道徳的動物日記

倫理学、社会科学、時事問題、世相などについて論じます。

倫理学

道徳と恋愛は相性が悪い

道徳形而上学の基礎づけ (光文社古典新訳文庫) 作者:カント 発売日: 2013/12/20 メディア: Kindle版 先日に「性的モノ化」についてあーだこーだ書いたが、それと関連しているかもしれない内容。 フェミニズムとかジェンダー論とかが市井に浸透して、男性たち…

なぜ人間は進化のメカニズムに逆らって、道徳的に行為することができるのか

The Expanding Circle: Ethics, Evolution, and Moral Progress 作者:Singer, Peter 発売日: 2011/04/18 メディア: ペーパーバック 道徳と理性の関係についての議論はこのブログでは何度もやっており、「またかよ」と思われるかもしれない。とはいえ、原稿の…

メモ:「性的モノ化」とはなんぞや、村上春樹の『女のいない男たち』

女のいない男たち (文春文庫) 作者:村上春樹 発売日: 2016/10/07 メディア: Kindle版 先日に友人とやったラジオで「性的モノ化」に関することを口にしたけれど、自分で言っていてこの言葉についてきちんと理解していないことに気が付いたので、ちょっと調べ…

覚え書き:なぜ功利主義者がいないと動物の権利は発見されなかったか

動物の解放 改訂版 作者:ピーター シンガー 発売日: 2011/05/20 メディア: 単行本 某所の連載で動物倫理についても何回か書くことになりそうなので、ピーター・シンガーの『動物の解放』を久しぶりに読み直している。 『動物の解放』では『実践の倫理』ほど…

「マイノリティの被害者意識」に関する議論のジレンマ

良き人生について―ローマの哲人に学ぶ生き方の知恵 作者:ウィリアム・B・アーヴァイン 発売日: 2013/09/11 メディア: 単行本 『良き人生について:ローマの哲人に学ぶ生き方の知恵』については以前にも紹介したが、あらためて、この本の第11章「侮辱」からち…

「人生の意味」の進化心理学

野蛮な進化心理学―殺人とセックスが解き明かす人間行動の謎 作者:ダグラス・ケンリック 発売日: 2014/07/18 メディア: 単行本 ダグラス・ケンリックの『野蛮な進化心理学:殺人とセックスが解き明かす人間行動の謎』の白眉は、やはり、第七章の「マズローと…

有徳に生きることと、幸福に生きることの関係

徳は知なり: 幸福に生きるための倫理学 作者:ジュリア・アナス 発売日: 2019/03/25 メディア: 単行本 ジュリア・アナスの『徳は知なり:幸福に生きるための倫理学』については過去にも紹介記事を書いているが、今回は、徳と幸福について論じられている八章と…

誰もが平等に幸福になれるわけではない

(某所に掲載する原稿として書きはじめたのだが、書いているうちに論旨が迷子になって自分でも無理を感じる内容になってしまったので、「これじゃダメだな」と判断して取り止めた。でもせっかく書いたのが無駄になるのもイヤなので、無理やりにまとめて、こ…

読書メモ:『ストイック・チャレンジ:逆境を「最高の喜び」に変える心の技法』

ストイック・チャレンジ: 逆境を「最高の喜び」に変える心の技法 作者:アーヴァイン,ウィリアム・B. 発売日: 2020/11/27 メディア: 単行本 著者のアーヴァインは『良き人生について - ローマの哲人に学ぶ生き方の知恵』や『欲望について』の著者*1。『ストイ…

ケアの倫理と二層理論/「アイデンティティ哲学」がつまらない理由

link.springer.com ヘルガ・クーゼ、ピーター・シンガー、モーリス・リカードによる共著論文 "Reconciling Impartial Morality and a Feminist Ethic of Care" (「公平な道徳と、フェミニストによるケアの倫理を調和させる」)を読んだのでメモ的に内容を記…

読書メモ:『恋人選びの心:性淘汰と人間性の進化』

恋人選びの心―性淘汰と人間性の進化 (1) 作者:ジェフリー・F.ミラー 発売日: 2002/07/15 メディア: 単行本 davitrice.hatenadiary.jp 『Virtue Signaling』の書評で書いたようにわたしはジェフリー・ミラーは文筆家としてはあまり好ましく思っていないところ…

読書メモ:『<効果的な利他主義>宣言!:慈善活動への科学的アプローチ』

〈効果的な利他主義〉宣言! ――慈善活動への科学的アプローチ 作者:ウィリアム・マッカスキル 発売日: 2018/11/02 メディア: 単行本 この本についてはこちらの記事でも紹介した。 davitrice.hatenadiary.jp また、「効果的な利他主義」の考え方そのものについ…

道徳の問題は科学的に、定量的に考えなければいけない理由

〈効果的な利他主義〉宣言! ――慈善活動への科学的アプローチ 作者:ウィリアム・マッカスキル 発売日: 2018/11/02 メディア: 単行本 ビル・ゲイツやウォーレン・バフェットが実践していることでも有名な「効果的な利他主義」について書かれた本。パート1では…

読書メモ:『モラル・トライブズ:共存の道徳哲学へ』

きのうからはじまった某所での連載の次々回くらいの原稿の元ネタとして『モラル・トライブズ:共存の道徳哲学へ』を借りて読み直しているうちに、図書館からお怒りの電話が来てしまった。 しかし『モラル・トライブズ』は細部まで刺激と啓発に満ちたおもしろ…

アファーマティブ・アクションとクオータ制が支持されない理由

The Coddling of the American Mind: How Good Intentions and Bad Ideas Are Setting Up a Generation for Failure (English Edition) 作者:Lukianoff, Greg,Haidt, Jonathan 発売日: 2018/09/04 メディア: Kindle版 前回に引き続き、先日から、社会心理学…

