道徳的動物日記

動物や倫理学やアメリカについて勉強したことのある人の日記です。

社会運動

市民的不服従と動物の権利運動

www.theage.com.au 今回紹介するのは、2013年の5月10日にオーストラリアの The Ageというニュースサイトに掲載された、政治学者のシヴォーン・オサリヴァン(Siobhan O'Sullivan)と倫理学者のクレア・マコーズランド(Clare McCausland)による記事。オサリ…

原罪としての"男性特権"

tocana.jp 上述の記事は最近話題になった「ジェンダー学版ソーカル事件」というべき事件についての紹介記事だが、この事件を起こした数学者ジェームズ・リンゼイ(James A. Lindsay) と哲学者のピータ・ボグホシアン(Peter Boghossian)が昨年にネット上で…

スローガンとしての「インターセクショナリティ」

インターセクショナリティ(Intersectionality)という概念については以前にも批判的な記事を訳したのだが、英語圏の学者たちのTwitterなどを見ているといまだによく出てくるので、ちょっと追加で記事を紹介してみることにした。 www.insidehighered.com こ…

民主主義を貶め右翼を蔓延させるポストモダニズム

ネットサーフィンをしていたら見つけた、ヘレン・プラックローズ(Helen Pluckrose)という人文学者による、『How French “Intellectuals” Ruined the West: Postmodernism and Its Impact, Explained(フランス知識人はいかにして西洋を台無しにしたか:ポ…

社会運動において意見を発信する側はどうするべきか、そして意見を受け取る側はどうあるべきか

davitrice.hatenadiary.jp 上述の、先日に自分で書いた記事に付け足す形で思うところを書きたい。 先日の記事でも紹介したが、ニック・クーニー(Nick Cooney)の著書『心を変える:社会を変える方法について心理学が教えてくれること(Change of Heart: Wha…

社会運動を効果的に行うためにはどうすればいいのか?

Change of Heart: What Psychology Can Teach Us About Spreading Social Change (English Edition) 作者: Nick Cooney 出版社/メーカー: Lantern Books 発売日: 2015/09/01 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 今回は、ニック・クーニー(Nick …

"女のヒステリー"と動物愛護運動

ヒマなので、昔自分で書いた修士論文の内容の一部を参考にしながら、記事を書いてみようと思う。私はアメリカ史を専門にしていた訳ではないので歴史に関する文章については事実誤認とか間違いが含まれているかもしれないが、そこはまあ勘弁してほしい。 アメ…

ポストモダニズムとポリティカル・コレクトネス

The Science of Liberty: Democracy, Reason, and the Laws of Nature 作者: Timothy Ferris 出版社/メーカー: Harper Perennial 発売日: 2011/02/08 メディア: ペーパーバック この商品を含むブログを見る 先日から読み始めたティモシー・フェリス著『自由…

Cultural appropriation(文化の盗用/文化の簒奪)という概念に対する批判の雑なまとめ

www.huffingtonpost.jp togetter.com togetter.com このテの話題でよく出てくるCultural appropriation(文化の盗用/文化の簒奪)という概念だが、白人が着物を着ることばかりでなく、「エミネムのような白人ラッパーはCultural appropriationだ」「ロック…

トランプ政権について、ピーター・シンガーのコメント

vpoint.jp ↑ こんな記事も出ていることなので、シンガー本人はドナルド・トランプ米大統領についてどんなコメントをしているのか、簡単に調べてまとめてみた。 www.project-syndicate.org 上述の、2017年2月1日付でProject Syndicateに発表された「ト…

オルタナ右翼とソーシャル・ジャスティス・ウォーリアー

quillette.com Quilletteというサイトに掲載された記事を紹介。 「社会正義左翼とオルタナ右翼:我らの分断された新世界」 by ベン・シックススミス あなたが猫の写真や料理のレシピやヌード写真以外のことをインターネットで調べた経験があるなら、現代政治…

19世紀アメリカにおける子供の権利と動物の権利

humanitiesctr.cas2.lehigh.edu 前回に引き続き、動物愛護運動の歴史を書いた本に関する記事を紹介。 「政治的なケアと、子供と動物に対する配慮:歴史的視点」 (前略) 「感傷と野蛮:アメリカの歴史における動物と子供の境界を崩す」と題された講演の冒頭…

イギリスにおける動物愛護運動の歴史

www.csmonitor.com クリスチャン・サイエンス・モニター誌に掲載された書評を紹介する。 書評:『動物たちのために』 by ランディ・ドティンガ (Randy Dotinga) 数世紀前のイギリスで行われていた動物たちに対するショッキングな虐待は、歴史からは忘れら…

アメリカにおける動物愛護運動の歴史

www.csmonitor.com 今回紹介するのは、2014年の4月にクリスチャン・サイエンス・モニター誌のホームページに掲載された、アメリカの歴史家 ダイアン・ビアーズ(Diane Beers) へのインタビュー記事。 ビアーズはアメリカの動物愛護運動の歴史について…

