犬オディー最後の一年 作者:ジェシカ・ピアス 出版社/メーカー: 新泉社 発売日: 2019/02/20 メディア: 単行本(ソフトカバー) 著者のジェシカ・ピアスは倫理学者で、この本以外にもペット飼育に関する倫理の本や生命倫理の本、動物の道徳…

「表現の自由」の滑りやすい坂道?

2019年の日本のネット論壇では、例年のごとく「萌え絵」や二次元キャラクターの性的表現、およびそのような表現を公共の場で展示することの是非、などなどが話題になった。 毎年のように繰り返されている論争であり、今年も大して議論の進展があったように思…

タコ、魚、ロブスター、植物

さいきん、タコと頭足類に関する本を続けて読んだ。 タコの心身問題――頭足類から考える意識の起源 作者:ピーター・ゴドフリー=スミス 出版社/メーカー: みすず書房 発売日: 2018/11/17 メディア: 単行本 魚たちの愛すべき知的生活―何を感じ、何を考え、どう…

「出羽守」批判についての雑感

日本社会の構造的な問題点や、日本社会で起きた事件の問題性について、海外のメディアや記者が取り上げることはめずらしくない。たとえば、ここ最近では以下のような記事が記憶にあたらしいだろう。↓ www.nytimes.com www.bbc.com toyokeizai.net そして、こ…

倫理学の理論や知識と、実際の生活との齟齬や乖離について(読書メモ:『哲学者とオオカミ』)

哲学者とオオカミ―愛・死・幸福についてのレッスン 作者:マーク ローランズ 出版社/メーカー: 白水社 発売日: 2010/04/01 メディア: 単行本 哲学者である著者がオオカミの子どもを引き取って「ブレニン」と名付けて、アメリカやアイルランド、イギリスにフラ…