読書メモ:『階級「断絶」社会アメリカ』

階級「断絶」社会アメリカ: 新上流と新下流の出現 作者:チャールズ・マレー 発売日: 2013/02/21 メディア: 単行本 数年ぶりの再読。アメリカの「階級」に関する話題はトランプ当選以降に注目されるようになって、わたしもいくつかそれらの本の感想を書いてき…

覚え書き:ポストモダンの「ごにょごにょ規範主義」、サンドバッグとしてのネオリベラリズム(と優生思想)

davitrice.hatenadiary.jp econ101.jp 先ほどの記事でジョセフ・ヒースの「『批判的』研究の問題」を取り上げたことなので、この記事から面白いところをいくつか引用しよう。 さっき言ったように,「批判的社会科学」の志は,たんに規範的な決意に導かれた社…

使える倫理は、つまらない(読書メモ:『動物倫理の新しい基礎』)

動物倫理の新しい基礎 作者:ローリン,バーナード 発売日: 2019/12/01 メディア: 単行本 この本のスタンスは、序章となる「新しい動物倫理の必要性」の最後の段落に、おおむねまとまっているだろう。 たとえば、功利主義的理由のためにシンガー自身が、産業的…

「安楽死」をめぐる議論のおかしな構造

7月23日に京都のALS嘱託殺人が発覚して医師二人が逮捕された事件を受けて、メディアやネット上でも安楽死に関する議論が盛んにおこなわれた。当初は、事件の特異性から「この事件をきっかけに安楽死についての議論を行うこと自体を、避けるべきである」とい…

覚え書き:「被害者性の文化」と「美徳シグナリング」

(深夜に突貫で書いた記事なので、かなりグダグタな内容になっている) ポリティカル・コレクトネスとそれが引き起こす問題は様々な場面に存在している。このブログでは主にアカデミアにおけるポリコレの問題を扱ってきたし、今年からはじめた映画日記の方で…

リバタリアンはフレンドリーで温かい白人男性ばっかり?(読書メモ:『リバタリアニズム:アメリカを揺るがす自由至上主義』)

リバタリアニズム アメリカを揺るがす自由至上主義 (中公新書) 作者:渡辺靖 発売日: 2019/05/17 メディア: Kindle版 タイトル通りリバリアニズムについて書かれた本であるが、政治哲学や経済学などにおける理論としてのリバタリアニズムについて書いた本では…

捕鯨・文化の価値・動物倫理

動物愛護や動物の権利という話題に関すると、日本では「捕鯨問題」がイメージされることが多いようだ。実際、私が学生であった頃に「動物倫理や動物の権利について勉強している」と言ったときにも、「捕鯨問題についてはどういう意見を持っているんだ」と聞…

「肉食の自由」?

davitrice.hatenadiary.jp ↑ 昨年の5月に触れた話題について、改めてちゃんと書いてみた。 日本で動物の権利を主張する団体の最大手であるアニマルライツセンターは、2016年からほぼ毎年、渋谷で「動物はごはんじゃない」というプラカードを掲げたデモ行進を…

ケア倫理の問題点(読書メモ:『ケアリング―看護婦・女性・倫理』)

ケアリング―看護婦・女性・倫理 作者:ヘルガ クーゼ 出版社/メーカー: メディカ出版 発売日: 2000/07/01 メディア: 単行本 この本は看護婦という仕事について哲学的に考察したり、看護の倫理について論じたものであるが、倫理学一般についても数章を割いて論…

野生動物に対する倫理的責任とは?

natgeo.nikkeibp.co.jp ↑ 上記の記事は本日に掲載されたものだが、この中で取り上げられているクレア・パーマーという倫理学者が書いた『Animal Ethics in Context(文脈のなかの動物倫理)』をちょうど再読していたところだった。この本の内容についてはパ…

「自殺」の思想史(読書メモ:『Stay: A History of Suicide and the Philosophies Against It』)

Stay: A History of Suicide and the Philosophies Against It (English Edition) 作者:Jennifer Michael Hecht 出版社/メーカー: Yale University Press 発売日: 2013/11/01 メディア: Kindle版 この本の副題の「自殺と、それに反対する哲学の歴史」が示す…

「広く共有された信念」と動物倫理(読書メモ:Ethics and the Beast)

Ethics and the Beast: A Speciesist Argument for Animal Liberation 作者:Tzachi Zamir 出版社/メーカー: Princeton University Press 発売日: 2014/11/23 メディア: ペーパーバック イスラエルの倫理学者、トサヒ・ザミール(Tzachi Zamir)の著書。とり…

動物の利益と人間の利益、文化的慣習

Animal Rights Without Liberation: Applied Ethics and Human Obligations (Critical Perspectives on Animals) 作者:Alasdair Cochrane 出版社/メーカー: Columbia Univ Pr 発売日: 2012/09/16 メディア: ハードカバー この本の8章、"Animal and Cultrual…

利益に基づいた動物の権利:ペットの避妊、娯楽における動物の利用、環境保護との関係

Animal Rights Without Liberation: Applied Ethics and Human Obligations (Critical Perspectives on Animals: Theory, Culture, Science, and Law) (English Edition) 作者:Alasdair Cochrane 出版社/メーカー: Columbia University Press 発売日: 2012/0…

「利益に基づいた権利」による動物の権利論(読書メモ:Animal Rights without Liberation)

Animal Rights Without Liberation: Applied Ethics and Human Obligations (Critical Perspectives on Animals: Theory, Culture, Science, and Law) (English Edition) 作者:Alasdair Cochrane 出版社/メーカー: Columbia University Press 発売日: 2012/0…