「分裂したアメリカ政治を乗り越える方法」 by ジョナサン・ハイト、ラヴィ・アイヤー

www.wsj.com 社会心理学者のジョナサン・ハイトとラヴィ・アイヤーが2016年の11月4日にウォール・ストリート・ジャーナルに発表された記事。ヒラリー・クリントンとドナルド・トランプとの大統領選の結果が出る数日前に発表された記事だが、選挙の結…

トランプ支持者の心理・権威主義と反移民

www.the-american-interest.com 本日紹介するのは、 社会心理学者のジョナサン・ハイト(Jonathan Haidt)が American Interest 誌に発表した「ナショナリズムはいつ、なぜ、グローバリズムに打ち勝つか(When and Why Nationalsm Beats Globalism)」という…

ポリティカル・コレクトネスの問題点を指摘した記事の雑なまとめ

jbpress.ismedia.jp 当ブログでは、ポリティカル・コレクトネスについて批判的であったりポリティカル・コレクトネスの問題点を指摘した英語記事をいくつか訳してきた。上記記事と上記記事に付いたコメントを見て思ったのが、ポリティカル・コレクトネスに対…

「環境運動の不都合な真実」by ジョシュア・ゴールドスティン & スティーブン・ピンカー

www.bostonglobe.com 今回紹介するのは、国際関係学者のジョシュア・ゴールドスティンと心理学者のスティーブン・ピンカーが2015年の11月にBoston Globe誌に掲載した記事*1。 地球温暖化問題を解決するという環境保護運動の目標を否定する記事ではなく…

「弾劾の政治」 by クリスティアン・ウィリアムス

towardfreedom.com 今回紹介するのはクリスティアン・ウィリアムス(Kristian Williams)の「弾劾の政治(The Politics of Denuncation)という記事。 ウィリアムスはアナーキストの研究者だが、本人のホームページを見るとコミックに関する研究も行っている…

「マルクーゼはいかにして今日の学生たちを親世代よりも不寛容にさせたか」 by エイプリル・ケリー・ウォスナー

heterodoxacademy.org 今回紹介するのは、昨年にHeterodox Academyに掲載された、エイプリル・ケリー・ウォスナー(April Kelly-Woessner)という人の記事。ウォスナーは政治科学者で、高等教育と政治の関係について論文を書いているようだ*1。 「マルクーゼ…

『ガリレオの中指』、『人はなぜレイプするのか』、学問における事実とイデオロギーの関係

Galileo's Middle Finger: Heretics, Activists, and the Search for Justice in Science 作者: Alice Dreger 出版社/メーカー: Penguin Books 発売日: 2015/03/10 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 今回紹介するのは、私が最近読んでいる本で…

陰謀論としての「ピンクウォッシュ」

davitrice.hatenadiary.jp イスラエルに対する「ピンクウォッシュ」という批判(イスラエルの同性愛やその他のセクシュアル・マイノリティへの環境的な風土や政策は、パレスチナ人に対する人権侵害を隠蔽するためのイメージ戦略に過ぎない、という理論による…

「人道革命」by ニコラス・クリストフ (消費者主導の、動物福祉の改善運動についての記事)

http://www.nytimes.com/2016/05/15/opinion/sunday/a-humane-revolution.html 今回紹介するのは、ニューヨークタイムス紙にコラムニストのニコラス・クリストフ(Nicholas Kristof)が、全米人道協会(Humane Society of the United States)の会長のウェイ…

効果的利他主義は現状肯定だからダメなのか?

あなたが世界のためにできる たったひとつのこと―<効果的な利他主義>のすすめ 作者: ピーター・シンガー,関美和 出版社/メーカー: NHK出版 発売日: 2015/12/19 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (4件) を見る ・ピーター・シンガーの効果的利他主義と…

警官による黒人の射殺は人種差別が原因か?

www.nationalreview.com 今回紹介するのは、アメリカで盛り上がり続けているBlack Lives Matter 運動や「(白人の)警官が黒人を射殺するのは人種差別が原因だ」的な主張に対するカウンター的な記事。National Reviewのwebサイトに掲載された記事であり、著…

「科学から政治的活動へと変貌させられる人類学」by グリン・カストレッド

www.popecenter.org 今回は、カリフォルニア州立大学イーストベイ校の人類学者グリン・カストレッド(Glynn Custred)による記事「Turning Anthropology from Science into Political Activism(社会科学から政治的活動に変貌させられる人類学)」を紹介する…

「イスラエルに対するBDS運動と、非-事実的(post-factual)な人類学の登場」 by  デビッド・ローゼン

BDS and the Rise of Post-Factual Anthropology | Minding The Campus 今回はアメリカの人類学者、デビッド・ローゼン(David Rosen)の記事を紹介する。 記事の本題とはあまり関係ないが、ローゼンの専門は少年兵士に関する人類学的な研究であるようだ。 A…

スティーブン・ピンカー、ノーム・チョムスキーらがイスラエルに対する学術的ボイコットを批判

japanese.irib.ir Anthropologists for the Boycott of Israeli Academic Institutions アメリカ人類学会(American Anthropological Association)は、パレスチナに対するイスラエルの侵略などを批判する目的で、イスラエルに対する学術的ボイコットを20…

「"インターセクショナリティ"はフェミニズムとは正反対だ」 by エヴァ・グラスラッド

www.thehappytalent.com 今回紹介するのは、エヴァ・グラスラッドという人のブログ THE HAPPY TALENTの記事。 "インターセクショナリティ"という考え方を、いわゆるリベラル・フェミニスト的な立場から批判している記事である。"インターセクショナリティ"と…

「保守的フェミニズム」 by ニーナ・シランダー

www.psychologytoday.com 今回私訳して紹介する記事は、ニーナ・シランダーの「保守的フェミニズム」。 原文記事の先頭に付いている紹介によると、彼女はトラウマや酒や薬物などの乱用の治療を研究している臨床心理学者(博士号取得候補者)であるらしい。女…

「フェミニストはいつフェミニストでなくなるか?」 by ポーラ・ライト

www.psychologytoday.com 今回紹介するのは、ポーラ・ライトの「フェミニストはいつフェミニストでなくなるか?(When is a Feminist Not a Feminist?)」という記事。タイトルからは分かりづらいが、「家父長制」の存在を主張したり、社会構築主義的な主張…

「被害者性の文化」と「マイクロアグレッション」

Where microaggressions really come from: A sociological account | The Righteous Mind 今回私訳したのは、社会学者のブラッドベリー・キャンベルとジェイソン・マニングによる共著論文「マイクロアグレッションと道徳文化」を社会心理学者のジョナサン・…

「リベラリズムの死」 by ジェリー・コイン 

今回紹介する記事は、ジェリー・コインの「リベラリズムの死」。 The death of liberalism: Goldsmiths feminists ally with Muslims opposing feminist speaker Maryam Namazie « Why Evolution Is True 以下のTogetterに掲載している、リチャード・ドーキ…

「セーフ・スペースの暴力」 by ブレンダン・オニール

今回私訳して紹介するのは、ブレンダン・オニールの「セーフ・スペースの暴力」。 http://brendanoneill.co.uk/post/137934715274/the-violence-of-the-safe-space (埋め込みを行うと記事の全文が表示されてしまうので、URLのみ掲載)。 本人のブログに掲載…

「ピンクウォッシュ」と反ユダヤ主義

今回紹介する記事は二つ。 www.gatestoneinstitute.org www.slate.com 前者の記事の著者はアラン・ダーショウィッツ。親イスラエルとして有名な弁護士兼コメンテーターであるらしい。著作もいくつか邦訳されているが、私はいずれも未読。 ケース・フォー・イ…

一部フェミニズム系の記事について思うこと

フェミニストが聞き飽きている5つの質問(そしてそんな質問をする代わりにできるいくつかのこと) - feminism matters https://t.co/64T84KyRCk — デビット・ライス (@RiceDavit) 2016, 1月 25 私も議論や意見について「イラっとする」という言葉をついつい…

無神論と動物倫理 ・ 「ある種差別主義者の告白」 by マイケル・シャーマー

(翻訳はところどころ意訳・省略している。無神論については最近関心を持って調べ始めたところなので、知識の間違いや誤解などが含まれているかもしれない。) マイケル・シャーマーはアメリカの科学史家、サイエンスライター。疑似科学や宗教信仰を懐疑・批…

クリスティアン・ウィリアムス「弾劾の政治」を巡る騒動

2014年の5月に「Inside Higher Ed」(高等教育の内幕)というwebサイトに掲載された記事。記事を書いている記者の名前はスコット・ジャスチック。 Speaker shouted down at Portland State University | Inside Higher Ed 2年近く前という、古い事件に…

イデオロギーは社会学の知見をいかに妨げたか by クリス・マーティン

社会学者クリス・マーティンの論文「イデオロギーは社会学の知見をいかに妨げたか」の、著者本人による要約である。 原文はこちら。参考文献は省略している。 How Ideology Has Hindered Sociological Insight, summarized | HeterodoxAcademy.org イデオロ…

私はこの記事を書くべきではない ー ある非・左翼的大学教授の告白 by ジョージ・ヤンシー

今年のアメリカの大学では例年にも増して学生による抗議運動が盛んであったらしい。ミズーリ大学では人種差別に適切な対応をしなかったという理由で学生に抗議された学長が辞任した*1。イェール大学では、ハロウィンにて人種差別やマイノリティ差別につなが…

グレッグ・ルキアノフ, ジョナサン・ハイト 「アメリカン・マインドの甘やかし:トリガー警告はいかにキャンパスの精神的健康を傷付けているか」

アメリカでは、PC(ポリティカル・コレクトネス=政治的な正しさ)を追求する運動は1980年代から行われてきたようであり、運動に対する批判や揶揄も行われ続けていたようだ。しかし、有名な風刺コメディアニメの『サウスパーク』が今年のシーズン19の…

「動物の権利、多文化主義、左派」by ウィル・キムリッカ&スー・ドナルドソン 

ウィル・キムリッカとスー・ドナルドソンによる論文、"Animal Rights, Multicultrualism and the Left"を、要約して翻訳して紹介する。要約ではあるが、長い文章になっている。註釈や引用に参考文献などは省いているので、英語が読める人はもとの論文を読む…